冒険者ギルドには問題が山積み 11

 全ての情報が出揃いました。


 一部、欠落してしまっている内容もありますが、シビリアン様の追放についての裁判に対する判決を言い渡す情報は出揃ったと判断できます。


「判決を言い渡す前にシビリアン様の追放について、再度多数決を取ることにしますが、その前に五人は現場でパーティーを続けていく意思はありますか?」

「私はないわね」

「俺もだ」


 聖女ミレディーナ様、聖弓シビリアン様が我が身からの言葉にはっきりと否定を口にする。


「ふん、全てが明るみに出てスッキリだ! 貴様らのことなどどうでもいい。テルミーのいない世界など意味はない。解散に賛成だ」

「ワシもじゃもうよい」

 

 聖拳ガルディウス様は、ある意味で純粋に好意を持っていたが故に力無く項垂れる。賢者アーロン様も肩を落として解散を受け入れた。


「ちょっ、ちょっと待てよ! みんな国選パーティーへの気持ちはその程度なのか!」

「フォーリング様は続行を望まれますか?」

「当たり前だ! 私は! 私は国選パーティーでいることに自覚と誇り自信を持ってやってきた。それなのにこんな痴情の絡れで終わりを迎えるなんて……」

「お言葉ですが、痴情の絡れと言われますが、最初に追放を言われたのは、フォーリング様です」

「そっ、それはシビリアンが奴隷の少女を殺したことで人間性を疑ったからだ!」

「なるほど、解散は反対ではあるが、未だにシビリアン様の追放は継続ということですね」

「そうだ!」


 果たしては本心はいかがなのでしょうか? そして、シビリアン様はどうして奴隷を凝らされたのでしょうか?


「解散する4、しない1で、パーティー解散に賛成多数となっています。フォーリング様に問います。どうして、そこまで追放にこだわるのでしょうか? その気持ち次第では皆さんの心を取り戻せるかもしれません」


 追放した側がザマァされることはよくあることです。

 ですが、追放した側にも事情があり、それが正当性がある場合は擁護しても良いと我が身は思っております。


 互いの事情を聞かなければ、そのテンプレの疑問点に直面することはできないと考えるからです。


「おっ、私は……ずっと、おかしいと思っていたんだ」

「おかしいですか?」

「そうだ。リーダーは私だ。能力が高いのも私だ! それなのに、方針を決める際にはシビリアンに賛同する者が多かった。それだけじゃない。罠解除や、部隊の指揮、それらもシビリアンが仕切っていたのだ。おかしいだろ?! リーダーは私なんだ! それにテルミーもそうだ。恋人である私よりも気になる人がいて、まだ決め切れないだと許せるはずがない!」


 吐き出される言葉の数々が信じられないほどに馬鹿馬鹿しくて幼稚な発言に、一同は言葉を失っています。

 

 己の力を示すため、己の自尊心を満たすため、聖騎士フォーリング様には己以外の存在は己を崇め奉ために存在しているかのようですね。


「フォーリング様、もう結構です」

「だから、私は奴隷の少女を殺させたのだ」

「!!!」

「プライドが高く、聡いシビリアンを罠に嵌めて、本当はなんの関係もない罪のない奴隷をスパイの少女に仕立て上げて殺させた」

「なっ!」


 シビリアン様が立ち上がってフォーリング様を見ました。


「気づいていなかっただろう? お前よりも私の方が優秀なのだ。だから騙せてしまう。お前は私が何にもできない真面目なだけが取り柄だと思っていたのだろう。何も知らない私ならば適当にあしらっていればいいと思っていたんだろう!」


 シビリアン様の事情は、手紙のに書かれていました。


 彼は優秀が故に、冒険者でありならが国の諜報機関に勤めていたのです。

 スパイというのは、国選パーティーに選ばれた者たちの中に、問題が発生していたので、国側が調査をシベリアン様に依頼していました。


 ですが、諜報活動を生業にする者を欺くほどの入念な準備をフォーリング様がされていたのでしょう。

 奴隷少女を殺した理由は、数々の奴隷少女が行った情報収集とそれを冒険者ギルドを通じてやり取りした痕跡が原因でした。


 まさか、それが全てフォーリング様が仕込んだことであり、スパイと疑われるような仕事をさせていたとはシビリアン様も考えてはいなかったようです。


「お前が! お前が!!」


 今まで見せたこともないシビリアン様の表情にフォーリング様は満足そうな顔をされていました。


「自分は優秀だと思っていたのだろう? お前がこそこそと動いていることには気づいていたんだ! 私を真面目バカだと思い込んでいたお前が悪いんだ! あは、あははははははははは」


 狂ったように笑うフォーリング様。


 嫉妬。


 シビリアン様は聖騎士フォーリング様、能力で嫉妬され。聖拳ガルディウス様に恋慕で嫉妬されていた。


 男の嫉妬は醜いのですね。

 

 このような結末を迎えることになるとは、誰もが予想していなかったことでしょう。


「判決を言い渡します。国選パーティーは解散。ギルドマスターは速やかに国の事情を説明してください。聖騎士フォーリング様の処遇はギルド側に委ねます。聖女ミレディーナ様、賢者アーロン様、聖弓シビリアン様には、個別でお話ししたいことがあります。最後に聖拳ガルディウス様は仲間殺しという罪を背負うことになります。冒険者の法律は、国が定めた物や国際法とも区別がなされています。ギルドマスターこちらもお願いして大丈夫ですか?」

「任されよう。このような形になったことは大変悲しいことだが、責任を持って罪を償わせる」

「ありがとうございます。聖騎士フォーリング様、聖拳がルディウス様は罪を償う以外で能力発動を制限させていただきます」


 我が身は五人の罪状を伝えて木槌を打ち鳴らします。


「これにて国選パーティー追放事件を閉廷します。追放に関しては無罪。国選パーティーは解散。各々の罪に従い。ギルドマスターと話されませ」


 我が身は個別で話を聞くと言った者以外を解放しました。

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