第4話 少女の探し物(4)

 パン屋を出てから少し、夕日は沈みかけ街灯に光が灯りはじめた。僕たち一行はベネットの中央部から離れ町の南西の方に進んでいた。


 広い通りを外れ狭い道を進んだ先の少し開けた場所、先生の店があった場所に雰囲気が似ている。

 

 先生についていくようにして進んでいくと、整列しているようにして立っている建物のうち、周りに比べて小さい一軒の家で足を止めた。入口にひもで吊るされた木の看板には『修理屋』と書いてあった。



「ここがこの町で一番腕の良い修理屋です。店主は少し変わっていますが気にしないでください」

そう言うと先生はドアを開けた。



 修理屋というだけあって、部屋中に置かれた棚に大小様々な道具や骨董品のようなものまで飾られてある。


その珍しさにきょろきょろ店内を見回していると、

「おぉロイじゃねーか。どうした?修理の依頼か、それとも仕事か」

アンよりも少し高く幼さが目立つ声が僕たちを出迎えた。



 声の主の方を見ると受付らしきカウンターに肘をついてこちらを見ている少女がいた。


 ボサボサした灰色のショートヘア、同じ色の大きく端が少し吊り上がった目、首には仕事で使うのか大きめのゴーグルがかかっている。こんな幼い子がここの店主なのだろうか。



「やぁドリス、少しお邪魔するよ。今日は仕事の方でね、探し物がここで修理されてると聞いて尋ねてみたんだ。小さな懐中時計なんだけど。ここにあったりしないかい?」

先生がカウンターに近づいていく。僕たちもそれについていく。


「あるぞ。あれが必要なのか?」説明もなしに品を見せてくれと言われ少女は少し困惑しているようだ。


「ええ、とりあえず探しているものと同じか確かめたいので持ってきてもらえませんか。説明は確認が終わった後にしますから」


「まぁ、ロイならいいか。ちょっとまってろ」

そう言うと少女は店の奥に入っていった。



「ロイ先生、あの子がこの店の店主なんですか」

 少女がいなくなったタイミングで先生に聞いてみる。アンも僕と同じ疑問をもっているようだ、先生の方をみている。



「そうですよ。名前はドリス、幼い少女のような見た目ですが君たちよりも年上のこの町一の修理の腕をもっている私の古くからの友人です。見た目や言葉の語気から最初は不信に思われがちですが、とっても優しい子なんですよ」

なにか楽しそうに先生が語っていると、少女が戻ってきた。



「ほれ、これじゃないのか」

少女の手には金色の懐中時計が握られていた。十二時の方向から同じ色のチェーンが垂れ下がっていて裏には花の模様がある。



「これです!これを探していたんです!」興奮気味のアンがカウンターに駆け寄る。

「2,3日前に男がこの時計の修理を頼みに来たんだ。もう修理はしてあって渡してもいいが、状況が全然読めない。そろそろ説明してもらってもいいか」

少女はロイに向き直る。



 分かりました、と先生は説明を始めた

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