冒険者ギルドには問題が山積み 7

 整理をすれば、罠が多いダンジョンに挑戦をして、罠を感知できる二人の内一人が罠を利用して全員を分散させて、テルミーさんを殺害したのではないか?


 そして、罠を探知できる一人が死んだことで残りの一人が疑わしい。

 しかも、言い争っている声を聞いて、死体が見つかった場所の方角からシビリアン様の疑いは濃厚。


 しかし、物的証拠はなく。目撃者もいない。


「テルミーさん殺害については、正直に申し上げて証拠不十分としか我が身からは申し上げられません。シビリアン様、反論はありますか?」


 我が身が問いかけますが、シビリアン様は首を横に振る。


「俺は何も答えるつもりない」


 何かを発せれば、我が身に宿る嘘を見破る能力によって看破されることを危惧されているのかもしれません。

 シビリアン様は、相当に頭の切れる方のようです。


 一度、我が身から発せられた説明で十分に理解されています。


 弁明の一つでもしてくれれば、それを嘘だと真意を問いただすこともできますが、何も答えなければ真意も何もありません。

 こちらが質問を投げ掛けても、黙秘モクヒを続けられることでしょう。


「それでは質問を変えましょう。お三人がシビリアン様を追放する理由が、亡くなったパーティーメンバーの殺害疑惑があるからだということはわかりました。ですが、確証がなく此度の第二の事件が起きたというわけですね?」


 フォーリング様をもう一度証言台に立ってもらって問いかける。


「ああ、そうだ。今回は奴隷の少女がシビリアンによって殺害された。確かに我々は盗賊や犯罪者などと戦うことがあり、人を殺したこともある。だが、それはあくまで仕事として割り切っての行動であり、誰でも殺したいと思う殺人鬼ではない。あいつに背中を預けて戦いに向かうことは私にはできない」


 フォーリング様はシビリアン様を睨みつけるように思いを吐き出されました。


「つまりは、不信が募り信用に足る人物でないために、共に冒険ができないため追放をすると?」

「そうだ。もしも、シビリアンが抜けることで国選パーティーとしての認定を取り下げられるなら甘んじて受けよう。だが、我々が抜けてシビリアンが国選パーティーとして残るのであれば、我々は王に交渉してでも、シビリアンをどうにかしてみせる」


 フォーリング様が見せる覚悟に我が身からは、深々とため息を吐くしかありませんね。


「覚悟はわかりました。ですが、真実を確かめるまではお待ちくださいとしか我が身には言えません。それでは次にシビリアン様、反対弁論をお願いします」

「はいよ」


 証言台にシビリアン様が立つ。


「現在、他の方々はあなたを追放しようとされております。それについて答弁を求めます。まずは、此度、奴隷の少女を殺した経緯を教えてください」

「経緯も何もないさ。ただ、殺すって決めたから殺しただけだ」


 端的な言葉で、嘘を混じらない意味を持った言葉に、シビリアン様はニッコリと笑いながら、我が身を見つめます。


 その瞳は挑戦的な様子で、我が身に挑んでくる様子が窺えます。


「ふむ、その賠償はしっかりされておりますね。法律にも明るい様子です」

「まぁね。冒険者だけど、貴族としてある程度勉強は必要だろ?」

「その通りですね。知識こそが、我が身を守る盾にございます。シビリアン様は頭の良い方であることは理解できます。だからこそ不思議に思う点が多々見受けられますね」

「なるほど、君はそうやって相手を揺さぶって、話を聞き出そうとするのか。いいよ。付き合ってあげる。まずは、何? テルミーを殺したかどうか?」

「話してくれるのですか?」

「ああ、いいよ。俺は直接的には殺していない」


 シビリアン様の発言にパーティーメンバーはハッキリと断言したことに驚かれました。これまでひた隠しにしていた方が白状するのはかなりの驚きでしょう。


「嘘はありませんね」

「嘘だ!」


 我が身で聞いた耳の力によって、嘘をついていればわかります。


「いいえ、シビリアン様は嘘をついております」

「殺していない?」

「そうだって言っているだろ」

「なら、今まで黙っていたんだ! お前が黙っていたから俺たちは真実を突き止めるために色々と調査をしたんだ!」

「静粛に! 静粛に! 今はフォーリング様の質問は求めていません」


 我が身から発せられる言葉に、憮然とした態度でフォーリング様が黙って座った。


「申し訳ありません、シビリアン様。ですが、皆様も求めていると思います。どうして今になって話す気になられたのですか?」

「あんたがいるからだよ」

「我が身ですか?」


 シビリアン様がこちらを指されました。


「ああ、さっき嘘を判断できるって言っていただろ。この場で真実を告げれば、俺がどんなことを言っても証明してくれるって思ったからだ」

「ええ、その通りです」

「だからだよ。俺を疑っている相手に、いくらしていないと言っても信じないだろ?」

「なるほど、理にかなっていますね」

「それでは直接的にではなく、間接的に殺人に関係をしておられるのですか?」


 我が身は、シビリアン様の言葉で疑問に思ったので、問いかけました。


「やっぱりそこを聞いてくるか、ああ、そうだ。俺自身が殺したわけじゃないが、関係はしていると思っている」

「それをお話しすることはできますか?」

「ああ、いいぜ。ここでなら、ちゃんと俺の話を聞いてくれそうだからな」


 追放される人間の言い分はいったいどのようなものがあるのでしょうか? ここが分岐点になることでしょう。

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