24,再確認
二〇一二年七月二十日 正午。
仮眠を取った後、
すぐに俺は、
色々内容を
すると、彼は、何の
応接間にて、改めて、事の詳細を話し終えた。
「話の大半は理解した。
予想よりも、大事にしてしまったようで
申し訳ない」
「いや、和樹さんは、何も悪くないですよ。
タイミングとか、運が悪かっただけ―――」
「それだ!」
「え?」
「タイミング、運。
それが今の自分の性格を形成した要因なのさ」
「
「言い過ぎだと思うだろう?
しかし、この1ヶ月を振り返ってほしい。
今まで、自分が運の良かった場面に
出くわしたか?」
車にひかれかけたの4回。
鳥の
1限と3限だけ急遽休講になったの1回。
行ってみると臨時休業だった事1回。
うん、言い過ぎでは―――ないな。
「今回も読みが浅かった―――」
「いやいや、
誰が今回の件を予想出来る訳―――」
「それが取り返しのつかいないモノだった場合。
全てを失う場合。言い訳が出来ない場合。
それを想定してあのメンバーだった」
「まさか、あのメンバーって、
今回の事件を予想して―――」
「かかった得物が巨大過ぎだがな―――」
ヤバい。人生何週すれば、
この人に追い付けるのだろうか―――。
「すまない、泣き言は此処までにして、
具体的な話をしよう」
「は、はい」
「まず、此方の手札は、2枚ある。
1枚目は、自分の“悪知恵”。
2枚目は、パルカの“海賊”」
腕を組んでいた和樹は、
左手で親指と人差し指だけ伸ばし、
「2」の数字を表現した。
どちらもツッコミたいワードが含まれるが、
取り合えず、聞き役に徹しよう。
「あと、最低でも2枚は、ほしい。
例えば、ヘイトを集められるモノ。
若しくは、壁役のような存在―――」
「ヘイト?」
「あぁ、注意が少しでも引ければ、
時間稼ぎになる」
“アレ”が、使えるかも―――。
「少し、心当たりがあります」
「ホントか?」
「えぇ。但し、それが金髪に通用するかどうか」
「1度、説明してくれないか?」
そうして俺は、
自身の思い浮かんだ話をした。
「採用!」
いやいやいや―――。
「でも―――」
「採用!」
「―――わ、分かりました」
「すぐに、準備させる」
「え?」
そう言って
「もしもし、
相手は、
「“緊急集会”を発令する」
今、この人―――緊急集会って言った?
「あぁ、
オカルト研修部第七支部に所属する、
全メンバーを黒坂邸に召集する。
理由は、
出現。これを撃退する為の
ああ、今の時間なら
美幸さんと、
準備出来た者から、黒坂邸へ集合。
必要な持ち物は、特にないが、
2日程、家に泊まるかもしれない為、
必要な者は着替えを―――。
あと、バイトなどの金銭損失は、
そう言って、電話を切った
それを呆然と眺める
「後は―――」
「ま、待って下さい。何で、そこまで―――」
「三つのルールをもう忘れたか?」
「お、覚えてますけど―――」
じゃあ、言ってみろっと、言わんばかりに、
「1つ、外部にサークル内の事は郊外禁止」
黙って、
「2つ、月1の全体集会。緊急要請の集会は、参加必須」
また、黙って、和樹は一度頷いた。
「み、三つ、誰かが危機に
“絶対に―――助ける”」
「じゃあ、次は―――」
「いやいやいやいや」
「ん?君を名目にした事か?
