第152話 ヴェダダンジョンクリアの前に
転移魔法陣によって、ヴェダダンジョン四十一階層に降り立つ。
ここからはBランク帯で、最下層の五十階層のボス部屋の火竜ドレイクこと、グレーターファイアドラゴンを倒せば、このダンジョンはクリアとなる。
ここからはソロだけど地図は持っているし、今まで通り一日二階層ペースでいけるだろう。
地図を片手に奥へと進む。
「……何故、行き止まり?」
迷った。
おかしいな……何処かで方向を間違えたか?
石造り風ダンジョンは同じ様な風景が続くので、方向や現在位置を間違えやすいんだよね。洞窟型のダンジョンはまだ床や壁の起伏やら、道の曲がり具合とか少し変化が見られたんだけどね。
一度も間違えなかった凪原旅団のリヴァルは、やっぱ優秀な斥候だったんだな。
期限付きの依頼を受けてる訳でも無いし、じっくりいきますか。
三剣岳のダンジョンと同様に壁を片手に走るには、私以外の冒険者がチラホラ居るんだよね。
「ていていてい」
「「「GYAAASS!」」」
魔物を倒しながら進む。
勿論、ゴーガッツからの要望のサラマンダーの角も回収していく。
私にはサラマンダーの炎は効かないし、魔力を流せば本来火に弱いモノクロスパイダーの糸で作られた魔装服だって平気だ。所詮はBランクさ。
……というか今の私に効く攻撃って、そうそう存在しないと思う。
地図を見てルートを選んでる最中に方向が分からなくなるパターンが多かったので、自分が来た道に「使用中」のプレートを置くようにしたら、まあまあ順調に進むようになった。
それでも、一日一階層という凪原旅団の案内があった頃に比べて半分のペースだけど……。地図見ながら歩くより、走り回った方が早い件。
まあ、ドロップ集めもあるしね。
Bランク帯の素材は、ほぼ全て需要が有るのだ。
◇
「ここまで来ると人がほぼ居ないな」
なんだかんだと現在、最下層一つ前の四十九階層を進んでいる。
階層を進む程に他の冒険者が減っていき、一つ前の四十八階層から他の冒険者の気配が全く無くなった。
今までは転移陣から離れてる五階層や六階層といった中間が人が少ない傾向にあったけど、最下層には転移陣が無いのと、流石にBランク帯とあって、一般冒険者には長期滞在は厳しいのだろう。
転移陣を設置出来る技師を護衛しながら安全に連れて来れて、なおかつ構築用の建材等を安定して運べるのはCランク帯までで限界だったらしい。
魔物を倒しながら進む。
いよいよ地下五十階の階段が近づいてきた。地下五十階ではすぐにボス部屋が有る。
……いや、いよいよなんて言う様な道中では無かった。少なくとも戦闘面では。
三剣岳のダンジョンでは、Aランクの魔物がスタンピード直前状態でうじゃうじゃいる中を、何日も戦い続けてきた私だ。
その後でローブ骸骨を倒して、更に大幅にレベルアップしている。
Bランクの魔物がポツポツ出て来る程度の今の道程なんて楽勝過ぎる。油断は禁物――なんて次元ですら無い。
この転生した体の凄まじさよ。
……さて。
そんな凄まじい私のチート身体能力の一つがPER――感知、感覚、認識力という意味だったかな?
これによって私の五感と魔力感知は凄まじい事になってる。
更に凄いのが感覚が鋭すぎる事による弊害が無い。
嗅覚が鋭いのに悪臭によって鼻が麻痺してしまうなんて事も無い。
この辺の感覚は説明するのは難しいのだけど、PERが高いと感覚が鋭くなると同時に、その感覚を阻害する事象に対する耐性も同時に上がるという感じだろうか。
もっともこの鋭い感知、感覚、認識力も私が意識してればの話。
異世界転生系小説でよくある危険感知スキルの様な、自動おしらせ機能がある訳では無いのだ。
なので人気のない場所であれば、潜んでいるのが凄腕暗殺者であっても、僅かな呼吸や衣擦れの気配でその存在に気が付く事が出来る。人気が無い場所なら僅かな人の気配であっても違和感によって気が付けるのだ。
逆に人混みに紛れたド素人の尾行に私は気付けなかったりする。人混みに紛れて違和感を感じないからだ。『木を隠すなら森の中』的なのに私は弱い。
……とまあ……。
何故唐突に、こんな話をするのかというと……ね。
私の進む先に、誰か潜んでいる事に気が付いたから。
人気の無いダンジョン深くで人の気配を察知したのだ。
地下五十階の階段までは、もうすぐそこまで来ている。
その最後の曲がり角に四人、息を潜めて待ち伏せしてる。
そして潜んでる四人には覚えがある。
というか潜んでる四人は私には聞こえてないと思ってるんだろうけど、私には近づく前の彼等の打ち合わせの会話が聞こえていたしね。こんな人の居ないはずの場所で人の声がすれば、私の高いPERであればかなり遠くでも気が付くのだ。
曲がり角の少し手前で立ち止まり、その四人に声を掛ける。
「ドレイクバスターズの皆さん。お久しぶりです」
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