第9話
「どうもジュリエルさん。検査結果が出ましたよ」
「そう」
「興味無さそうですね」
「私が人間かモンスターかなんて些細な事よ」
「達観してますね。古代人は皆そうだったんですか?」
「知らないわ。でも、私はこうならないと生きていけなかったの」
「そうでしたか。話を戻しますとね、あなたは我々とは異なるDNAを保持していました。つまり、あなたは人間ではない」
「そう。"魔女"によって文明が滅んでいる以上そうじゃないかと思っていたわ。」
「どうします?我々があなたは人間だと言い張れば人間として生きていけますけど」
「さっきも言ったでしょう?些細な事だと」
「では、あなたの身分を保証する人が必要になります。誰か心あたりは?」
「あるわけ無いでしょう」
「ですよね」
「誰でもいいけど、この国の政府に飼われる気は無いわ。政府と繋がりが無い人にしてちょうだい」
「困ったな。私が紹介できるのはみんな繋がりがある人ばかりですよ」
「それは困ったわね」
「私には彼しか思い付きません。三木 光太、あなたの封印を解いた男です」
「いいわよ。どうせ恩を返そうと思っていた所だし」
「いいんですか?」
「私は自分にされた事は必ず覚えるのよ。敵には報復を、味方には恩を返すの」
「なるほど、それじゃあ今から光太君の所に行きましょうか」
「その前にずっと気になっていた事があるの。どうしてあなた達は"魔女"の顔が分かったの?」
「簡単ですよ。古代文明の遺物をコピーして使っているからですよ。その中に魔女の顔写真とコードネームが記録されていました」
「そう…古代文明はどれくらい前なの?」
「古代文明は十万年前に滅んだとされています」
「そうだったの」
「質問は終わりですか?」
「ええ、それじゃあ行きましょうか」
〜留置所〜
「俺、いつになったら帰れるんだろう。弁護士呼べって言ってるのに一向に呼ばれないんだが?」
俺は布団の上で蹲りながら愚痴を吐いていた
「あら、元気そうね。檻の中の生活はどう?」
なぜかジュリエルが檻の前にいた
俺は精一杯の皮肉を込めて答えた
「ああ、最高だよ。もう少し飯が美味ければもっといい」
「ご飯が美味しくないのは再犯を防ぐためと聞いた事がありますね」
「あんたは藤堂だったか?いつになったら出られるんだ!」
「まあまあ落ち着いて、あなたに朗報を持ってきたんですよ」
「朗報だと?」
「あなた、テイマーになる気はありませんか?」
「あんた何言ってるんだ?」
「もし今テイマーになるなら、なんと!こちらの美少女があなたの仲間になります!」
「どうでもいいんだけどさ。胡散臭いってよく言われるだろ」
「うぐっ!気にしてるのに…」
「ちょっと、彼は仕事でやってるんだからイジメたらダメじゃない」
「え、その、ごめん…」
「そのいたたまれない顔が一番傷つくんですよ!…まあいいです。お二人で話し合ってください」
「わ、分かった」
一体どういう訳なのかジュリエルから説明を受けた俺は大体の事を理解した
「モンスターだからマスターが必要で、政府との繋がりが無いって事で俺に白羽の矢が立った…」
「そう。それに私はあなたに恩を返すつもりだったからちょうどいいと思って」
「恩を返すって、俺をダンジョンから出す事じゃないのか?」
「あの程度じゃ足りないわ。あなたがやった事はあんな事では返し切れない事なのよ。」
「あ、あんな事って…俺は命を救われたんだ。十分だろ」
「ねえ、封印されていても意識は残っているのよ。それが十万年も続いていたの。それがどれほどの苦しみか分かる?死よりも苦しい永遠の停滞。あなたはそれを終わらせたの。命の一つや二つ救った程度では私の気は収まらないわ」
「お、おう。顔が近い…」
ジュリエルは俺のやった事がどれほどの事か熱弁していた。
熱弁しすぎて徐々に近づいてくるのはやめてほしい
「私があなたの願いを叶えてあげる。どんな事でもいいのよ」
「どんな願いも?」
「ええ」
「じゃあ…俺と配信をやってくれないか!」
「は、配信?」
「ダメ…か?」
「ちょっと予想外で驚いただけよ。」
「話は纏まりましたか?」
「ええ」
「なら、今日の所はお帰りいただいて結構です。色々書類の準備をしないといけませんから、その準備が出来次第書類を郵送します。それまでは動画に出演しないでくださいね。ジュリエルさんの立場は危うい物なのですから」
「分かった」
俺たちは釈放され、ようやく長い1日が終わった
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