第126話 ドレイクバスターズ

「もう十分に追い詰めただろ? その辺にしてやれよ」

 

 その声の主の方を向く。

 その先には素人目にも高価な装備に身を包んだ四人組。

 ダンジョン都市だけあって、基本的にヴェダの冒険者達は装備レベルが高いが、その四人はその中でも一際強力そうな装備をしている。

 その中の高価そうな青白い鎧を着た男が、声の主の様だ。

 豪華な装備の中、その男が背に背負った黒い大剣が一見地味に見えるが、剣から魔力が漂って見える……魔剣か?


 ん? この魔剣、どっかで見たような……。

 ……こいつ等、確か……。


「……確か……半月程前に、ギルドの入り口前で声を掛けられた事があったか?」

「おう、その通り。つか俺達を知らない? この街で俺達の事を知らない奴は、居ないと自負してたんだがな」


 思い出した。

 この街の冒険者ギルドに初めて入ろうとした時に、入り口前で声を掛けてきた高ランクと思われる冒険者パーティーだ。


「スリストさんだ」

「あの仮面小僧、ドレイクバスターズに声掛けられてたのか!?」

「マジかよ!」

「つかあの仮面小僧、ドレイクバスターズを知らないのかよ」

「ス、スリストさん……た、助けて」


 周りの声を聞くと、本当にこの街では名が知れ渡ってるみたいだ。


「……あの時はこの街に来たばかりだったし、それ以降もこの街では誰とも、まともな話が出来てなくてね。悪いが知らない」

「はっはっはっ。そうかい。なら仕方ねぇ。自己紹介といこうか。俺は剣士のスリスト。火竜ドレイクを倒してヴェダダンジョンを制覇した、Aランク冒険者パーティー『ドレイクバスターズ』のリーダーだ」

「盾士のダムザードだ」

「魔術師のロンディア」

「斥候のネクトだ」

「この街の冒険者のトップだ。よろしく。仮面の強者さんよ」


 Aランク冒険者パーティーか。

 まあ、それで? という感じだが。


「そうかい。まあ、俺は冒険者ギルドを追放された身でね。もう冒険者では無い。あんた等は今回の件に絡んでないし、揉め事は他所でやるんで関わるんじゃねえよ。さっき言った通り、俺を止めようとするのなら、ぶん殴る」

「そうカリカリすんなよ。十分に強さを見せつけ、舐めた真似すりゃどうなるかを分からせた。もう誰もお前に舐めた真似出来ねぇよ。これ以上は過剰ってもんだぜ」

「俺が周りに助けを求めてる時に見殺しにしておいて、今更偉そうに口出すんじゃねぇ」

「おいおい。見殺しにしてた訳じゃないぜ。そりゃまあ、弱い奴なんて知った事じゃねぇけどよ。だが俺達は初めてお前と会ったあの時から、お前があの程度の事なら、跳ね除けられる実力者だと分かっていたんだ。その辺の見る目の無い奴等と一緒にすんなよ」

「……何?」

 

 私が実力者だと、前々から分かっていた?

 あの達人のサキュバスや、その上位者と思われるローブ骸骨、元Sランク冒険者の勇者シルヴィナスのパーティーですら、初見では私の実力を見抜けてなかったのに?

 まさか、鑑定の類のスキル持ちか?

 いや、結果論で言ってるだけかもしれない。


「結果論で言ってるだけじゃないのか?」

「おいこら。俺達を舐めんじゃねえぞ。ギルド前で出会った時、お前は俺のミスリル合金の鎧や、ダムザードのアダマンタイト合金の鎧や盾、ロンディアの金獅子のローブといった、誰もが目を向けてしまうはずの派手な装備では無く、俺のこの一見地味な剣を……いや、この魔剣から漂う魔力を見ていた。俺くらいになると仮面越しでも、相手が何処に意識を向けてるか分かるんだよ。……お前……『魔力視』のスキル持ちだろ?」

「……まりょくし?」

「おっと、隠してたかな? すまんすまん。マナー違反だったな。だけどもう実力を隠す気は無いんだろ? どうやってお前の実力を見切ったか教えてやったんだし、大目に見てくれや」


 飄々と、そして風格を感じさせながらスリストは言う。


「魔力視だって!? あのレアスキルの!?」

「あの仮面が魔道具なんじゃないのか?」

「だとしても、そんな凄い魔道具を持ってる程の実力者って事だろ? 実際に出鱈目な強さだし」

「前々から、あの仮面小僧の強さを見抜いてたのか……流石ドレイクバスターズだ」


 魔力視……おそらく、魔力が見えるスキルか? そんなの持って無いぞ。というか、スキルは宝珠で得たスキル以外に無い。

 私が魔力が見えるのは、感知感覚に影響するPERが高いからだ。当初は悪魔の種族特性の可能性も考えてたけど、レベルの上昇に伴ってより鮮明に魔力が見える様になってる事から、PERによるもので間違いないと思う。


 しかし、どうしよう?

 本当の意味で正確に私の実力を見抜いてる訳では無い様だが……それでも結果論で言ってる訳ではなく、以前から私が実力者だと判断していたのは本当の様だ。凄い観察眼だし、只者では無いな。

 言われてみれば最初に会った時、こいつ等からは私を探る様な印象は有ったが、私を侮ったり、馬鹿にする様な雰囲気は感じなかった。


 ……そういう事なら……考えを改める気は無いが、態度は改めるとするか。


「……そうでしたか。それは失礼しました。私はルーノです。元Gランク冒険者でしたが現在は追放され、何処の市民権も持たない、何の保証も持たない流れ者です」

「はっはっはっ。世の中、力があればそれが何よりの保証だ。そうだろう? ルーノ」


 それには同感だ。

 しかし……想定外に厄介なのが出て来たな。

 想定では出て来るとしたら、ギルドマスターなんかのギルド幹部が出て来るはずだったんだけど。



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ドレイクバスターズは114話で、主人公に声を掛けてきた四人組です。

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