勇者召喚って誘拐じゃないですか? 2

 さて、今起きている現状をまとめてみましょうか?


 まず、宰相閣下の前で座っている黒髪黒目少年少女たちは、所謂勇者召喚としてこちらの世界に呼ばれた存在の異世界人です。


 この世界では、かつて魔王が存在していて、勇者召喚をして魔王討伐に成功した功績があります。

 また、その際に大量の勇者として召喚された少年少女たちをクラス転移として呼ばれている伝説となっております。


 クラス転移していたきた彼らはこの世界にたくさんの常識や法律、書物や発展に繋がる研究の知識を残してくださいました。


 そんな彼らが残した言葉として、我が身が最も気に入っている言葉がテンプレです。


 テンプレとは、テンプレートの略称で決まった流れの中に生じるストーリーの構成を指します。


 これは我々の書類の雛形という言葉としても使われていて、見本のような考えだと言われています。


 そんな彼らが残してくれたテンプレの一つに勇者召喚という書物も存在します。


 勇者召喚された異世界人はチート能力と呼ばれる特殊な力を宿して、異世界からやってきます。また異世界で死ぬ寸前だった者しかこちらの世界に来る事はできず、勇者召喚を行えるのはこの国の権力を持つ王族や巫女の位があるものだけと言われています。


 それは何故なのか? 流石にその謎は神と言われる異世界人でもわかっていないようです。


「皆さんはどうされたいですか?」


 我が身が考えてに耽っていると、宰相閣下が彼らに問いかけました。


 本来のテンプレ的な展開では、王国の危機的状況を救うために異世界人を召喚して危機から救ってもらいます。


 ここからの分岐も存在するわけですが。


 1、異世界から召喚された少年少女が力を合わせてこの世界を救ってくださるのが王道的なテンプレです。


 2、異世界人の能力を王様の前で鑑定して、ゴミ能力やクズ能力と言って一人を追放しますが、そんな彼が覚醒して、王国に不幸をザマァしにやってくるのです。


 3、ダンジョンに異世界人を連れて行って、奈落の底に落としたら、覚醒して帰ってくるといったテンプレもありましたね。


 4、召喚された瞬間から、賢くチート能力を使って悪いことをする人もいるので、注意が必要な場合があるとも書かれていました。


 今回も厄介な匂いがプンプンしてきますね。


 事前に宰相閣下から、三人についてはデータをいただいております。


 黒髪黒目の美少年、目黒メグロスナオ君。

 黒髪黒目の美少女であるタイラユウナさん。

 メガネに神経質そうな黒髪黒目の辺見ヘンミヒネル君。


 異世界人の方々は家名が前に来るそうなので、本来はスナオ・メグロと呼べばいいのですが、彼らが名乗った通りに資料には書かれていました。


 三人の関係を観察していると、中心になるのはスナオ君に見えますね。

 幼い王女様も懐いておられるように見えました。

 また、ユウナさんもスナオ君に好意を抱いているように感じました。


 また、ヒネル君は巻き込まれた感を出されております。


 テンプレの中には巻き込まれた者が覚醒するという話もあるので、もしかしたら、注意が必要なのはヒネル君かもしれませんね。


「どうされたいかですか?」

「はい。私たちは、此度の勇者召喚はイレギュラーとして考えています。本来は世界の危機に際して勇者召喚を行って世界の危機を救っていただくお手伝いをしていたきます。ですが、現在は世界は安定をしており、勇者様方の魂を強引にこちらに引き寄せることは禁忌として扱われております。ですが、召喚してしまった相手を蔑ろにするつもりはもちろんありません」


 これまで多くの勇者たちが世界を救った功績があります。

 もちろん、問題を起こした勇者もいるので、注意は必要になるが、人権を主張されるのであれば、受け入れる準備をすることでしょう。


「あの、聞いてもいいですか?」

「はい。ヘンミさん。どうされました?」

「どうして、禁忌とされているのに俺たちはこちらに呼ばれたんですか?」

「そうよ! 確かに向こうにいたら死んでいたかもしれないけど、変よね」

「それについては調査中であり、皆様にも協力していただくことになるかもしれません」


 ふむ。幼い王女様お一人で召喚を成功できるとは思えません。

 勇者召喚にはそれなりの準備が必要だと言われています。


「つまり、僕らをこちらの世界に呼び寄せて何かを企んでいる人たちがいるということでしょうか?」

「おそらくは。その者たちが接触を図ってくることも考えられるので、すぐに放逐することもできない状態です。ですから、今後の方針を考えながら、皆様がどう過ごされたいのか話し合っていければと思っております」


 彼らが異世界人である以上どのようなチート能力を持っているのかわかりません。

 そして、それらを悪用しようと考えている者たちに利用させるわけにはいかないのです。


 そのため、我が身が呼ばれました。


 彼ら次第で我が能力で制約をかけることができるからです。


 判決をいい渡すことで、その事柄は効力を持つようになります。

 ですが、それらも彼らと話し合いを行って、法律に基づいた人権を尊重したものにしなければいけません。


 若い彼らには深い理解が求められます。

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