第116話 ランク低き者に人権無し
仕事をこなして実力を示せば、時間を割いて貰えるって事なのかね?
弱そうなGランクの私には、時間を割いてられないって事だよね。
それにしたって最初から、あれはどうかと思うが……。
なんか前世の職場で、立場の無かった頃を思い出すわ……。
でもまあ、今世の私なら仕事が出来るはずだ!
むしろ、ここまで初期評価が低いと、逆に良い仕事した時の反応が楽しみだ。
そんな事を考えながら掲示板の前に来て、貼り出してる仕事を見る。
流石に掲示板も大きい。
だけど……街の規模にしては少ない気がする。
いや、冒険者の集まる街だから仕事はそれなりに有るんだけど、それ以上に仕事を請け負う冒険者が多いのかな?
そして高ステータスの冒険者の街だからか……荷運び系の仕事って無いなぁ……。
ダンジョンに入るパーティーの荷物持ちの仕事は有るんだけど、ダンジョンに入れるのはEランクからだからなぁ。これが出来るのなら、私はとても優秀な荷運びだと思うんだけどね。沢山持てるし、魔物に襲われてもどうとでもなる。
今貼り出されている依頼の中で出来そうな仕事は……やっぱ下水道の清掃かな?
これならリーアムでやった経験あるしね。
これは下水道の格子の汚れを取る仕事だ。この世界の下水道にはテイムされたスライムが飼われてて、そのスライムが汚物を分解している。
といっても汚物が詰まってしまう所がある。スライムが汚物を追って街中に出てこないように、下水管の出口に魔物が近寄れない格子状の魔道具が嵌め込んである。この格子の所で汚物が詰まる事が有るので、定期的な清掃が必要なのだ。
貼り紙を持って再び受付の列に並ぶ。さっきの受付嬢とは別の列にしてみた。
そして順番が回ってきた。
「何?」
人が変わっても対応は変わらなかった。
「この仕事をお願いします」
「……まあ、これなら、そのしょぼい棍棒でもビッグマウス位は撃退できるかもね。この指示書の場所に行って管理員から指示貰ってね。次の方どうぞ」
「はい、分かり――」
「――邪魔よ」
指示書を受け取り返事を返す間も無く、後ろに並んでた女性冒険者に横に追いやられる。
そして当然の如く、受付嬢もその冒険者の対応に入る。
……。
……まあ、今回は蹴られなかったけど……これ、お勧めの宿とか聞ける状況じゃないね。
これ、仕事をこなしてEランクになれば、対応が変わるのかな?
ダンジョンには入ってみたいしね。
そんな事を考えながら出口へ向かっていると……。
「おい、割込み仮面小僧」
「はい?」
先程の受付嬢とデートの約束を取り付けようとしてた男に声を掛けられた。大柄で人相は悪い。三十歳手前と言ったところだろうか。装備はそこそこ良い様に見える。
「すみません。割込んだつもりは無いんです。まだ聞きたい事が有ったので」
「……あ? 俺様が割り込んだって言ってんのに、違うって言うのか? ぁあん?」
「私としては話を続けたかっただけなんです。そちらからはそう取れなくも無かったかも知れませんね。気を悪くされたのでしたら申し訳ありません」
「……生意気だな。お前……」
「……はい?」
「その体格で特技を『体術』なんて書くような雑魚が『割り込んでません』とか舐めた事言うじゃねぇか。この俺様相手に割り込んでおいてよぉ」
「……はあ……すみません」
「そんなお前が何の仕事請けたんだよ。見せてみろ」
「え? ……はい。これが指示書ですけど」
「……雑魚にはお似合いの仕事か。せいぜい鼠の餌にならないようにな」
そう言って私に指示書を投げ付けて、男は去って行った。
……う~ん。わざわざ私に文句言う為に待ってた訳?
ナンパに失敗したのか?
ま、まあ、とりあえずは仕事をこなさないとね。
指示書を見ると仕事開始は明日の朝から……ってこれ、私が字を読めなかったらどうすんの?
あの受付嬢は登録した時の受付嬢とは別だから、私が文字を書ける事とか知らないはずだよね?
この世界の識字率は決して高くないのに。
文字の読めない他のGランクの人はどうしてるんだ?
……不親切過ぎん?
◇
「最低でもEランクになってから来やがれっ!」
「……はい」
武器屋を追い出される。
「……はぁ」
冒険者ギルドでの仕打ちは見た目が弱そうなのが原因かと思い、強そうな武器を買おうと武器屋に入ったのだが、何処の店もGランクの私には売ってくれない。最初に入った武器屋では、最低でもDランクからとの事で追い出された。
炎の杖は見た目はそこまで強そうでは無いしね。魔法使いと勘違いされたくないし。
どうも、この街は冒険者ランク至上主義みたいだ。
スレナグと違ってランクさえ上がれば、売ってくれそうではあるけどね。
しかしGランクだと、まともに買い物も出来ない。
その後、宿を取るのも大苦戦。
Gランクは泊められないと散々断られまくった挙句、スラムに近い場所でようやく宿を取れた。
この街は最低でもEランクになってから、来るべき街だったのかもしれない……。
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