第177話 遂に護衛と馬車ゲット……?

 ラトリースへの三人旅は続く。

 途中で冒険者ギルドで勇者聖女協会からの知らせを確認しながら進む事あれから数日……。


「護衛を雇えた……ですか?」

「ええ、私達を侯爵家の人間であると認め、ラトリースまでの護衛を買って出た見る目の有る傭兵団ですね」


 ティアナ嬢がフンスと息を吐いて、まだ未発達な胸を張って紹介されたのは、傭兵と言うイメージとは少し違って小奇麗なイケオジの男性。


「初めまして。スタリーと申します」

「は、初めまして。ルーノと申します。Cランク冒険者です」

「何と美しいお嬢さんだ。それでいて今までお二人を護衛して来た実力者とは。いや、素晴らしい」

「スタリーは共和派貴族のネルクス子爵領で活動している傭兵団の団長との事です。以前、お嬢様がネルクス領を訪れた時にお嬢様を見た事が有ったそうです」

「お美しいマリアンローズ嬢のご尊顔を忘れる訳が有りません。すぐに分かりましたよ」

「馬車も用意してくれたし、助かるわ」

「栄光あるラックス侯爵家のご令嬢であらせられるお嬢様のカリスマのなせる事ですね」

「事情はある程度聞いております。ラトリースまでの護衛はお任せください」


 お~、なるほど。

 マリアンローズ嬢の顔を覚えていた傭兵団が丁度良く居たんだね。


「具体的な日程や行程は私共にお任せください」

「ルーノさんには今まで不慣れな事をさせてしまいましたが、今後は私達と一緒に馬車に乗って護衛してください。元の側仕えですね」


 それは助かる。

 私も肩の荷が下りた気分だよ。


 そしてようやく馬車の旅となって町を出発。

 馬車は一般的な馬車で豪華ではないものの、マリアンローズ嬢もティアナ嬢も歩きの旅から解放されてご機嫌である。


 そして町を出発した、その日の日暮れ頃……。

 

「お、お頭ぁ! アジトが燃えてますぜ!」

「なにぃぃ!? 遂に領兵に見つかっちまったか!? あ、いや、お頭とかアジトとか言うんじゃねぇ」

「侯爵令嬢誘拐の仕事は罠だったんじゃ!?」

「でも、馬車の中の三人娘は本物の貴族娘ぽいぞ?」

「わざと俺達に誘拐させて自分で救出して侯爵家に認められる――なんて計画なんじゃねぇすか?」

「なんだとぅ!? おのれぇぇ、あの小僧め! 泣く子も黙る我等スタルク山賊団を謀りやがったか!?」

「だとしてもおかしくないですかい? なんで俺達がアジトに着く前に襲撃されてるんだ?」

「む? 確かに。と、とにかくウラジとアマウラはアジ……砦の様子を見て来い!」


 何かのトラブルで大慌てなのか、大声で正体をバラしまくっているスタリー一党。


「どうやら傭兵団を装った山賊団だったみたいですね。夕方には町に着くはずなのに山の中ですし」

「認めたくない」


 顔を手で覆ってイヤイヤしてるティアナ嬢。

 現場レベルの事はしないけど、人との駆け引きは大丈夫かと思ってたんだけどね。この程度の偽装が見破れなかったのが認め難いらしい。

 ようやく貴族と認められたのが、よほど嬉しかったのか目が曇ってしまったのかな? 貴族扱いされない事に相当フラストレーション溜まってたみたいだったしなぁ。

 まあ、なんだかんだ言って、まだ二十歳にもならない少女だしね。

 私も見抜けてなかったので、文句は言えない。


「ただ、山賊達の方もトラブルみたいですね」

「令嬢誘拐の仕事って聞こえたわね。依頼したのは誰かしら……」

「単に金に目が眩んだ馬鹿の仕業も有り得るので、王室派の陰謀とも言い切れないですね」

「とりあえず外の連中に聞いてみますか」


 と言う訳で、私が馬車の外に出て山賊達を打ちのめして拘束。

 そして尋問タイムである。


「ネルクス子爵は関係ありません。共和派貴族でここから一番近いから名前を勝手に借りただけです。依頼主はここの領主のヴァロワ男爵の次男です」

「目的は?」

「そ、そこまでは聞かされていません。侯爵令嬢の身柄の確保とSSランクの魔石を奪えとだけ」


 傭兵団を装った山賊団の頭目スタリーを尋問した結果、こんな答えが返って来る。


「真に受けるのもどうかとは思うけど、取り敢えずコイツの言っている事が本当だと仮定して……SSランクの魔石の事をなんでヴァロワ男爵の子弟程度が知っているのかしら。私達が出した手紙を盗み見たのかしらね?」

「ヴァロワ男爵……中立派の伯爵の寄子貴族ですが、流石に子弟の事までは把握しておりません」

「男爵の次男だと状況次第では平民落ち。私と魔石を手土産に王室派での栄達でも狙ったのかしらね?」

「何処にでも度し難い馬鹿と言うのは居ますからね」


 この国は割とまともな貴族が多いと思っていたけど、そういう貴族も居る訳ね。

 そういう馬鹿って絶対に0にはならないもんなんだよね。

 それはそれとして……。


「現在、絶賛炎上中の山賊のアジトはどうします?」

「う~ん。アジトを襲撃しているのはヴァロワ男爵の領兵かもしれませんね。頭目は私達が捕らえている訳ですし、接触してみても良いかもしれませんね」

「そうね。ルーノ、アジトを襲撃している人達と接触してみて。敵対しないようにね。ルーノならいきなり攻撃されても大抵何とかなるでしょ?」

「分かりました」


 マリアンローズ嬢の指示で、燃え上がる山賊のアジトへ向かう。

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