それなら―――」
「そうじゃなくて!」
つい、大声を出してしまった。
和樹さん黙り、此方を真剣な眼差しで、
こちらの言葉を待っている。
「和樹さんは、何故そんなに、
迷いがないんですか?」
「つまり、君は迷っているのかい?」
「正直な事を言えば―――そうです。
不思議な体験を経験したとはいえ、
この1ヶ月は、
既にそれを上回っている。
それを
平然と受け止めている」
「経験値の問題は、理由にならないよ。
それが事実なら、年配者全員が、
だがその実、『今までこんな事は―――』
『生まれて初めてだ』っと、
大半の方が口にする。
それが悪い訳じゃない。だけど―――、
『それで?貴方はどうするの?』
その問いに、
要は、
用意出来ているかが、
今の君と自分の差だと思う」
自分の意見を“用意”出来ているか―――。
「さっきも言ったが、自分は運が悪い。
それは、自分を悲劇のヒーローだと
客観的な意見を加味した“事実”。
それを踏まえて、
『じゃあ、自分はこうする!』っと、
事前にいくも“用意”している訳だ」
「そんなの―――」
「出来る訳ない。ああ、それには賛同する。
自分が変わり者だと―――」
和樹は自分の頬を掻いて、苦笑した。
「だから、自分を理解する必要はない。
ただ、忘れないでほしい。
自分の行動には、
必ず“
これではっきりした。
何故、
周囲から
黒坂コーポレーションが安泰の理由。
彼が、無能者であるのにも関わらず、
異能者集団の長をしている理由が―――。
「お話中、失礼―――」
そう言って、応接間の扉を開けて
入って来たのは、
「お、お久し振りです」
「えぇ、久し振り」
相変わらず、爺ちゃんと同い年とは、
思えない人だ。
「貴方が危険だと、
こちらもお節介をさせて頂く事にしたわ」
そう言うと、彼女は手を一度叩いた。
すると、1人の少女が、
応接間から入ってくる。
年齢は同い年ぐらいの子。
髪はブロンドで短髪。
瞳はライトブルーの彼女。
しかし、服装はどこぞの軍隊のような
制服を身に
特に、左肩のワッペンは特徴的だった。
中央に西洋の剣が印され、
その剣は王冠を被っており、
左右対称にはユリの紋章。
一体、何者なのだろ?
「イザベルさん?」
そう口にして驚きの表情を浮かべたのは、和樹だった。
「久し振りだな、二代目」
「まだ、二代目では―――」
「そうだったな、忘れていた」
二人は知り合い―――のようだが、
年上なのか?
「若しかして、力を貸して―――」
イザベルは、黙って頷く。
「母さん、イザベルさん感謝します。
これで、4枚のカードは揃った。
後は―――」
和樹は、薫に視線を向ける。
「はい、必要なモノのリストを作ります。
江、悪いけど、手伝ってくれる?」
「う、うん分かった」
こうして、慌ただしく始まった黒坂邸には、
1人また1人と、オカルト研修第七支部の
メンバーが集まっていき、明日へ向けての
準備が
二〇一二年七月二十一日 午前十一時五分。
「喫茶 アイリス」店内―――。
全く、何処まで俺を馬鹿にしているのだが、
しかも、オレンジジュースって、
せめて、カフェラテにしろよ!
まぁいいか、“偶然”にもアイツが、
この店に入ったのを見つけられた。
お陰で、察知する手間が
アイツに取っては、
“運”が悪かったが―――。
ふん、最後の
飲み物も空になっているようだし、
店を出たら“殺す”か―――。
しかし―――。
時刻は、午前十一時半。
―――長いトイレだな。
時刻は、午前十一時四十五分。
―――遅くないか?
時刻は、正午。
―――どんだけ、“大”長げ―――んだよ!
時刻は、午後〇時十五分。
―――ふざけんな!
待つ事をやめたメルクリウスは、
トイレの前まで、移動した。
2度、トイレのドアをノックするが、
応答がない。
ドアの取っ手に手をかけると―――。
「空いている?」
そのままドアを開けると、
そこに和樹は居らず、
代わりに0.3フィートにも満たない
藁の人形が一体。
「へぇ―――いい度胸しているな!」
平静を装うも、心中穏やかではない
メルクリウスは、自身の能力の一つ。
“気配察知”を使用する。
すると、トイレ内部に隠し扉がある事を発見。
地下へと続く梯子を発見し、
1人、ほくそ笑むのだった。
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