22,再放送
二〇一二年七月十七日 午後三時半。
鹿島商店前―――。
サングラスの位置を直しながら、
クスリっと、笑う金髪の大男の前に、
緊張がはしる。
「あれが―――神」
和樹さんは、冷静に相手の姿を見詰める。
次に彼は、
「ま、まさか、この為に私を此処へ?」
黙って頷く和樹は、金髪の男を指さし、
「頼みます」っと、呟いた。
「もう!分かったわよ!」
頭を抱えながら、鷲は前に出て、
自身の眼鏡を外し―――、
「――――――
その言葉と共に、彼女の二つの瞳に、
円が何重にも重なる。
まるで、カメラのレンズが
ズームしているかのように―――。
「アナライズ?」
薫がそう
口元に付け、静かにするように促した。
鷲の周囲には、突風が巻き起こり、
彼女の髪も、それに影響して揺れ動く。
が――――。
「うそ、嘘よ!そんな事って―――」
「落ち着いて、どうしました?」
混乱している鷲を落ち着かせる為、
和樹は、彼女へと近寄った。
「何も、何も分からなかった―――」
「つまり、失敗―――」
「違う!
―――でも、何も―――」
「―――成程」
普段であれば、暫しの瞑想に入るのだが、
今回は、間髪入れずに「護!」と叫んだ。
「分かった」
返事をした護は、店の内部へ、
何かを取りに戻る。
「へぇ―――、面白い能力持っているな。
相手の情報を数値化―――ね。
どうだ?俺の能力の数値は―――」
先程まで、50メートル以上の場所に居た筈の
金髪の大男は、和樹と鷲の前に姿を現した。
「え?何これ?」
「う、動けない―――」
「そんな―――事―――」
「くっ―――」
「――――」
鷲、希、仁、江、和樹の順で、
その場に座り込み、徐々にうつ伏せの姿勢に
なっていく。
「え?皆どうして?」
「分かったか?オマエが
普通じゃない事を―――」
金髪の大男は、薫の目の前へと歩み寄り、
うつ伏せになった一同を指差した。
「本来であれば、人間は神の前で平伏する。
それは、崇拝の意味もあるが、
そもそも、“何も出来ない”無防備の状態。
だから、“人”は“神”に、逆らわないのさ」
「で?オマエたちは、何しに此処へ?」
金髪の大男は、
薫の左肩にポンと手を乗せ、尋ねる。
「それは、こっちの台詞だ」
「そんなの一つしかないだろ?」
「此処に賢者の石はない」
「だろうな、此処に来るのはこれが
初めてじゃない」
「じゃあ何故?」
「“パルカ”への当て付けさ」
パルカ?
「何だオマエ?あの女の名前も忘れたのか?」
「アンタの名前さえ、覚えてない」
「ああ、なら覚えておけ、俺の名は―――
―――“メルクリウス”だ」
言ってみるもんだ―――にしても―――。
「アンタが―――“馬鹿”だって事が分かった」
「あぁ!」
「“場の支配”だっけ?その能力は凄いけど、
油断しすぎじゃない」
「一体何を―――」
メルクリウスは、周囲を見渡すと、
先程まで、うつ伏せになっていた。
5名の姿が―――ない。
「さっきのヤツ等は―――」
そして、薫の姿も、消えていた。
「チッ!
まぁいい。目的の物があれば問題ない」
そう言って、彼は鹿島商店へと侵入する。
しかし―――。
「何でない!何故だ!
何故、“名簿”と“鍵”がない!」
彼の探し物は、見付かる事は、なかった。
「まさか!―――そうかい。
俺を本気にさせたな」
メルクリウスは、ズボンのポケットから
携帯電話を取り出し、とある処へ、
電話をかけるのだった。
時間を少し過去へと
二〇一二年七月十七日 午後三時。
鹿島商店内―――。
メモリーコード05を探し始めて、
十分程度が経過すると、
和樹が唐突に、室内の皆に問かける。
「神が来る可能性ですか?」
和樹の質問を復唱する薫。
「あぁ、君の話から相手は、
何もして来ない可能性は、低い」
「とは言っても、ソイツを撃退する手段はないぞ。
護が棚の本をペラペラと
本棚に戻しながら、答えた。
「別に倒す必要はない。今、必要なのは情報だ」
「情報?」
江は、「水銀」と記載された瓶を持ったまま、
和樹の言葉を繰り返す。
「これは、“推測”の
神と名乗るぐらいだ。何かしら有名な呼称が
あってもおかしくない筈だ。
もし、それさえ分かれば今のこのご時世。
いくらでも情報、運が良ければ“弱点”も、
判明するかも―――」
「情報を盗むのは―――分かった。けど、
盗んだ後は?」
「護」
「ん?」
「今度、何か
一人ずつ、広島まで―――」
「俺は高いぞ」
「背に腹は変えられないさ」
「じゃあ、外の二人にも―――」
江が、外を探している処へ
向かおうとするが―――。
「いや、それはダメだ」
「何で、ですか?」
「彼女たちは、―――嘘がつけない」
そして、現在―――。
二〇一二年七月十七日 午後三時四十分。
尾長山 山中―――。
「そうですか、そうですか、
私たちは、アンタに
過去の話を二人に話終えると、
ご機嫌斜めの鷲は、和樹と睨み合う。
「あわあわ」っと、言葉通り二人の狭間で、
慌てふためく希。
それを
「それにしても、凄いですね護さん」
討論?の二人を放置する事を決めた薫は、
護に、先程の能力について尋ねる。
「まぁな。でも、
「やっぱり、能力って回数制限とかが?」
「回数というか、体力?
―――いや、MPっと言った方が正確か」
「MP―――か」
「それよりも、神の二人の名前を
聞き出せた方が、大手柄だろ?」
「いや、残念ながら名前は、
“ブラフ”の可能性が、高い」
知らぬ間に、奥で地面に円をかいて
落ち込んでいる
それを
和樹が会話に割って入ってきた。
「ブラフ?」
反射的、その言葉を返答する薫。
「自分が知っている限り、
メルクリウスとパルカは、
どちらもローマ神話の神の名だ」
「神の名前じゃないかよ」
頭をポリポリ搔きながら、ボヤく護。
「同じローマ神話の神々が、
それに、格はメルクリウスの方が高い。
「じゃあ、何の為に?」
仁の質問に、和樹は瞑想がに入るが、
すぐに「恐らく―――」っと、
「思った以上に、相手は切れ者の可能性が高い」
和樹予測は、またもや的中する事を、
まだ一同知る
二〇一二年七月十七日 午後四時十分。
不明―――。
ブ―――ブ―――ブ―――ブ―――
謎の少女こと、
パルカの携帯電話のアラームが震え出した。
「何よ、こっちは忙しい時に―――」
携帯電話に記載された相手の名前を見て、
パルカは、険しい表情を浮かべる。
「もしもし?」
嫌々ながらも、出る選択肢しかない事を悟り、
電話に出るも、相手は返事がない。
「何?こっちは忙しいんだけど―――」
「緊急会議を行う。
―――
まるで機械音のような淡々とした女性の声が、
電話の向こう側が、聞こえてくる。
このタイミングで?
「議題は―――?」
「鹿島 薫、黒坂 和樹。計2名を
“第三級”
「―――マジ?」
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