冒険者ギルドには問題が山積み 調書
《sideマリアンヌ》
本日の私は事務仕事に追われています。
リブラ様のお手伝いをしているのは私だけで、これだけの量を本来はリブラ様がお一人で行っていたのだと思うと驚異的な仕事量に思えます。
特に緊急の案件などがいくつかあるのですが、それらを見極めて法の元で困っている方々をお救いするように動かれているリベラ様はやっぱり凄い人だと思ってしまいます。
私などよりも一歩も二歩も先を歩かれている方なので、学ぶべきことが多いと常々感じさせられてしまうのです。
今回の冒険者ギルドで起きた数々の問題も、結局はリベラ様が間に入ることで解決してしまいました。
ただ、気がかりなのは、手紙の五通目です。
リベラ様は手紙は五通あったと言われていました。
三通は、裁判中に読み上げ、四通目はシビリアン様のことが書かれていたと報告を受けました。ですが、五通目に関しては教えていただけなかったのです。
そして、もう一つ。
今回以外でも私の仕事は裁判以外でもリベラ様の仕事をまとめるお手伝いをしています。その中でリベラ様は私を隣に座らせて、勉強をさせるように振る舞っておられました。
それにはどんな意味があるのでしょうか?
「アーサー君。パトラさん。今日はリブラ様が王城に報告行かれているので、ご飯の用意をさせていただきました」
「ホー」
「ニャオ」
リベラ様のペットであるフクロウのアーサー君。ロシアンブルーのパトラさんは、魔力を帯びた魔物だとリベラ様が説明されていました。
そのため寿命はなく、魔力を与えていれば生きていられるそうです。
お二人は、リベラ様の護衛として法治国家テルミからついてこられたそうです。
魔力以外にも普通にご飯を食べるということで、時間が来たら与えて欲しいと言われていました。
「お二人は、凄くお強いのですね。私もリベラ様のお役に立てているでしょうか?」
「ホー」
「ニャオ」
アーサーさんが首を傾げ、パトラさんが足元に擦り寄ってくれました。
リベラ様は全てを私には明かしてはくださいません。
それはヒントを出して、宿題を解かせる教師のように、私に考えることを教えているのだと思います。
「さて、仕事に戻りましょう。かなりの量がまだまだ残っていますからね」
今日一日では終わりそうもない書類をしなければいいけません。
仕事ですから、書類仕事をするのは嫌だと思っているわけではありませんが、これだけ膨大にあるとどうしても気持ちが落ち込んでしまうのです。
ですが、気合いを入れてやるしかないですね。
私は袖を捲って机に向かいました。
ランチ時になってもリベラ様は戻られませんでした。
今日の報告はそれだけ重要なことなのでしょう。
この間、起きた国選パーティーの事件は、国の代表選手の不祥事のようなものです。クリス王子に続いての出来事に、王様も頭を悩まされることでしょう。
私としては他人事のようで、弟がいなければ自分も貴族の家中に放り込まれていたことを思えば、王様には同情してしまいます。
こうして就職先を斡旋していたので、恩を感じていますからね。
「マリアンヌ様、いるかしら?」
「これは! ミレディーナ様! どうしたのですか?」
「良いお菓子とお茶が入ったから持ってきたの」
少食のランチを終えて、少し休憩をしようと思っていると聖女ミレディーナ様がやってこられました。
「あら、リベラ様はおられないのかしら?」
「今日は先日の国選パーティー追放事件に行かれておられます」
「まぁ、そんな事件名がついたんですの?」
「はい。それがわかりやすいだろうとリベラ様が言われていました」
「ふふ、あの方はユニークね」
この方は、神聖国から正式に聖女の一人として認められている元、王国国選パーティーのミレディーナ様です。あの時は冒険者の装いでナチュラルメイクに冒険者の装いでした。
ですが、今回は髪を整え、化粧をして、ドレスを着ておられます。
その姿は、どこかでの貴族令嬢を思わせるほどに美しく、男性のために武装していることが女性の身として理解できてしまいます。
きっと、リベラ様はお気付きにならなれないでしょうが、自然に綺麗だと口にされてしまう人です。
「ミレディーナ様はどうしてリベラ様のことを?」
「あら、それはマリアンヌ様もわかるのでは?」
「うっ」
「ふふ、その話はやめましょう。私はあなたと本当に友達になりたいのよ。あの方を取り合って喧嘩をしたいわけじゃないの」
「そうですね。すみません」
「いいのよ。それよりもマリアンヌ。あなた、仕事仕事でお化粧を怠っているのではなくて?」
言われて私は化粧も簡単にして、少し前まで着飾っていたのを忘れたように仕事に適した簡素な装いになりつつあります。
「あの方は常に仕事でもご自身を整えているわよ。あなたもそれはしないといけないのではなくて」
「うっ、仕事が忙しくて」
最近は山積みの書類と格闘していて、そんなことすら考えてもいませんでした。
「いいわ。今日は気分転換にいきましょう」
「えっ?」
「リベラ様は仕事をサボったぐらいで怒るような狭量な方ではありませんわ。あなたにはリフレッシュが必要です」
そう言って、強引にミレディーナ様に連れられて、美容室とエステに行きました。
「お化粧をしなくても、あなたは元々が綺麗なのだから素材を磨くぐらいをしないダメよ」
「はい!」
今まで侯爵令嬢として、同性の令嬢に指示を出すことはありましたが、このように気心が知れるように話しかけてくれる人が珍しくて、私はついつい言われるがままになってしまいます。
「マリアンヌ」
「はい?」
「リベラ様は、これから多くの困難に直面すると思う。どうか一緒に支える立場でいてね」
「えっ?」
「私もだけど、彼は王国では他所様なのよ」
そう言って笑ったミレディーナ様はとても美しくて、このような女性になりたいと思いました。
「はい! 必ず!」
「ふふ、最後は甘い物を食べて、ストレス発散よ」
「はい!」
仲の良い友人ができて、私はとても嬉しいと感じました。
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