第18話 ノエルと脱出寸前
八月三十日の十二時、ノエルは駅前に来ていた。帽子に眼鏡をして、いつもの変装をしていた。しかしその程度の変装ではノエルの尋常ではない美しさを隠し切れていなかった。
そのためノエルは駅前に来ている人たちから注目をされていた。いつもならそんなノエルを見た女性は、我先にとノエルをナンパするのだが、今回はそんな人はいなかった。
なぜならノエルの機嫌が目に見えて悪かったからだ。ノエルはイライラを隠さず、眉間に皺を寄せ、殺気立っていた。駅前にいた人たちはそんなノエルを遠巻きに見ていた。
そんなノエルに声を掛ける女性がいた。その人物は、この暑さの中黒いスーツを着た、エリーの使いの女性だった。
「ノエル様、お待たせしました。お迎えに上がりました」
黒服の女は丁寧な口調でノエルに話しかけた。ノエルはそんな黒服の女を射殺すような目で睨んだ。黒服の女はノエルのその殺気に少し怯んだ様子だった。
「そ、それでは車にお乗り下さい」
黒服の女はノエルに車に乗るように促した。ノエルは黙ってそれに従って、大人しく車に乗り込んだ。そしてノエル乗せた車は駅前からエリーの屋敷へと出発した。
※
ノエルを乗せた車が駅前を出発して一時間ほど経った。すると車は郊外にある大きな屋敷へと入って行った。そしてノエルは入り口の前で車から降ろされた。
ノエルが車から降りると、黒服の女たちが待っていた。そしてその中の一人が、ノエルを屋敷の中へ案内した。屋敷はかなり大きく広かった。
そしてノエルはある一室の前に案内された。
「エリー様がこの部屋でお待ちです」
黒服の女はそう言うと扉を開けて、ノエルを部屋の中に入れた。ノエルが部屋に入ると、そこにはエリーが笑顔を浮かべて待っていた。
「待ってたわよ、ノエル君! 今日は来てくれてありがとうね」
エリーはノエルを歓迎した。そして席に着くように手で促した。ノエルは高そうな椅子に座り、エリーと対面した。
「暑かったでしょ? 何か飲む? 今日からここで暮らすんだから遠慮しないでね」
「いらないです」
「あら、そう」
「それより、まずライ君の無事を確認させてください」
エリーの自分勝手な気遣いを断り、ノエルはライの無事を確認しようとした。
「いいわ、ライ君を解放してあげて」
「はい、わかりました」
エリーは周りにいる黒服の女の一人に指示を出した。それを聞いた黒服の女は無線で連絡をした。そしてエリーはタブレットを取り出し、ノエルに映像を見せた。
それはたった今、ライが檻から解放される様子だった。するとライは檻から出た途端に、『雷神 アルゲース』を発動し、周りにいる黒服の女たちを倒した。
その映像にノエルとエリーは驚いた。
「あら、まだまだ元気だったのね」
それを見たノエルはチャンスだと思い、自身も『白竜 ホワイトドラゴン』を発動した。そしてノエルは部屋を飛び出し、屋敷の中にいるであろうライを探しに行った。
「あらあら、ノエル君もやんちゃするわね」
「エリー様、どうなさいますか?」
「二人とも捕まえなさい。ただし、あまり傷つけないようにね」
「承知しました」
エリーから指示を受けた黒服の女たちはノエルを追って部屋から出て行った。
「ふふ、二人ともどこまでやってくれるかしらね」
エリーは不敵な笑みを浮かべていた。
※
部屋を飛び出したノエルは、戦闘音が聞こえる方に走っていった。その方向にライがいると思ったからだ。
しかしそう簡単にライとは合流出来そうにはなかった。ノエルの前には大勢の黒服の女たちが立ちはだかった。
「退け!」
ノエルは強い語気で黒服の女たちを威圧した。しかし女たちは退く気配はなかった。それを見たノエルは、戦いは避けられないと理解した。
黒服の女たちは、ノエルを捕まえようと飛びかかってきた。ノエルは飛び上がり、それを躱した。そして天井を蹴り、その勢いで黒服の女たちに殴りかかった。
手加減をしていないノエルの一撃を食らった黒服の女たちは、それだけで痛みから動けなくなっていた。
ノエルは迫り来るエリーの使いを次々にノックアウトしていった。すると廊下の先からノエルに向かって、レーザーが飛んできた。
「ぐっ!」
ノエルはレーザーに直撃した。ノエルがレーザーの飛んできた方向をみると、そこには二人の女が立っていた。その女の片方が手を前に出してた。
そしてその女の手からレーザーが発射されていた。ノエルは竜鱗でレーザーを弾きながら、レーザーを撃つ女に肉迫した。そして拳での一撃を与えようとした。
するともう一人の女がノエルとの間に割って入った。その女は盾を作り出し、ノエルの拳の一撃を防いだ。
ノエルの攻撃を防いだその隙にレーザーが発射され、ノエルは吹き飛ばされた。吹き飛ばされたノエルはもう一度、能力を使う女たちに肉迫した。
そして今度は拳ではなく、竜爪で斬撃を繰り出した。竜爪での斬撃は盾を切り裂いた。盾を突破したノエルは、二人の女を倒し、さらに屋敷の奥へと向かった。
そうして屋敷で暴れていると、ノエルは逃げようとしていたライを見つけた。
「ライ君! 出口はこっちだ! 一緒に逃げよう!」
「クソっ! お前のせいで散々な目にあったんだぞ!」
「そのことは後で謝るから! 早く逃げよう!」
ライは少し衰弱した様子だったが、何とか逃げられるだけの体力はありそうだった。
ライは不承不承だったが、今はここから逃げるためにノエルと協力することにした。ノエルとライは協力しながら、屋敷の女たちを倒していった。
そして二人はエントランスに辿り着いた。出口まであと少しというところで、目の前に屋敷の主人、エリーが立ち塞がった。
「あら、もう帰るの? もっとゆっくりしていって良いのに」
エリーは二対一という状況であるにも関わらず、軽口を叩いた。
「気をつけろ、あの女かなり強いぞ」
ライはノエルにエリーのことを忠告した。
「二人には少しお仕置きが必要なみたいね」
ノエルとライはエリーと対峙した。
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