第21話 ノエルと後日談
エリーを倒したノエルは竜の姿のまま、壁に貼り付けられたライに近づいた。ライはまだ白い竜の美しさと強さに見とれていた。
ノエルは竜爪を器用に使い、ライを拘束する糸を切断した。解放されたライは体に付いた糸を払った。そして白竜となったノエルの方を見た。
「た、助かった」
ライはノエルにお礼を言った。ノエルはお礼に対して首を縦に振って応えた。そしてノエルはライの前に伏せた。
「乗れってことか?」
ライはエリーとの戦いで傷つき、自分で移動することが難しそうだった。それを理解しているノエルは背中にライを乗せて行こうというのだ。
ライは恐る恐る白竜形態のノエルの背中に乗った。ノエルはライが背中に乗ると、糸で雁字搦めの扉を破壊して屋敷から外へと出た。
外に出ると太陽の陽射しが二人を照らした。ノエルの竜鱗に陽射しが当たると、キラキラと光を反射した。
そしてノエルは翼を広げると、ライを乗せて空へと飛び立った。ライを乗せたノエルは郊外から街へと向かった。
※
飛ぶこと数十分、ノエルとライは無事に街に辿り着いた。ノエルは街中に降り立った。街の人たちは突然現れた白竜に驚いていた。
そして街の人たちは現れた白竜の美しさに見とれていた。
「すごい綺麗……」
ある者は白竜をじっと見つめ、またある者はスマホで写真を撮っていた。
街に着いたためライはノエルから降りた。そしてノエルは能力を解除し、白竜の姿から人間の姿に戻った。
人間の姿に戻ったノエルに、街の人たちはまた見とれてしまった。白竜形態でも美しかったが、人間の姿でも別の美しさがあったからだ。
そしてノエルとライの周りには人だかりが出来た。するとその人だかりに一人の警官がやって来た。
「ダメだよ、こんなところで能力を使ったら!」
警官は往来の人の迷惑になるといけないと思い、ノエルに注意した。能力を持つ者は街中で使わないのが暗黙の了解になっているからでもある。
しかしノエルはそんな注意はどうでも良かった。むしろ警官がやって来てくれたことを嬉しがった。自分たちで警官を探す手間が省けたからだ。
「すいません! 助けてください! 僕たち誘拐されてたんです!」
「えぇ!? 本当!?」
ノエルは注意にやって来た警官に自分たちが誘拐されていたことを伝えた。それを聞いた警官は、あまりに突然のことに驚いた。そしてノエルの発言の真偽を疑った。
警官は、ノエルの真っ直ぐで純粋な瞳を見て、嘘を言っているわけではないと判断した。
「ま、待ってね。今応援を呼ぶから!」
警官は自分一人では荷が重いと感じ、無線を使って他の警官を呼び出した。そして警官は一旦ノエルとライを交番に連れて行って保護した。
保護したノエルとライの証言で、警官たちは急いで郊外にある屋敷に向かった。そこには気絶したエリーと黒服の女たち、そして交戦の跡があった。
警官たちはエリーたちを連行した。一方でノエルとライは怪我をしていたことから、病院に搬送された。そこで治療を受けた後、二人は事情聴取を受けた。
そこでノエルとライは、エリーが自分たちを誘拐したことなどを話した。事情聴取が終わると、ノエルとライは病室で二人きりになった。
「ライ君、今回は巻き込んじゃって、本当にごめんなさい!」
ノエルはライに、事件に巻き込んでしまったことを謝罪した。
「別にいいさ」
ライはぶっきらぼうにだが、ノエルの謝罪を受け入れて許した。ライは今回自分が利用されたことについて、自分にも落ち度があると思っていたのだ。
必要以上にノエルを敵視し、嫉妬したことが利用された原因だとわかっていたのだ。
ノエルはあっさりと許されたことに驚いた。もっと体育祭の時のように罵声が飛んでくると思っていたのだ。
「俺は寝る」
そう言うとライは病室のベッドに横になり、眠りに就いた。残されたノエルはライの態度の変わり具合にただただ困惑していた。
※
ノエルとライは数日後、怪我が治ったこともあり無事に退院することが出来た。そして二人は寮に帰った。
寮に戻ると、ノエルのクラスメイトやライの取り巻きが入り口で待っていた。
「ライさん! 大丈夫ですか!? 怪我はありませんか!?」
「あぁ、もう大丈夫だ」
ライの取り巻きは、ライがいつも通りの姿で戻ってきたことを泣いて喜んでいた。ライは数日間行方不明だったため、皆心配していたのだ。
一方でノエルも、ココロを筆頭にしてクラスメイトたちにかなり心配されていた。
「ノエル君、無事だったんだね! 良かった! 誘拐されかけたって聞いて、皆心配してたんだよ!」
「心配かけてごめんね。もう大丈夫だよ!」
ココロは喜びのあまりノエルに抱きついた。しかしすぐにクラスメイトに剥がされた。ノエルはその様子を見て、ようやく日常が戻ってきたと理解した。
※
その後の話だが、エリーと黒服の女たちは誘拐、監禁、傷害などの色々な容疑で捕まった。さらに余罪もたくさんもあったようで、当分は檻の中から出てこられないようだった。
そしてノエルとライは無事に夏休みを終えて、二学期を迎えることが出来た。これからもノエルにはその美貌から、様々な困難が待ち受けているだろう。
しかし今回の事件でさらに強くなったノエルは、それらをきっと乗り越えて行くだろう。
絶世の白竜 ノエル 詠人不知 @falilv4121
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます