タコと少女の観察日記

海湖水

少女の観察日記

 「え……何こいつ?」


 夏休みの初めの日。私は裏山であるものを見つけた。

 ピンク色のスベスベとした体に、8本の触手。タコのような口。足が8本ということはタコだろうか?

 

 「家、持って帰るかぁ……」


 タコは水の中で過ごしている。ということなら、水の中に入れた方がいいだろう。

 ピンクタコの頭の部分を掴むと、私は家へと連れて行った。

 なんかすごい暴れるな。そこまで水の中に入っていないのがつらいのだろうか?


 「ねーおかーさん!!このタコ飼ってもいい?」

 「あら、かわいいタコさん。いいわよ~」


 よし、飼う許可はもらった。

 とりあえず、家の倉庫の奥から、タコを入れるものを探す。

 金魚鉢や水槽みたいなものはなかったけれど、鳥籠はあったので、中にぶち込み机の横に置いた。

 

 「名前考えないとな……タコ助で!!」


 よし、名前は考えた。夏休みの自由研究は、タコの観察日記にしようかな。

 そんなことを考えていると、タコ助は鳥籠をガタガタと揺らして暴れ始めた。やはり鳥籠は嫌なのだろうか。まあ、軟体動物の誇りというものがあるのだろう。週末に水槽を買いに行こう。 

 少しすると、タコ助は出られないと諦めたのか、疲れたように鳥籠の床に横たわった。

 まあ、夏休みが終わったら故郷(海)に返してやろう。裏山産だが、海でも暮らしていけるよね。


 「何か食べる?」


 机の上に置いていた某チューイングキャンディを与えてみる。タコ助は触手で触れると、口に近づけた、がすぐに放り投げた。

 なるほど、これはダメか。なら、うまい棒はどうだ?

 タコ助はうまい棒を足で砕くと、自らの口元に持っていき、口の中に放り込んだ。しかし、少しすると、食べるのを止めてしまった。


 「うーん……。冷蔵庫にキュウリがあったっけなぁ」


 私はキュウリを取ってくるために、冷蔵庫へ向かった。そして冷蔵庫からキュウリを取り出し、部屋に持ってきた瞬間、部屋で鳥籠の落ちる音がした。


 「タコ助⁉︎」


 扉を開くと、窓から涼しい風が入ってきた。

 開けた記憶のない窓の外に、タコ助はいた。UFOのような円盤に乗り、少しだけ進むと、そのまま高速で空の彼方へと消えていった。

 

 「タコ助ー!!」


 どうしよう、夏休みの自由研究、タコ助の観察日記にしようと思ってたんだけど。

 1人、途方に暮れる少女だった。

 

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