第11話 居ると信じさせる
「ガチで
「ああ、そうでないとこれらの犯行は実行できない。恋人という理由を上手く使ってこの犯行を仕立て上げたのさ」
他人の恋愛には鈍感なのか、真相を知った
俺は前々から二人の距離感が微妙だと感じていた。
日頃から過ごす友達のわりにはやけにそっけなかったし、まるで赤い糸で紡いでる接点がバレないようにしていたように。
この怪事件を解明しようと考えを巡らせていた時に気付いた二人の関係。
校内では恋愛禁止のレッテルでも貼ってるのか?
「まずはこの写真を見てくれ」
「えっ、例の心霊写真だよね?」
亜香里ちゃんが小さい肩を震わせて、俺から数歩遠ざかる。
「
「愛理、この赤い玉は幽霊じゃないよ。れっきとした撮影者の指さ」
「えっ、これって火の玉でもないの?」
「ああそうだ。近年のカメラは進んで、画像も鮮明でクリアだ。こんな風に肉眼にも見えない心霊写真が撮れること自体が不可能なんだ」
携帯がガラケーからスマホになり、カメラの画質が高性能になってからは、幽霊とやらは疎遠の話となり、単体のカメラと同じく、心霊写真という媒体は自然と消えて無くなったのだ。
「だから最近のTV放送で心霊写真の番組が次々と打ち切りになったのさ。ある意味やらせがテーマだったからね」
写真に幽霊との記録は残せず、更に個人での投稿もぐんと減り、オカルト現象さえも薄れていく現代社会。
金目当てで応募していた人もいたからに、幽霊が写せないという現実は多くのメディアを水に流した。
「犯人である新入生の正太郎は学園紹介の一環のため、少し前のインスタントカメラで色んな写真を撮っていた。しかしある時、偶然にも自分の指ごと撮ってしまい、自ら心霊写真を作れることを知ったんだ」
その気になれば写真に人の顔を写したり、腕や指の本数を増やしたりと多彩の芸当ができる一昔前のインスタントカメラ。
何より安価で手に入るというのは学生にとっては嬉しい限りである。
「
「ご名答、
尚樹が俺の意見に賛同しながら、校長の孫でもある正太郎に目を向ける。
あの鋭い目つきは味方としてではなく、敵対する態度だな。
「正太郎はこうやって幽霊が住む学園という架空のシナリオをでっち上げ、学園七不思議という怪奇現象さえも作ってみせた。口コミやSNSを使用してね」
「だから七不思議のことに先陣を切って、スラスラと口に出してたんだな」
「まあな。ネット社会というものは末恐ろしいよ」
今や、新聞や情報誌、TVなどがなくてもスマホで検索すれば何でも情報が手に入る時代。
しかし、その情報を流してるのも生身の人間であり、メディアがアナログからネットに擦り変わっただけだ。
ゆえにネットならではの落とし穴も多い。
ライターなどの職に就いてなくても、情報提供者が自由に記事を書けるようになったからだ。
その記事に嘘があってもネットは正しいと鵜呑みにする時代……それが何となく怖いのだ。
「こうして正太郎はこの学園には幽霊が実在するという固定概念を埋め込み、雅美ちゃんとこの七不思議の計画を発動させた」
「その初手がトイレの花子さん事件だよ」
この花子さんから全ての事件が始まった。
人は初見で情報を読み取り、安全か、危険かどうかの判断をする。
花子さんの登場はまたとないチャンスでもあったのだ。
「何の冗談よ。亜香里はきちんとこの目で幽霊を見たんよ。見間違えのはずがないじゃん!」
「そう、亜香里ちゃんの隣にいた雅美ちゃんが個室に白いものが居るって言ったんだよな」
「そうよ、トイレの個室をゆっくり開けないと花子の幽霊が怒り出すって……あれ?」
俺は何度も繰り返して観たビデオカメラの映像を思い出しながらも、あやふやな亜香里ちゃんに真実の目を向けさせる。
「ご察ししたみたいだね。その白いものは幽霊の花子さんじゃなく、ただの白い洋式便座だったのさ」
「なるほどね。
雅美ちゃんが悲鳴をあげたのは愛理の大胆さに驚いたのはなく、実は今までいた幽霊が消えたという演技だとしたら……。
見た目お嬢様な雅美ちゃんがそこまで卑しい性格と思えないが……女の子の思考って怖いぜ。
「居るはずのない物を写真を通じて、そこに居ると刷り込みする。正直、中々の手練だよ」
「はん、聞いててバカバカしいぜ」
正太郎が開き直り、俺の推理を罵倒する。
いいぞ、上手い感じにノッてきたな。
そうでないと探偵という職が務まらない。
「なら音楽室のピアノはどういう原理だよ。オレッチは音楽室には一緒に行動したし、あれもまさか人間の仕業だと言うのか?」
「一緒も何も音楽室から音がすると先陣を切ったのはお前からだっただろう」
「くっ……」
俺は時に熱く、冷静に物事を語りながら、徐々に正太郎を追い詰めていく。
「正太郎、今回は相手が悪かったな。これからお前の起こした全てのトリックを暴いてやるよ」
「名探偵、
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