第95話 三剣岳ダンジョンボス部屋
「あ~、遂に来ちゃったかぁ」
目の前には重厚な扉。
ボス部屋である。
Aランク帯になってじっくり進んできたけど、遂に五十階層にてボス部屋に到達してしまった。
このダンジョンに入ってレベルは二十程上がった。
魔物の数が凄まじかった割には思ったより上がっていない。サキュバスを倒した時に凄い上がったしね。
結局、あのサキュバスは何ランクの魔物だったんだろう?
Aランクの魔物の群れが相手でも全く苦戦していないし、続いてSランク帯が有ってくれても良かったんだけどね……。
推定だけど四十階層までにおよそ二十日程掛かり、四十一階層からは一階層に二日掛けるペースで来たから、かれこれこのダンジョンに籠って四十日程になる。
元々出不精気質だったとはいえ、我ながらよくこんなに引き籠れたもんだ。
正直、一ヶ月以上魔物との戦いに明け暮れるなんて私に出来るとは思わなかった。
引き籠れた理由としてはレベルアップによる高揚感も有るが……何というか……圧倒的な力でドラゴンとかミノタウロスみたいな、明らかに強力な魔物の群れを蹂躙出来る事かな。前世の自分の無能っぷりにげんなりしてた私が、今では自分の力に酔えるのだ。
その事に快感を覚えないと言ったら噓になる。
自分より弱い相手を嬲る。前世で自分がやられて嫌な思いをした事を、今世では私がやっている。私という人格は私が思うよりクズなのかもしれない。
……ま、まあ、対象は魔物だし! 向こうから襲ってくるんだし、仕方ないよね。人間相手を嬲ってる訳じゃない。
とはいえ、これ以上力に酔うと危険な思考になりそうだし、ボチボチ外に出たい気持ちが無い事も無い。帰りにも時間かかる事だし切り上げ時かな。
「うんっ! いきますか!」
ボス部屋の扉を開ける。
部屋の中は今までと同じか少し広い野球場程の広さ。
しかし、今までのボス部屋とは明らかな違いがあった。
ボス部屋の真ん中に、大きな六芒星の魔法陣が描かれており赤紫の光を放っている。
そして……魔法陣の側に誰か居る。
「ほっほっほ。これはこれは、無粋で可愛らしいコウモリさん――だ!」
「……え?」
その誰かの声と同時に、辺り一面に魔力の波が広がる。
なんだ?
「……ほう? 私の『恐怖』を平然と受け流すとは。いかなるカラクリでしょうかな?」
魔法陣の側に立つ誰かが声を掛けてくる。
その存在は身長は二メートルを越える長身。だけど細くてひょろっとしている。漆黒の下地に真っ赤な刺繍のローブに身を包んだ格好だ。
フードを深く被っているが顔は少し見える……骸骨である。いや、骸骨の様な仮面をしている。声は無機質と言うか機械音の様だ。性別年齢は勿論、感情も読めない。
このボス部屋に居るという事は、こいつがダンジョンボスだよね?
ダンジョンボスに話しかけられるとは思ってなかった。
「ほっほっほ。魔石無しが今のこの状態のダンジョンの最深部に辿り着けるとは……如何なる方法を用いたのですかな?」
「……はい? 方法?」
「……ふむ? 此処にはどういった目的で来られたのですかな? それにこの部屋に入って来たのが下級コウモリさん一人とは……他の方々は上手く隠れておいでの様で」
「……えっと……私一人でただの修行に来ただけですけど……あなたはこのダンジョンのボスですよね?」
「ほっほっほ。さて、どうなのでしょうな? そちらが惚けなさるのなら、こちらもそうさせていただきましょうかなぁ」
「……」
……う、うん?
なんだ? コイツ。
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