第10話
その部屋には三人の男が座っていた
「藤堂君、特級モンスターをそのままにしておくなんて一体どういうつもりだ?」
藤堂の正面に座っている男が責めるように尋ねる
「大臣、彼女が我々に中立的である以上、刺激する訳にはいかないと判断しました」
「特級モンスターは大量殺人を引き起こす可能性のあるモンスターだ。何かあってからでは遅いのだぞ?」
「もし彼女が演技をしているのであれば、地上に上がる、もしくは留置所で攻撃性を露わにしていたでしょう」
「人を騙すようなモンスターだった場合はどうするのだね?」
「その可能性は限りなく低いと思われます。彼女は政府関係者との関わりを拒否していました。もし、人を誑かすようなモンスターなら渡りに船と政府関係者との関わりを持っていたでしょう」
少し離れた場所で聞き役に徹していた男が口を開いた
「君は彼女を…特級モンスターを御せるとそう思っているのか?」
「いえ、そうは思っていません。彼女が我々に牙を剥く可能性は低い。ならば、下手に刺激して被害を被る必要は無いと思った次第です」
「お前の見立てが間違っていたらどうするんだ!」
「待て。そこまで言うなら、彼女とのやり取りは君に任せよう。もし失敗すれば、分かっているね」
「承知しております。総理」
総理と呼ばれた男はその言葉を聞き、部屋から去っていった
「はあ、監視はどうなっている」
「彼女に渡した端末に盗聴と発信機の機能を付けています。それで二十四時間体制で監視しています」
「分かった。まさか特級モンスターなんて出てくるとはなぁ。討伐は不可能なのか?」
「分かりません。カメラでは捉えきれないほどのスピードと魔法を自由自在に扱う所から警察程度では不可能だと思われます。しかし、自衛隊や探索者も動員すれば可能性はあると思います」
「そうか。仮に討伐するとしても能力の全貌が見えてからという事になるな」
「はい。万が一にも取り逃がせば、この国は滅亡します」
「やはり、当面はお前の言う通りにしなければならないようだな。…話は終わりだ。行っていいぞ」
「失礼します」
部屋から退出した藤堂は最大限の便宜を図りながら露骨では無い範囲で書類をまとめ、ジュリエル達に送った
それから数日後、再びジュリエルは配信カメラの前に立つ事になったのだった
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