第13話 裏をかいた行動
「だが、あくまでも人体模型も人形だ。近寄れば勘の良い人なら見抜いてしまう」
俺は
『……ガラガラガラガラ』
『じゃあ、この担架でその人を運ぼうか。
『はい。初めからそのつもりです』
現場は
「この映像の通り、事件に関連した雅美ちゃんと一緒に男子の制服を着せた人体模型を動かしたんだ。協力者通しなら無言で意思疎通もできるからね」
「なるほどですね。相手が人間じゃないと分かっていたから、あんなにも冷静に対処できたのですね」
俺の指示で愛理がカメラの映像を止め、愛理自身も納得したように頷いている。
「そして階段横のスロープに雅美ちゃんが向かい、模型を乗せた担架に自らも乗り込み、坂道を勢いよく下った」
「その急ぎ足がバレないように、屋上で正太郎が女性の悲鳴をスマホで流したんだ。七不思議に見立ててね」
担架にも重量制限はあるが、100キロあったとしても十分に耐えられる。
ましてや持ち手もいなく、一階まで繋がる下り坂を備え付けの車輪で下るだけだ。
体が不自由な人やお年寄りが利用するスロープだから下手な障害物もないし。
「それじゃあ、屋上で起こった飛び降り自殺はどうなんだ。オレッチはお前らと一緒に居たんだぞ。殺しようがないじゃないか!」
「あれは自殺と見せかけた巧妙なトリックだよ」
「なっ!?」
「甘党な
俺の意の付いた答えに亜香里ちゃんが顔を上げ、俺の隣に並ぶ。
「確かにこの七不思議の最新版をユー○ューブに投稿するから手伝ってとは言われたけど、美味しいミズドのドーナツと引き換えに他言無用って釘を刺されてさあ」
「一階の保健室で寝ていたら、突然駆けつけた雅美ちゃんにお願いを言われてかい?」
「そうよ。友達……いや、親友の頼みなら聞けないじゃん」
亜香里ちゃんが『それにちょうどお腹も空いていたからね』とスカートのポケットからドーナツの包み紙を出し、にゃははと笑って俺に手渡す。
その包み紙と俺が持っていた脱酸素剤の表示とが見事に一致した。
「その時の雅美さんは息は切らしてなかったのですか?」
「あん? 髪型と服装が乱れていたこと以外は特に」
真面目くんな板垣くんの問いたい気持ちも分かる。
俺たちが夜の屋上に出ても下手な風は吹いてなかった。
重力に逆らう重い髪を風で扇ぐとなると、それなりの強風が必要だ。
「
「ああ、間違いなく雅美ちゃんは担架を車として利用したことが証明されたよ」
「ええ。警察による鑑識の結果、坂道のスロープの床にはタイヤの跡も残っていましたからね。そのタイヤの跡が例の担架のものと見事に一致しましたし」
今まで黙認していた
「
「お兄さんとて警察です。美味しいところは纏めてかっさらう主義でして」
路上に落ちてる残飯を空から眺めながらチャンスを待ち続ける。
ここでいう残飯とは俺の発言でもあった。
「あははっ。お前らもおめでたいな。その程度の推理力でオレッチを犯人に仕立て上げるなんてな」
「仮にそうだとしてもオレッチがしたという物的証拠はないじゃんか。犯人はそこにいる雅美で確定だろ」
「なっ、あなたって人は!」
恋人に全ての罪をなすりつけ、自分は無害なことを主張する最低な男、正太郎。
愛理は怒って正太郎に近寄り、学生服の胸ぐらを掴む。
「愛理、落ち着け。ここで感情的になったら、犯人の思うつぼだ」
「だって……」
俺は愛理を宥めて、ひとまず落ち着かせる。
「いいから。後は俺と江戸川警部に任せて。これでも俺は名探偵、
「……もう都合のいい時だけ、お祖父さんの名前を出しちゃってさ」
愛理が冷静さを取り戻し、正太郎から距離を置いた。
「正太郎。じゃあ、お前が望むとおりの答えをここに証明してやるよ。二度と言い訳が通用しないようにな!」
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