冒険者ギルドには問題が山積み 8

 彼の言葉に皆が耳を傾けるような状況になり、我が身という存在が彼の話が嘘偽りないことを証明することで、シビリアン様は饒舌にその口を開き始めます。


「まず、あの時の罠を発動させたのは俺じゃない。テルミーだ」

「なっ! この後に及んで、そんな嘘を!」

「嘘ではありません!」


 フォーリング様の発言に我が身が否定を口にします。


「ツッ!」

「次に無駄な発言をなされるようでしたら、静粛カードを使わせていただきます」

「くっ」

「ありがとな。あの罠はテルミーが発動して、パーティー全員がバラバラに転移させられた。そして、彼女は死んだ。確かに俺は彼女の近くに転移していたことは間違いない。言い争いもしていたことも認めよう。だが、言い争いは罠を発動させたことに対して、どうしてだと問いかける内容で、彼女の返答はごめんなさいの一点張りだった。俺は問いかけても意味がないと判断して、彼女から離れて集合場所に向かったんだ」


 シビリアン様の話に嘘はありません。


「どうして? どうしてテルミーが罠の発動を……」

「それについてですが、一点我が身からよろしいでしょうか?」


 我が身は持ち込んできた手紙を取り出して、彼らの前に提出します。


 ある内の三通を提出します。


「まず一通目には、国選パーティーのあなた方が仲間割れをして、追放沙汰になっているので、どうにか収められないかという国からの願いが書かれております」


 マリアンヌに指示を出して、モニターに見える文章を二枚目にして切り替えていただきます。


「続いて、二枚目は、現在国も調査中ではあるが、国選パーティー内にスパイが紛れ込んでいる可能性があると判断しています」


 詳しい事情などは書かれていませんが、それにより国選パーティー内に不協和音が生まれているのではないかと書かれています。


「三枚目は、元国選パーティーである補助魔導士テルミー氏の遺体が忽然と消えてしまっているということです」

「なっ! なんだと!」


 二度の警告を無視したために、我が身はフォーリング様に静粛カードを発動しました。


「さて、これは国からの正式な文章であり、あなた方の中にスパイが紛れ込んでいると国は疑っております。そして、此度の追放騒動に、奴隷殺し、さらにかつての仲間の遺体が忽然と姿を消した事実。なかなかに謎が深まってまいりました。そして、ここまで話を聞いて、いくつか我が身には疑問に思うことができました。そこで、ギルドマスターと受付嬢に証人として、お話を聞きしたいのですが、よろしいですか?」


 我が身の問いかけに、ギルドマスターは受付嬢を見てから頷いてくれました。


 どうやら、この場にいる人間は全てが、国選パーティーと関係深いようですからね。


「改めて、名乗っていただけますか?」

「王都冒険者ギルド、ギルドマスターオーフェンだ」

「受付嬢のエト・イフです」


 ギルドマスターは頭を掻きながら困った顔で。

 イフさんは、戸惑うような態度で証言台に立たれました。


「お二人にお話を聞きたいのは、彼ら当事者ではなく、第三者として見た際の彼らの様子です。ギルドマスターが、どの程度彼らと交流を持たれていたのか知りません。むしろ、イフ女氏の方が、受付として関係が深かったかもしれません」

「まぁそうだな。俺は、普段は執務室にいるかヒヨッコども世話ばかりで、あまり冒険者と関係を結ぶことは少なかった。国選パーティーとして、名前や顔を知って挨拶はしてたいが、依頼も直接彼らとやりとりをすることはない」


 ギルドマスターの言葉に、フォーリング様たちも頷いて嘘は全く感じられません。


「ありがとうございます。それでは今回の追放騒動は寝耳に水だったのでは?」

「あ〜それについては、普段から仲が悪いことは聞いていた。それに国選パーティーになる前に一悶着あったこともな」


 ギルドマスターなりには気にかけておられてたようですね。

 言葉に澱みがなく、一切の嘘も力みも感じられません。


「では、イフ女氏。あなたはいかがですか?」

「えっ? 私は、皆さんが円滑に仕事ができるサポートをしていただけですので、内情までは詳しくは知りませんでした。ギルドマスターと同じか、それよりも少し聖女様やテルミーさんとお話をする回数が多かっただけです」


 言葉が詰まりながら、所々に動揺が感じられる話し方は、嘘なのか判断が難しいです。ですが、どこか気持ち悪さを感じてしまう箇所がありました。


「普段から聖女様と呼んでいるのですか? テルミーさんのことはさん付けなのに?」

「えっ?」

「仲が良くなっていけば、名前で呼ぶことも多でしょう。なのに聖女様と」

「あっ、それは」

「それについては俺から説明しよう。彼女が受付をしている際に、聖女ミレディーナ様に叱られたことがあるんだ」

「叱られた?」

「ああ、冒険者を分けることなく公正に判断すべきだと」

「公正にですか。ふむ、それはまた正義感のお強いことですね」


 ギルドマスターの言葉で、皆さんの視線が聖女様に向きます。

 ですが、彼女は微動だにすることなく、目を閉じて傍聴を続けておられます。


「それで聖女様のことは、皆が聖女様と呼んでいる。他の国選パーティーのことも同じように様で呼ぶようにしているんだ」

「なるほど。では、もう一つ。国選パーティーの中にスパイがいると思われますか?」

「……いないと言いたいが、俺にはわからない」

「はっ、はい! 私もわかりません」


 二人の返答を聞いて、一人の言葉に嘘が混じりました。


 どうやらこの二人も、無関係ではないようですね。


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