第13話 ノエルと帰省
七月後半になり、夏休みに入った。蒸し暑い熱帯夜の中、ノエルは寮の自室でキャリーバッグに荷物を詰めていた。中々の大荷物なためノエルは衣服の取捨選択をした。
そんなテキパキと動くノエルをヒロキは眺めていた。
「帰省するのー?」
「うん! そうだよ!」
「随分と大荷物だねー」
「長めにいようと思ってるからね」
「そうなんだー」
荷物を詰め終わったノエルは、忘れ物がないか入念に確認した。服に洗面道具、充電器などの小物に夏休みの宿題、それらが全て入っていることをノエルは確認した。
「よし、忘れ物なし!」
ノエルは汗を拭い、荷詰めを終えた。そしてその日は早めに眠りに就いた。明日久々に地元に帰れることにワクワクしながら、ノエルは目を閉じた。
※
翌朝になり、ノエルはマスクに眼鏡、帽子を被って変装してから荷物を持って寮を出発した。
「いってらっしゃーい。気をつけてねー、お土産期待してるねー」
「うん! 行ってきます!」
ノエルはヒロキに見送られて寮を出た。ノエルはキャリーバッグを引きながら駅へと向かった。ノエルは道中、三人ほど女性に話しかけられてナンパされたが、何とか駅まで無事に着くことができた。
ノエルはそこから列車に乗って揺られること数時間、地元の駅に到着した。ノエルが改札を出ると、そこには両親が待っていた。
「お父さん、お母さん、久しぶりー!」
ノエルは両親に駆け寄って、ハグをした。そしてノエルは車に荷物を積むと、実家へと向かった。
車に乗って一時間と少し経ち、ようやく実家のある田舎に到着した。車を降りたノエルはマスクや眼鏡を外して変装を解いた。そして自然の新鮮な空気を吸い込んだ。田舎の空気は学園のある都会と違い、澄んでいる気がした。
ノエルは車から荷物を下ろすと、それを自分の部屋へと運んだ。久しぶりの自室は、出て行ったときと何も変わっていなかった。
ノエルはベッドに飛び込むと、移動の疲れを癒すためにごろごろとした。
ノエルが自室を満喫していると、インターホンが鳴った。
「ノエル、降りてきてー」
すると母親から一階に降りてくるように声を掛けられた。ノエルが一階に降りてリビングに行くと、そこにはノエルの異能の師匠であるユウキがいた。
「師匠! お久しぶりです!」
「おう、久しぶりだな、ノエル!」
ノエルはユウキとハグをして再会を喜んだ。そしてその後、リビングでノエルの学園での活躍などを聞いた。
「僕、師匠との修行のおかげで、学園では負け知らずなんだよ!」
「それは良かったぜ! でもそんなに戦う機会があるんだな」
ユウキはノエルが身を守れるくらいに強くしたが、学園でそこまで戦う機会があるとは思っていなかった。
「実は僕と戦って勝ったら付き合えるって噂が流れて、そのせいで毎日決闘をしてるんだ」
「おいおい、それは大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ、僕かなり強いから負ける気がしないんだ!」
「それなら良いけどよ、気をつけろよ。油断していると足下を掬われるぞ」
「気をつけます!」
ユウキはノエルの実力に疑問を持ってはいないが、世界は広く、強い相手がいくらでもいることを知っていた。そのためユウキはノエルに忠告した。
「それから僕ね、生徒会に入ったんだ!」
「へえー、生徒会か。大変じゃないか?」
「やることがたくさんあって忙しいけど、とっても楽しいよ!」
ノエルは生徒会での業務にやりがいを感じていた。そのため忙しくても楽しく過ごすことが出来ていた。
「生徒会の人は、どんな人たちがいるの?」
「写真があるよ!」
そう言うとノエルはスマホを取り出し、生徒会のメンバーと一緒に撮った写真を見せた。
「あらー、みんな美人さんね」
「そうでしょ! みんな強くて頼りがいのある先輩たちなんだ!」
ノエルは生徒会のメンバーを尊敬していた。そのため先輩たちが褒められるのが嬉しかった。
「それにね、僕、体育祭の決闘大会で優勝したんだ!」
「あぁ、もちろん知ってるぞ! ネットの中継で見たからな!」
ユウキもノエルの両親も、ネットの中継でノエルの活躍を見ていた。
「ハラハラする戦いばかりで、凄く心配だったんだぞ!」
ノエルの両親は中継を見ながら、ノエルを応援していた。そしてノエルが勝つ度に絶叫を上げて喜んでいた。特にノエルの母親は戦いのたびにボロボロになるノエルをとても心配していた。一方でユウキはノエルの成長を映像越しに見て、誇らしい気持ちになっていた。
そしてノエルは学園でのことをもっと話したかったが、一旦夕食の時間になったため、話を中断した。
「ユウキ君も食べていきなさい」
「ありがとうございます! ご馳走になります!」
ノエルの両親はユウキを食事に誘った。それをユウキは快諾した。
今日の夕飯はすき焼きだった。四人は鍋を囲みながら楽しく過ごした。
※
夕飯を食べ終わり、テレビを見ながら団らんしていると、インターホンが鳴った。
「僕が出るよ」
ノエルは立ち上がり玄関に向かった。そこには一人の少女が立っていた。少女は金髪のプリン頭で、タンクトップにショートパンツというラフな格好だった。
「あ、クレアちゃん! 久しぶり!」
「え、あ、ノエル!? 何でいるの!?」
クレアと呼ばれた少女はノエルの幼馴染みだった。クレアは予想外に現れたノエルに困惑していた。
「帰省してるんだー。クレアちゃんはどうしたの?」
「あ、その、野菜を届けに来た」
クレアは手に野菜が入った袋を持っていた。畑で取れた野菜をお裾分けに来たのだ。クレアは野菜の入った袋をノエルに渡した。
「ありがとう! 美味しそうだね!」
「ど、どういたしまして」
野菜を渡しながらクレアは、もっとオシャレしてくれば良かったと後悔していた。
「ノエル、どのくらいこっちにいるの?」
「四日間くらいはいる予定だよ。時間があったら一緒に遊ぼうよ!」
「あ、ああ。わかった。それじゃあ」
久しぶりのノエルの姿にクレアは興奮していた。そして話を終えたクレアは走って家に帰って行った。
「クレアちゃん、元気だなー」
そんなクレアの様子を見て、ノエルは呑気な感想を抱いていた。
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