第二生 目標設定はやっぱり人生の基本だね
僕が産声を上げてから五年ほどがたった。
もう五年か……なんて感慨深くもなる。
ちなみにだが、一人称も年相応になっている。と言うよりも、発音が「僕」でないと難しかった。最初は戸惑いもしたが、精神性と言うのだろうか、自我のようなものが年齢よりになった気がする。
そして、どうやら今世では魔法が使えるらしいじゃないか。
……え?
なぜ伝聞なのかって?
それは僕が一般家庭生まれだからだね。
世界観は中世諸国のようで、貴族階級が存在している絶対王政。階級がものをいう世界だが、名を馳せれば位の一つや二つは上げることができる。名誉貴族ってやつだね。まあ、平民、一般家庭でも貴族の悪口を大声で言ったりしなければ不自由のない生活ができる。
そして、六歳になれば、自分のスキルを鑑定してもらえるのだ。
やったね!
今まで何のスキルがあるのかも、魔法の才能があるかどうか分からなかったのもこのためだ。
自我の発達期が五から六歳ごろとされていて、その期間に能力の発生や発達、何らかの意思の干渉を受けて才能が花開くとのこと。
魔法が使えるならば早く練習をしたいし、魔力も高めたい。
この国は絶対王政を交付したのが武君である英雄的人物が祖であったために、宗教があまり活発ではない。鑑定なども国営で行われている。官邸に必要なスキルの鑑定士というスキルはなかなかレアなスキルで、もし当たれば公務員確定だ。
……今から就職先が不安になるの不況の現世を生きていた人間の性だろうか。
父母は雑貨屋のような小売店を営んで生計を立てているため、金勘定がもともとできる僕はある種安泰ではある。
まあ、廃業なんかすれば別だろうけど。
この世界「アルデバラン」だが、大陸名ではない。言ってしまえば、世界や地球という意味の言葉を直訳したのがこれだ。アルデバラン国とか、アルデバラン大陸などではない。
そもそも場所の呼称のようなものが無い。国という単位はあるのだが、地名が存在していない。
これは、昔の王が区画整備の際に番号を分け与えたからだ。つまり住所ってこと。これを数字のみで区切ったのだ。ある意味偉大だなと思った。とても合理的だ。書くのが簡単だし覚えやすい。
ちなみに名字もこの整備でつけられた。アルデバランのアルデからとり、何番目かの世帯が「アルト」の苗字なのだ。
これもまた訳し方の問題で変化しているが、アルアやアルミみたいなひともいるため、「アル」はほとんど共通なのだろう。平民でもどこの所属の人間なのかはある程度分かるようにされている。
貴族には確か少し変わった名前もいたはずだ。
その代わりと言っては何だが、時代には君臨した王の名前が刻まれるのだ。今世も下の名前からとってデイヴィン期と言う。そのうち仲良くなる予定だから覚えるようにしておこう。
さあ、こんな王政云々の話は置いておいて、今世の僕のことについて話そう。今世の目標は三つ。
一つ。結婚をすること。
今の年じゃ色恋もまあ、周りの年齢的に分からないしそもそも性欲がないからか、美人を見てもそういった欲だの恋だのの気持ちが沸いてこない。感情の一つを失ったみたいな気分で非常に残念だ。前世でもろくに恋愛なんてしてこなかったから……いや、前前世か。まあ、してこなかったのでちゃんと女性と接することができるようにはなりたい。
ただ、まあ、女子の知り合いは少ないし、友達もいないから……これから要努力だな。
二つ。魔法を自在に操れるようになること。
これを説明する前に、この世界の魔法の法則について補足しよう。
普通と言うか、一般的な考えで言えば火や水、風みたいな属性的に分かれた才能があったりするのが現世の考えだと思うんだが、この世界はどの技も基本は「テレキネシス」という念動力から派生したものだと言われている。つまり、どの事象も念動力の物理的な力によりさまざまな事象を発生させているとしているのだ。
かえって難しい説明だろうか?
まあ、とにかくそこさえ極めてしまえば、後は応用がききそうなので、そこだけは絶対に押さえたい。
ただ、これも鑑定まではお預けなのが辛いところ。レアなスキルとまでは言わないが、専門書がないと訓練なんてままならないレベルではあるため、専門の機関に入らなければいけない。言わば魔法の専門学校と思ってもらって構わない。
ちなみにこれも国立機関であるため極めれば教員として教壇に立ち安泰な生活を送ることが……いけない、すぐに将来の心配をしてしまうのはだめだな。
いや、二回も死ねばこんなものだろうか?
そして三つは、来世つまり転生と転移についての研究だ。
現世では果てしなく狭き門だったが、今世はどうやら多く転移・転生者が存在しているらしく、うまいこと国に取り入ってくれているみたい。これを口実に、もっと研究して国力を上げたいなどと王様に取り入れば、国立の研究機関なんかも作れると考えている。みんな不老不死は欲しいだろうからな。
研究がもし叶えば、またうまくいかなくても生まれ変われる。
決して死ぬ気なんてないよ。来世があるかどうか分からない限りは。
今世の目標が決まったところでまた私の登場だ。
今世はなかなか頑張って生きることができたことを前もって報告しておこう。
じゃあ、その理由は何か、と言えば、この最初に目標を立てたのが良かった。
ほら、学校の授業なんかでも細かな見通しを立てて取り組んでいくだろう。それと同じように、小さな目標を、細かく設定していけば、生きながらえることくらい分けないってことさ。
だから、異世界マニュアルその四は、
「細かな目標を設定する」
で決まりだ。
ここまで話を聞いてもらって、わかっているとは思うが、この世界はかなり異質だ。私もその波には逆らうことができなかった。
また注意しようと思うが、決して自分の能力を誇示するようなことはしてはいけない。異世界現代知識無双がいけないこととは言わないが、神様が作る世界であまりお痛が過ぎると、ね……神様も色々あるそうだから。
とりあえず言っておくが五つ目は
「あまり能力を誇示しないこと」
そして、六つ目、
「与えられた能力を過信しないこと」
後々話すが、早めに話しておきたかった。
神様はあまり私たちに関心がないのだから、行動は自重するように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます