第4話 1話切り

「で、BLって何?」


「……衆道の事だよ」

 説明に予定変更はありません。これ以上余計な説明はできません。


「信長と蘭丸みたいな?」

「うん……」

「信玄と昌信みたいな?」

 それは誰かわかんない。

 まあいいや。

「そんなとこ」

 私は適当に頷きます。


 すると、あろうことか、彼女はその私の小説の、『1話から読む』をタップしたのです。

 しまった、衆道とか言って、逆に興味を持たせてしまったか。


「えっ。読むの、それ」

「え?だめ?」

「いや、……うん、ほら、歴史系じゃないよ、それ。面白くないよ。題名からして全然面白くなさそうじゃん」

 私は必死で自分の小説をディスります。


「面白くないかどうかは、読んでみなきゃわかんないよ」


 まあ、なんと書き手として聞けば嬉しい言葉でしょうか。でも今は普通に止めて欲しい。


 更にメイちゃんは主張します。

「本は題名だけで内容わかんないでしょ?とりあえず1ページは見てみないとね」


 メイちゃん、私はその小説の内容、1ページどそろか書いてないとこまで知ってるんですよ。


 そんな私の想いも知らずに、メイちゃんは読んでしまいます。



 身内に目の前で小説を読まれるという拷問。

 しかしそれはすぐに終わりを迎えます。


「あんまり好みじゃ無かった」


 メイちゃんの素直な一言。



 私は目の前で1話切りを食らいました。


 別にいいんです。これで良かったんです。

 なのに何でしょうこの胸の痛み。


 ところで、ここで急に姪っ子自慢します。

「面白くなかった」じゃなくて「好みじゃ無かった」っていう言葉を選ぶメイちゃん、超優しくないですか?


 ともかく、これで興味がなくなったでしょう。早くページを閉じて欲しい。



 しかしその後、メイちゃんは更に私を動じさせることを言うのです。



「ねえ、この『りりぃこ』って、書いてる人の名前だよね。りりちゃんと同じ名前だね」




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