第123話 やる以上やられる覚悟が無い
「――っごおおおおああああああ!」
グラッツは受付の机に叩きつけられ、のた打ち回る。
「グ、グラッツ!」
「て、手前ぇ――ぐぼおおおおおああああ!」
「――ぬあっ! うぐおおおおおおおああ!」
グラッツのパーティーメンバも殴る。
「「「「ぐぉああああああ!」」」」
のた打ち回っているグラッツメンバーを放置して、野次馬の方へ。
野次馬達はあまりの展開の変わり様に、目を白黒させている。
「お前も俺を蹴ってくれたよな?」
ゲタゲタ笑いながら私を蹴ってくれた冒険者に、スタスタと近寄る。
「……あ、ああっ!? や、やるのかごらぁ――ごはっ! うあがあああ!」
打撲拷問で蹴る。
「次はお前等か」
「こ、このっ――あぎゃあああああああ!」
「ま、待て――ぎゃああああああああ!」
私を蹴った他の野次馬冒険者達も蹴る。
「や、やってやるよ! 囲め!」
「「「おう!」」」
「この人数に勝てるとでも――うごぉほっ!」
「あああああああああ!」
「う、嘘だろ!? つ、強っ――ごぉほっぃおお!」
立ち向かってくるとは、やるじゃないか。
まあ、許す理由にはならないがな。
「逃げるんじゃねぇ」
「――ひっ! ぎゃああああああ!」
コソコソ逃げ出す奴も逃がしはしない。
「ぐはっ……あぐあああ……あああああぁ……」
「グ、グラッツさん! し、しっかりしてください!」
グラッツとエミリアの所に戻る。
「軽く殴っただけだろうが。何時まで蹲ってやがる?」
「ひぃっ!」
「うご……お、おお……て、てめえ……こ――ごぼぉおっ!」
グラッツを再び殴る。
「お前、俺を何発殴ったっけ? まあ、とりあえず十発位やり返しとくか」
「ぐはあああ! うごぉぼおおおおお! ぐぉおおおおおあああああ!」
グラッツを殴る。蹴る。
ある意味、初めて打撲拷問スキルを、本来の意味で使ってるかもしれないな。
「ちょっ! あ、あなた達! しっかりしてよ! あんな奴、やっつけてよ!」
エミリアがグラッツのパーティーメンバーを焚きつける。
「ごほっごほっ……ぐ……こんぉ野郎ぉおおおお!」
「はぁっ――マジで殺すぞ!」
「グラッツを離せやぁあ!」
おおっと? こいつ等、武器を抜きやがったぞ?
ハハハ。
良いね良いね。
もっともっと状況をエスカレートさせようじゃないか。
お前等が引くに引けなくなる様になぁ。
この場で殴られたのを、やり返す程度で済ます気は無いんだよ!
「おらぁっ!」
「だりゃぁ!」
グラッツのパーティーメンバーは三人。
一人は正面からの袈裟斬り。
もう一人は左から姿勢を低くしてからの、足元を狙った水平斬り。
残りの一人は右に回り込んで隙をうかがっている。二人の攻撃を受けたり避けたりした後の行動に応じて対応するのだろう。
中々良い連携だ。
だけど遅い。
私の高いPERによる動体視力によってスローモーション……いや、その気になれば止まって見える。
ここまで差があれば、技量云々は関係ない。
それぞれの背後に回り込んで、背中から打撲拷問で殴る。
「「「ぐぉああああああ!」」」
三人が背中の痛みに、のた打ち回る。
「……は? 一瞬で三人とも?」
「そ、それよりあいつ等、なんで背中を痛がってるんだ?」
「背後から殴ったって事……なのか? ぜ、全然、見えなかった」
外野が騒めく中、グラッツ含め四人を殴り続ける。
「「「「ぐぉああああああ!」」」」
「全く……剣で斬りつけてきやがって。本気で俺を殺すつもりだった……って事だよな?」
床に転がった剣の一本を拾う。
「俺を殺そうとする以上、俺に殺される覚悟は当然出来てるんだよなぁ?」
斬りつけてきた奴の首筋に剣を当てがう。
「……あ、あぐ……や、やめ、やめやめやめ」
あらあらまあ……怯えちゃってまあ。
こんな事を言う私も意地が悪いな。こいつ等に殺される覚悟なんて無いのは分かっている。
弱い者苛めする様な奴は、やり返してこない無抵抗な相手を選んでる、もしくは反抗されても、ねじ伏せる事が出来る相手を選んでるんだ。自分達だけが一方的に相手を攻撃出来る状況で攻撃してるんだ。
やり返される状況なら、さっさと逃げたり無かった事にする事しか出来ない、弱者を虐げて強者ぶってる臆病者だ。
やり返される覚悟なんて、ある訳が無い。
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