第7話 御山さんの演奏
御山さんが家に上がって妹の部屋に入っていった。
「はぁー、可憐は何てことを考えてるんだ」
(僕が御山さんと釣り合う訳がないのに)
そして自分の部屋でゴロゴロしていると隣の妹の部屋からピアノの音がしてくる。
「可憐は御山さんとピアノのコンクールとかで仲良くなったのかな?」
そう思いながら隣の妹の部屋から流れるピアノの音が一音一音とても心地よく自然と響いてくる。
(これが可憐が弾いてるのか、御山さんが弾いてるのかは正直分からない、だけどとても気持ちいい音色だな)
そして文人はゴロゴロするのをやめて数分間ピアノの音に聞き惚れる。
(やっぱり二人はピアノの才能があるんだな)
そう文人は再確認した、そしてそれから少し経つと音が鳴り止んだ、すると文人の部屋のドアが開く。
「どうだったお兄ちゃん、どうせ聞いてたんでしょ?」
(可憐にはお見通しだったみたいだな、というか毎回ピアノを弾き終わった後に感想を聞きに来るなよ!詳しくないんだから)
そう思いつつも文人は答える。
「一番はとても心地良かったことかな、後は自然と心に響いてる感じがあったぞ」
「そう……」
(ちゃんと答えたんだから何か言ってくれよ!)
気まずい空気を変えるために文人は話題を変える。
「それよりさ、可憐と御山さんのどっちが弾いてたんだ?」
「どっちもかな、一緒に弾いてたから」
(さらっと難しそうな事を言うな)
「じゃあさ、今から才ちゃんが一人で弾くからお兄ちゃんも私の部屋に来てよ」
「いや流石に弾きにくくないか?」
「こっちに来る時に聞いて、大丈夫だって言ってたから大丈夫だよ」
「そうか、なら聞こうかな」
(正直な話、御山さんが弾いてる所を見てみたかったからな)
そして自分の部屋を出て文人は妹の部屋に入る。
「あっ、凡内さん……」
(なんか気まずい)
「ちょっと、お兄ちゃん早く座りなよ」
「あっごめん」
「あと才ちゃん」
「えっと…何ですか憐ちゃん?」
「お兄ちゃんの事凡内さんって言うとさ、いろいろややこしいから名前で呼べば、仲良いんだから」
(なんて事を言ってるんだ可憐!)
それを聞いてか、御山さんはこっちを向いた。
「凡内さん、名前で呼んでも構いませんか?」
「べっべ別に好きなように呼んでくれていいよ」
「分かりました、今日から文人さんって呼ぶようにします」
「はっはい!」
文人と御山さんは気まずい状況で更に緊張している。
「はいはい!もう終わり!、才ちゃんの弾くピアノを聞くよお兄ちゃん!」
「わっ分かったよ」
「じゃあ弾かせてもらいますね」
そして御山さんの演奏が始まると、一気に違う世界に引き込まれる。
御山さんが弾くピアノの音、一音一音が心の奥底へと語りかけているようだ。
喜び、怒り、哀しみ、楽しさが御山さんから感じてくる。
そんな御山さんの演奏している姿に文人は見惚れて、聞き惚れて酔いしれる、まるで魔法がかかったように惹かれる。
そして名残惜しいが御山さんの演奏は終わった。
パチパチパチパチパチパチパチパチと文人と可憐は拍手をする。
「やっぱり凄いね!才ちゃん!」
「ありがとうございます、憐ちゃん、文人さんはどうでした」
「えっと……」
(どうしよう言葉で言い表せない)
「とても良かったです、何というかその……」
文人は結局、御山さんの演奏の感想が思い浮かばなかった。
「言葉が出てこないぐらい凄いって事だよね!お兄ちゃん」
「そっそう、僕の言葉じゃ足りないぐらい凄かったです!」
(ナイスだ、妹よ!)
「そうですか……喜んでくれたなら嬉しいです!、あっ!ごめんなさい!もう家に帰らないといけないのでこれで!」
そう言って御山さんは部屋を出て玄関に向かった。
「才ちゃん、また一緒に弾こうね」
「はい!また今度、必ず一緒に弾きましょう、文人さんもまた来週!」
「うん、また来週」
そして御山さんは帰って行った。
「ねえお兄ちゃん」
「何だよ可憐」
「惚れたでしょ」
文人は分かりやすく動揺した。
「はあー!何言ってんだよ!そんなわけ!」
「顔赤いよ」
「えっ!」
そう言われて文人は顔を手で触りながら隠す。
「嘘だよーだ!」
「からかいやがったなー!」
と戯れながら家のドアが閉まった。
___________________________________________
面白いと思ってくださった方はぜひフォロー、レビューをよろしくお願いします!していただいたら個人的に私のモチベーションも上がります。
正直に思った感想などもコメントをしてくれれば嬉しいです。
誤字脱字などがあれば報告していただけると幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます