冒険者ギルドには問題が山積み 6

 いつもながらの決まった説明をしなければ能力を使うことができないのは、不便ではありますが、我が身はそれぞれの位置で座っている人たちに目を向けながら言葉を発しております。


 此度は、訴えを起こした原告側である聖騎士フォーリング様、賢者アーロン様、聖拳ガルディウス様が座っておられます。


 被告側には聖弓シビリアン様が一人で飄々とした様子で話を聞いてくれています。


 さらに傍聴席には、ギルドマスター、受付嬢、聖女ミレディーナ様が座しておられます。


 聖女ミレディーナ様は、中立を訴えられましたので、此度は傍聴席へと座ってもらっています。


 マリアンヌは簡易裁判所に続いて、我が身の隣で記録をしてもらいます。


「さて、以上が我が身の能力です。把握していただいたところで嘘が無いようにお願いします。まずは原告側、聖騎士フォーリング様。どうして追放を決めたのか説明をお願いします」

「はい」


 フォーリング様が証言台に立って話し始めます。


「私たちは国選パーティーと呼ばれるまでは、六人組のパーティーだった。最後の一人である補助魔導士のテルミーがいることで、王国から補助魔導士で二つ名を持たない者など足手纏いではないかと疑問が上がった。俺は彼女がいてくれたからこれまでの冒険を無事にやり遂げられたと思っている」


 ぐっと、服を掴んで悔しそうな顔を見せるフォーリング様は辛そうに息を吐きました。


「だが! 国選パーティーになる前の最後の冒険で、テルミーは死んだ。私は不幸な事故だと思っていた。だが、アーロンが教えてくれたんだ。あれは事故であって事故ではないと」

「ほう、それはどういうことでしょうか?」

「シビリアンの奴がテルミーを罠にハメて殺害したんだ!」


 罪状が増える中で、ふと疑問が浮かんできます。

 どうしてアーロン様は、それを知っていのか? そして、事故であって事故ではないとはどういうことでしょうか?


「私はそれを知らないまま、テルミー死に対して彼女が喜んでくれた国選パーティーとしての地位を受け入れることで手向けとしたつもりだった。だけど、数年が経ち、アーロンは一人で調査を続けてくれていた。その結果が最近になってハッキリした」


 つまりは、アーロン様も確信がなかったために、今まで調査を続けていたが、やっと確信を持てたので、告白したというわけですね。


「追放を訴えられた理由は理解できました。それでは変わって、アーロン様、事故ではなかった。シビリアン様が殺したという内容を教えていただけますか?」

「いいじゃろう」


 五人の冒険者では、一番の老人であり、雰囲気のある魔導士といった様子です。


「ワシは、テルミーを弟子として育てておった。後々にワシが引退した暁には、彼女に魔導士として、このパーティーを支えてもらおうと思っておった。大きな魔法は得意ではないが、補助魔法や気配りができる細かな魔法は目を見張るものがあった。だから、我は不審に思ったのじゃ。いくら罠にかかって分断されたとしても彼女は切り抜けられるだけの実力を持っておった」

「ちょっと宜しいですか?」

「なんじゃ?」

「まずは、事故状況の説明をしていただけませんか?」

「そうじゃな。あれは我々が六人でも国選パーティーになれると証明するための、A級ダンジョン挑戦中のことであった。元々罠が多いダンジョンであったために、罠を見つけることが得意なシビリアンとテルミーに任せて我々は慎重にダンジョンを攻略しておった」


 罠を見つけることができるのは、シビリアン様とテルミー様のお二人。

 しかし、罠にかかって死んだのはテルミー様です。

 

「しかし、A級とは高ランクダンジョンを意味するのじゃが、他のダンジョンよりも罠が多かったこともあり分断の罠にかかってしまったのじゃ。パーティーは分断され、それぞれが別の場所に飛ばされ集合した時には、テルミーは死んでおった」


 今のところ補助魔法が得意なテルミーさんが国がいうように足手纏いで、A級ダンジョンを生き抜けなかっただけに思えます。


「ワシは、休日を使って何度もそのダンジョンを訪れ、苦手な罠探知を使って必死に調べた。その結果、罠を発動させたのはシビリアンで、またどこに飛ばされるのかシビリアンは把握していたのではないかと、推測ができたのじゃ」

「それはどうして推測ができたのでしょうか?」

「集合場所として、最初に飛ばされた場所に戻った際に一番最初に戻ってきていたのが一点。もう一つは罠を見つけることができる者に我々は任せていたため、罠を発動できたのは、シビリアンか、テルミー本人のどちらかだと判断できるからじゃ」


 つまりは状況証拠と、推測に過ぎないということですね。

 しかも最初の通りに殺したという確信はないようです。


「それにのう、ガルディウスが言い争う声を聞いたと言っておったのがずっと気になっておった」


 最後に出てきたガルディウス様の名前に、我が身は深々と息を吐きました。


「それでは、その時の状況をお話しいただけますか? ガルディウス様」

「おう」


 筋骨隆々な高身長な男性は、腕を組んで証言台に立った。


「あの時、俺様は飛ばされて意味がわからなくて、気を探ることで味方の元へ戻ろうとした。だが、迷っている途中で男女の言い争うが聞こえたのだ。遠くの位置からだったので、誰と誰が話しているのかはわからない。だが、女性の悲鳴が聞こえて言い争いは幕を閉じた」

「つまり、あの場にいた男性の誰かと、女性二人のどちらかが言い争っていたということですね」

「ああ、そうだ」


 ここまで話を聞いても追放されるだけの理由なのかは判明できません。

 状況からシビリアン様であろうと判断したようです。


 彼らの言い分は確かにわからなくもないですが、証拠らしい証拠もなく、聞いた聞いていないなどの確信がない話ですね。


 

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