第15話 ノエルと手合わせ
太陽がかんかんに照らす真夏の昼頃、清流が流れる川の側の空き地にノエルとユウキはいた。ノエルとユウキは体を伸ばしたり、屈伸したりして体を慣らしていた。
そして準備運動を終えた二人は向き合って構えた。
「それじゃあ、やるか!」
「はい!」
ユウキの言葉にノエルは『白竜 ホワイトドラゴン』を発動した。半竜半人の姿になり、ノエルは臨戦態勢を取った。
一方でユウキも能力を発動していた。銛のような槍を顕現させ、さらに周りに水を纏っていた。
ユウキの能力、それは『海神 ワタツミ』。水を操る槍を顕現させる能力だ。
ユウキも能力を発動し終わり、臨戦態勢を取った。睨み合う二人。先に攻撃を仕掛けたのはノエルだった。
ノエルは地面を強く蹴ると、そのままユウキに殴りかかった。ユウキは水の壁を作り出し、ノエルの攻撃を防いだ。ノエルの攻撃は水を吹き飛ばしたが、ユウキには届かなかった。
そして返しのカウンターでノエルは槍の柄で殴られて吹き飛ばされた。ノエルは翼をはためかせ、空中で体勢を立て直した。
「一筋縄じゃいかないか……。それなら!」
ノエルは対人戦ではほとんど使わない竜爪を使うことにした。
「打撃がだめなら、これはどうです!」
ノエルは再びユウキに近づき、竜爪を振るった。竜爪は水の壁を両断した。竜爪は鋭利で、切れ味が抜群だった。
そしてノエルは水の壁を突破し、ユウキに肉迫した。ノエルはユウキに拳を叩き込んだ。しかしそれは槍によって受けられた。
「まだまだ。甘いな!」
そう言うとユウキはノエルを蹴り飛ばした。そして距離を取ったユウキは本気を出した。ユウキは川の水を操ると、自身の周りに纏わせた。
ユウキは水に高圧を掛け、ノエルに向かって撃ち出した。ノエルは腕をクロスさせ、その攻撃を受けた。すると腕の竜鱗が剥げてしまった。
「相変わらず、すごい威力ですね……」
ユウキの攻撃は強靱なノエルの竜鱗を剥がすほど高威力だった。
「まだまだこんなもんじゃねぇぜ!」
そう言うとユウキは水の弾丸をノエルに向かって乱射した。ノエルは翼で上空に逃げた。そして三次元的な動きをすることで、照準を絞らせなかった。
「やるな! だがこれならどうだ!」
ユウキは大量の水を操り、それで水の龍を作り出した。
「追え! 水龍!」
水龍は飛び回るノエルを追いかけた。水龍は素早く、ノエルに追いついた。そしてノエルを飲み込んだ水龍は、そのまま球体の形になり、水の中にノエルを閉じ込めた。
ノエルは必死にもがいて水の球体から脱出しようとしたが、渦巻く水流のせいで水の中に囚われたままだった。
ユウキはそろそろノエルの呼吸が持たないと考え、水を操るのを止めた。すると水の球体はノエルごと地面に落下した。
「ごほっ、ごほっ!」
水の監獄から解放されたノエルは水を吐き出しながら、荒く呼吸した。
「やっぱ、全力だと戦いにならないな」
ノエルは全力のユウキに手も足も出なかった。しかしノエルはまだ戦う意思があった。
「もう一回、お願いします!」
「あぁ、いいぜ! ただ今度は手加減するけどな」
立ち上がり、呼吸も落ち着いたノエルは再戦を申し込んだ。ユウキはそれを承諾した。しかし今度は手加減して戦うらしい。
「水は使わないでやるよ。槍だけで戦うぜ」
「はい、お願いします!」
そう言うとノエルとユウキは構え合った。今度は先にユウキが攻撃をした。ユウキはノエルに近づき槍で突いた。
ノエルはそれを竜鱗で弾いた。そして得意の肉弾戦に持ち込んだ。懐まで入ってしまえば、リーチの長い槍は戦いにくくなるからだ。
ノエルはインファイトを仕掛けた。しかしそれはお見通しだったようで、ユウキは器用に槍を操り、ノエルのインファイトに対応した。
そしてインファイトの隙をつかれ、また距離を取られてしまった。ノエルは距離を詰めようとしたが、ユウキは槍の得意な間合いを保ち続けた。
結局水なしでも、ノエルはユウキに勝つことが出来なかった。
「くそー! 悔しい!」
戦いを終えたノエルは水を飲みながら、悔しさを吐露した。
「かなり強くなってはいたが、俺に勝つにはまだまだだったな」
ユウキはノエルの成長に驚いていた。
「それに、最近勝ちっぱなしだったからか、慢心してたな。攻撃が大振りで隙だらけだし、防御の意識も薄い。これじゃあ格上と戦ったときに負けるぞ」
「はい……」
ノエルはユウキからアドバイスを貰った。
「よし、それじゃあ帰って飯でも食うか」
そう言うとユウキは立ち上がった。ノエルもそれに付いて行った。
※
家に帰ってきたノエルとユウキは、ノエルの母親が作ったカレーライスを一緒に食べた。ノエルはカレーを食べながらユウキに、どこを改善すれば良いかなどを聞いた。
ユウキはノエルにしっかりと弱点と改善点を伝えた。そしてカレーライスを食べ終わった。食べ終わったユウキは用事があるからと、帰って行った。
ノエルは自室に戻り、ノートにユウキから言われたことをまとめた。そしてまとめ終えるとベッドに飛び込んだ。
ベッドに横になったノエルは疲れからそのまま眠った。
※
そして翌日になり、ノエルが学園に戻る日になった。ノエルは荷物をまとめ、それを車に積んだ。車に乗ったノエルたちはまず道の駅に向かった。
そこでお土産を買うためだ。ノエルは生徒会用と同室のヒロキの分のお土産を買った。そして買い物が終わったノエルは駅へと来ていた。
「また休みになったら帰ってくるから」
そう言うとノエルは両親とハグをして、お別れをした。そしてまた長いこと列車に揺られて、学園のある都会に戻ってきた。
そして寮まで歩いて戻った。寮に着くとノエルは自室へ向かった。ノックして入るとヒロキが迎えてくれた。
「おかえりー」
「ただいま! はいこれ、お土産!」
ノエルはヒロキにお菓子の詰め合わせを渡した。
「ありがとー。さっそく食べよう!」
ノエルはお菓子を一緒に食べながら、帰省先での思い出を語った。夏祭りに行ったことや、そこでヤンキーたちを撃退したことなどを話した。
「相変わらず大変そうだねー」
「でも、楽しかったよ!」
こうしてノエルの帰省は終わった。
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