第8話 御山さんの苦悩
御山さんの演奏を聞いた次の日、文人は今、学校から帰ろうとした時に大粒の雨が大量に降り始めた。
「うわー傘持ってきたないのに、どうしようか」
すると後ろから声が聞こえた。
「文人さーん!」
その声を聞いて振り返るとこっちに走ってきている御山さんがいた
「御山さん?」
「はぁはぁ、文人さん一緒に帰りませんか?」
「傘持ってくるの忘れたから、ごめん」
「なら私の傘に入っていいですよ」
(んっ!?それってつまり相合い傘じゃないか!)
「……いや、御山さんに悪いからやめとくよ」
文人にとっては嬉しい提案だが今この場所は学校の敷地内、同じクラスの人に見られでもしたら面倒くさいことになるのは明らか、だから文人は断った。
(ここじゃなかったら受けてたのにな)
「じゃあ、雨が止むまで一緒にいます」
「えっ!いやいやいやいや!御山さん帰らなくていいの?」
「私、今日は文人さんと一緒に帰りたい気分なんです」
(シンプルに嬉しい、流石に脈アリとかは思ってないけど)
すると御山さんが暗そうな顔をして話てくる。
「それよりちょっとした事なんですけど相談してもいいですか?」
「いいけど、そんな気の利いた事とか言えないよ」
「それでもいいんです」
「ならいいけど、何の相談?」
「えっと……実は前に参加したピアノのコンクールの地区大会を通過したんですよ」
「えっ!おめでとう!凄いじゃん!」
(でもそれにしては顔が暗いな、普通ならもっと喜ぶのに)
「それで昨日、憐ちゃんと一緒におめでとう会みたいな感じで会ってたんです」
(そういや可憐も何か通過したって言って飛び跳ねて喜んでたな)
「だけど私はあんまり人の前で演奏だったり何かを披露する場は苦手でいつも直前になると頭が真っ白になるんですよ」
「誰だってそうなると思うよ、僕だったらもっとやばい事になってるから大丈夫だって!」
(こんな弱気な感じの御山さんは初めて見た、いつも完璧に器用に何でもできるって感じなのに)
「でも!文人さんとあの時ぶつかったのも、嫌で嫌で逃げ出そうとしてたんです」
「そうだったんだ……」
文人は御山さんの事を今まで何でもできる完璧超人だと思っていた、でも御山さんも心の中はまだまだ未熟で自分と同じなんだと思った、
「そんな私が次に進むなんていいんですかって何回も考えてしまってどうすればいいか分からないんです!だからピアノももうやめようと思ってるんです」
「でも……御山さんはさ、ピアノは好きなんでしょ?」
「それは……」
数分間、御山さんは黙った。
「……僕は御山さんの演奏好きだよ、世界が一瞬で変わったみたいで、聞いてる人が御山さんの弾くピアノの一音一音に満たされて癒されるから」
御山さんはまだ黙っている。
「だからこそ、ピアノを弾く事からは逃げちゃダメだと思う、才能が有る無し関係なく、人間ってさもの凄く時間を費やして努力した事を一回でも諦めちゃうと諦める事自体が簡単になって、いろんな事から逃げ出すようになる」
(そう、俺みたいに何もかもから逃げ出すように……だから!)
「御山さんはまだ踏みとどまってる!多分その理由まだピアノが好きだからなんだと思う、だから好きな間は続けるべきだと思うよ、それに可憐の唯一のピアノ友達がいなくなるのは悲しいからね」
「フフッ、そうですね私は憐ちゃんのピアノの友達ですからね、あっ!雨止みましたよ!一緒に帰りましょう文人さん」
話をしている間にいつの間にかあれだけ降っていた雨は止んでいた、でも御山さんの頬には水滴が垂れた跡と目の赤みが残っていた。
「そうだね、一緒に帰ろうか御山さん」
「はい!」
そして二人は一緒に帰って行った。
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