6. とうもろこしはすぐ茹でるに限るわねぇ
「いい艶だわぁ」
青々と連なる大きな茎に葉、フサフサで先っぽが茶褐色のヒゲ根。
そして、
「…………それで、この早朝になぜ畑に案内されたんだ? 手紙にあった通り動きやすい服で来たが」
と隣で滝汗を流しているケネス様。まだ涼しい時間なのに。代謝が良くなったのかしら。前はそんなに暑がりじゃなかった覚えがあるもの。
「…………」
……まあそんな不機嫌丸出しにしていないで、少しくらいお待ちなさいな。今収穫するやつを選び終えましたから。
「早朝が一番いいんですよ。では、早速働いてもらいましょうかね」
「……は?」
「働かざるもの食うべからず。はい、このレンガ持って」
と物置の方と畑を行ったり来たり。
ブロックはレンガを代わりにして、お勝手から鍋を借りてきて。
「はい、この鍋持っててちょうだい」
「…………」
大鍋にたっぷりの水って重いのよねぇ。持ってもらえて助かるわ。身長があるから、たくさん持たせられますし。
「はい、ここにおいて」
それで、レンガを二つ並べて土台を作って、間に炭をチョチョイと置いて火をつけて。
これで外でも湯が沸かせるわね。
「……ここで調理するのか?」
「ふふ、これが美味しさの秘訣なのよ」
準備が終わったので、さっき見当をつけておいたやつを収穫。
根元をきつくおさえて、手前に下げるように引っ張ってもいで。
うんうん。全体がふっくらしていて瑞々しくて、洗って鮮やかな緑の皮を剥いてみれば、実が先までぎっしり。粒が大きいわ。
我ながらなんてまあ立派なとうもろこしだこと。
「ささ、塩を入れたお湯で茹でますよ」
そうしたら間髪入れずにドンドン茹でていく。
柔らかくなったのをざるにあげて、熱をとって。
「はい、どうぞ。熱いから気をつけて頂戴ね」
「……どうやって」
「そのまま齧って食べるんですよ」
アチアチはふはふ、と四苦八苦しながら食べるケネス様。
一口食べて「なんだこれは砂糖なのか!?」なんて顔して。前髪で見えなくても目がキラキラしてるのがわかるわぁ。
「どうして……」
「とうもろこしはね、もいだ瞬間から甘味がグングン落ちていくんですよ」
夜の間に甘くなった朝一番のをもいで茹でたのだから極上に決まってるのよ。うふふ。
さて、次はあみに変えて焼いて、醤油をつけて……。
「……いい匂いがする」
「このくらいの塩梅ですかね。はい、次」
渡されたのを抵抗もなく齧り付いたケネス様。もぐもぐと嬉しそうに咀嚼しちゃって。もう。まだありますからね。
「……この香ばしいしょっぱさととうもろこしの甘さが良いな。焼いたのに瑞々しい、それでいてちょっと焦げた部分が最高だ」
そうでしょうそうでしょう、と首を振ってまで同意しつつ私も一口。
うーん! おいしい!
とうもろこしも食物繊維たっぷりでお通じにいいし、前にテレビでやってたやつがいうには細胞の? 酸化を防ぐ? とかで老化防止にも効くらしいですし。
美味しくて健康にいいなんて、野菜は偉大だわ。
「それで、何か言うことは?」
「もう一本くれ」
「……まったくもう!」
そんな顔で言われたら怒れないじゃないの。
しょうがないのでお土産として残りのとうもろこしを持って帰らせたのでした。
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