試合 時の神クロノス

豪運山勝山 / レドたん

筆者の試運転


はじめに

こちらは読み切りかつ筆者のお試し投稿作品となっております。pixivおよびカクヨムそれぞれに掲載しております

生暖かい目で見ていただければと思います。それでは本編をお楽しみください


季節は夏。心地の良い波と風の音に耳をすませながら、黒髪の少女・不動輝光ふどうひかるは佇んでいた


「――うん。やっぱ浜辺は風がいい。そうは思いませんか?クロノス先輩」


問いかける先、“”として文字通り先輩にあたる存在。ギリシャにおける2柱の時間神が片割れ、クロノスが佇んでいた


日本にっぽんの精神性。ワビサビやフゼイというやつか。ふむ、存外に悪くはない。むしろ私は気に入っている。しかしだな」


笑みから一転、憤りとも困惑とも取れる読み取りづらい表情を向けるクロノス。視線の先。黒き少女は飄々ひょうひょうとした様子で言の葉を待つ


「試合の場としては似つかわしくないだろう。それとも、貴殿が持つ破壊者としての一面が、この穏やかな景色を壊せと。そうさせるのか?新時代の神よ」

「……先輩、もしかして巌流島の戦いとか知りません?日本って結構こういう穏やかなとこで決闘ぶちかましたりするんですよ。俺はそれにのっとって場を用意した、そんだけです」

「ふむ――なればそういうことにしておこう。時間だ。武器を構えよ、不動輝光。貴殿の技量、時の神たる私に見せてみよ」


クロノスは手にしていた懐中時計を巨大な秒針に変化させる。それは人間態とはいえ2メートルはあるクロノス、その身の丈に迫る長さであった


「その言葉。そっくりそのまま返しますよ、先輩……!」


藍色のコートをひるがえし、腰にさした長短二振りの刀を構える。先ほどまでの飄々とした雰囲気から一変、呼吸や足の運び方。動きの一つ一つから伝わる気迫。しかしその顔は笑みを浮かべていた


刹那


「――――っ」

「なるほど、鋭い一撃だ。しかし、踏み込みが甘い」

「だろうな。むしろ防いでくれて安心したさ。これで少しの間、“視れなくなった”んじゃない?」


時間にして0.2秒。凄まじいスピードで接近し、そのままの勢いから放たれた一閃を――クロノスは微動だにせず防いだ。しかしそれは彼の持つ時に干渉する能力を応用した限定的な“未来予知”。輝光はそれを使ってくることを見越して先手を打っていた


「ふむ――」

「んー、未来視は吐かせたのにことごとく防がれるな。もしかして最初の一合目いちごうめんタイミングで全体的に視た?」

「ほう、気づいたか」


彼の持つ未来予知は人間態で発動するとその後5分間のクールタイムを置かねば再発動できなくなる制約がある。だが――


「唯一その制約を無視できる方法。未来視を使った際に起こりうる可能性の高い未来を“可能な限り全て視る”。まーさかヒトの姿でもやってくるったぁねえ。人間がそれやったら脳みそが処理追いつかなくてその後の動きに支障でまくるとこだ」

「良い観察眼だ。しかし貴殿、そちらもをしてくるとは――私がどこまで視ることができるのかを探っているのだろう?」

「やっぱバレます?まぁでも。おかげでおおよそは掴めた。こっからは――ちっとばかしギア上げてきますよ……!」


瞬間移動が如く速さで距離をつめ、斬りかかる。その切っ先はクロノスが持つ武器の僅かなくぼみに向けられて


「ふむ、いいだろう。私も時の神が力。その1つを開錠させてもらおうぞ」

「――っ!お、も……っ!」


またたきの間。目の前にいたはずの相手クロノスは背後に。間一髪で直撃は避けたものの、尋常でない勢いの加速がつけられた一撃により輝光は海の方へと吹き飛ばされてしまった


「むっ、年甲斐もなく熱くなってしまったな。しかし彼女は無事――ぐおぉぉっ!!?」


腹部に重い衝撃が走る。気がつくと彼は空を見上げていた。視線を落とす、この場合その表現が正しいかはさておき、そこには試合相手がいた


「ぜー、はー……先輩、時間停止から超加速のコンボ攻撃とか実戦で確実に仕留めるときのやり方じゃないっすか。ギリギリ“衝撃軽減ペイン・クッション”間に合ったから良いものの、モロに食らってたら厳しいの使わないで。いてて……」

「それを言うのなら――」

「言うのなら、なんです?」

「いや、なんでもない。気にする事ではなかった。それよりもだ。私が倒れているこの状況からして、試合は貴殿に軍配が上がるのではないかね」


言わんとした事を察してか、しゃーないなーと言いながら彼女は勝利を受け入れた。そしてクロノスに手を差し出す


「握手。対戦ありがとうございました!って」

「そういう場合はオジギではないのか」

「俺はこっちのが好きなのっ」

「ふむ、そういうものか。ならば応じよう、これを断ってはブレイというもの」

「……クロノスさんって、結構お堅い〜って印象あったけど。実は物腰柔らかかったりする?」

「今気づいたのか」

「今です」

「そうか……私はもう少し表現を工夫することを考えるとしよう。不動輝光、本日は中々有意義な試合だった。ありがとう」

「こちらこそ」


2柱にはしらが握手をかわすとほぼ同時に日の出をむかえる


「良い景色だ。これを守る為に、我々神々がいるのだろうな」

「こういう場合に時間止めて眺めてたいとか思ったりしません?」

「………………ノーコメントだ」

「あっ、はい」


その日の夜のこと


「…………」

『ギリギリ衝撃軽減間に合ったから良いものの』

「あれは――」


とてもではないがその手の防御技すら間に合うようなタイミングではなかったはず。それが彼女は間に合ったという


「全く、あの少女カミは何者なのだろうな――」


続く……?


あい、という訳(どういうわけ?)でお試し作品でした。お楽しみいただけたでしょうか?

いや本当はもうちょい文量増やそうかなー?とか思ったんだけど試運転的な感じなので初動はこんなところかと


今後は不定期、マジでインスピがワキワキするタイミング読めないので閃いて書けたらアップロードしていく感じです。良ければ見てってくだはい


では、おつレド〜

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