第13話

「中層のボスはブラックウルフ。略してドデカオオカミ」


:全然略してなくて草

:それ言ってるのお前だけだぞ?

:流石に流行らん


「語呂が良いだろ語呂が!」


:言うほど良くない

:諦めろって


「ムキー!」

「本当にムキー!って言う人いるのね」


:バカみたいだろ?

:前回は30分も戦ってたけど今回は何分で倒せるかな?


「今回は10分切りだ!何回も戦ってるんだ、動きも大体覚えたしいけるだろ」

「これは調子に乗ってる?」


:乗ってるな

:乗ってる

:上に同じく


「いやいやいや、俺だってあんなデッカい狼相手に調子に乗ったりはしないって。あくまで努力目標だし」




ボス部屋を覗くと奥に大きな黒い狼が鎮座していた

「いつ見てもカッコいいよな。よし、行ってくる」

「骨は拾ってあげるわ」

「負ける前提なの辞めろや!」


:辛辣で草

:助ける気無くて草




俺は黒狼に走り寄る

ブラックウルフはスピード、パワー共に俺よりも上だ

しかし、小回りという点では俺に分があり、攻撃を避けてカウンターを叩き込むというのがいつもの戦法だ

大振りの攻撃を屈む事で回避し、立ち上がりながら剣で後ろ足を切り裂く

「足元がお留守だぜ!」


黒狼の機動力を削ぐ事が出来たが、そこで油断してはいけない

素早く動けないだけで強力な顎や爪は健在だ


咬みつこうと前に出た黒狼の鼻面を殴りつけ距離をとる

この行動をした時のヤツの動きはもう覚えている

黒狼が大きく息を吸い込む動作を見て、俺は耳を塞ぐ

その瞬間大きな叫び声が部屋の中に響き渡った

黒狼の遠距離攻撃『ハウリング』だ

三半規管が麻痺し、数秒の間動けなくなる

初めて喰らった時は本当に危なかったぜ


耳を塞ぎながら一歩を踏み出し、大きく開かれた口に剣を突き刺した


しかし、残念ながら致命傷にはほど遠く、口の中を傷つけたにすぎないが、黒狼はこれでハウリングをしにくくなった


遠距離攻撃が無くなればこっちのものだ

「俺だって魔法を使えるんだぜ。サンダー!」

雷が黒狼に襲い掛かり噴き出した血を伝って身体の内部まで焼け焦がした


全身が煙を立ち昇らせた黒狼は最後の力を振り絞り襲い掛かろうとするが、首に刃を刺され力尽きた


「タイムは!」

「15分42秒」

「クッソ!さすがに無理だったか!」


:前回の半分のタイムだ!

:すげぇ!

:こういうの見ると本物の探索者なんだって思うよね


「ジュリエル。どうやったらもっと早く倒せると思う?」

「動きは問題無いわ。後は攻撃力を上げるくらいしか無いと思うわ」

「結局魔力か」


:普通パーティーで倒すブラックウルフを1人で倒せる時点で上澄みだよな

:たしかに

:コウタはなんでソロでやってんの?


「配信者になる前はパーティーにいたんだけど、色々あって人間関係ってめんどくさいなって思って、それからパーティー組むのは辞めたんだ」


:あるあるだな

:でも軽視してると命に関わるからな

:コミュ障だからとかじゃないんだ

:人間関係が上手くいってない時点でコミュ障の気があるけどな


「トラブルがあったのは俺じゃない。パーティーは男2人女2人だったんだが、もう1人のやつが二股やってたんだよ。それのせいで刃傷沙汰にまでなって…」

「うわぁ」


:考えうる中で一番めんどくさいやつ

:可哀想に

:俺よく分からねえんだけどよぉ

つまりコウタが悪いって事でok?


「ダメに決まってんだろ。分からねえなら黙ってろ」


:酷い( ; ; )

:辛辣すぎるw


「そんな風に厳しく言ってはダメよ」


:ジュリちゃん優しい

:ママ?

:これが天使…


「分からないなら身体に覚えさせてあげないと」


:おっと?

:流れ変わったな

:身体に厳しく?それはそれで…

:無敵ニキおるて

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