第93話 三剣岳ダンジョン攻略中
一日に平均二階層のペースで攻略していく。
中々階段が見つからなくて一日一階層の時もあれば、階段があっさり見つかって一日三階層進む時もある。
因みに一日と言っても私の体感である。太陽も見えず、時計も無く、正確な所は分からない。
十一階層からDランクの魔物が出現し始めたが問題なく焼き払いながら進む。
時々殴り倒してドロップを確認する。
今の所めぼしいドロップは狼型の魔物の毛皮くらいだ。
魔石やドロップはすでに拾っていない。先は長そうだしね。帰りに拾えばいいや。
二十一階層からCランクの魔物が出現し始めた。
このランク帯では猪の魔物から肉がドロップした。
食料が出るのはありがたい。これでより長く引き籠れる。
他にめぼしいドロップはトレントぽい魔物が落とす木材。それなりに価値が有りそうだけど容量が大きいのが難点。薪の補充になると思えば良いか。
ここでようやくレベルアップした。
嬉しいけど、あれだけ大量に魔物を倒してやっと一つかぁ……。
三十一階層からBランクの魔物が出現し始めた。ランクアップのパターンが分かってきた。
Bランクの魔物はダンジョンボスとしか戦えてなかったので、この辺がレベル上げに良いだろう……と思ったのだけど。
「……そうでも……無いのか?」
Bランクの魔物を狩り始めて数日、未だレベルが上がらない。
ここまでCランク以下の魔物も大量に倒してるのにも関わらずだ。
う~む、サキュバス倒した時に結構レベル上がったからなぁ。
Bランクでレベル上げをする段階を越えてしまったのかもしれない。
というかあのサキュバス、ランクでいうとどれくらいの魔物だったんだろう?
Aランクどころじゃない気がする。
ということで、四十一階層から出て来るであろうAランクの魔物でレベル上げしようと先へ進む。
四十階層がボス部屋で無ければ……の話だけど。
流石にBランク帯のドロップ品ともなれば、良く分からない石とかでも価値が有りそうに見えて来る。
魔力に余裕がある間は全部拾っていくか。
魔力にも限界はまだ見えないし。
Bランク帯ではレベルが二つ上がった。
そして四十一階層。
「「「GYAAAOOOOO!」」」
「わおっ! おおおお!」
通路から迫って来る魔物――トカゲの様な体躯にワニの様な頭に角――ドラゴンだ。
遂にドラゴンである。ちょっと感動である。
恐怖は……そこまで感じない。ここに来るまでに見た目だけならもっと威圧的なのと戦ってきたからだ。Bランク帯の二つ頭の巨大蛇とか、醜いお爺さんの顔したマンティコアぽいのとかね。
「――っと、油断はいけない」
四十階層でボス部屋が無く、四十一階層があった。おそらく最低でも五十階層まではあるのだろう。
ここからはAランク帯。未知の領域だ。
いや、サキュバスや巨大蟷螂はAランク以上ぽいから未知でもないか。
ドラゴンは尻尾を含めたら体長十メートル程だろうか。そんな巨大なドラゴン三匹が、高さと幅が十メートル程の通路を所狭しと迫って来る。
下の方に来てダンジョンの通路の幅も結構広くなってるのだけど、それでは足りない。いやホント狭そう。
「「「GAAA!」」」
三匹のドラゴンが一斉に口を開け炎を吐いて来る。通路を埋め尽くす程の炎に逃げ場はない。
といっても今の私は慌てない。ここに来るまで、逃げ場のない位の大量の魔物に囲まれたり、逃げ場のない状態で毒液や魔法を使われたりと、逃げ場のない攻撃をされるのは今回が初めてでは無いのだ。
身体全体から腐のオーラを出す。腐のオーラに触れた炎は消滅していく。
そのままドラゴン達に突っ込み、二匹に腐攻撃。
「「GYOOOO!」」
二匹のドラゴンが腐っていき、黒い塵となって消滅していく。
たぶん三匹同時相手でも倒せるとは思うけど初見の敵だ。最初は一対一で殴り合ってみよう。
基本的にダンジョンに出て来る魔物は、ダンジョンの外に出る魔物よりも獰猛だ。仲間のドラゴンがあっさり倒されている状況なのに、残ったドラゴンはそれでも果敢に突っ込んで来る。
ドラゴンが前足で叩きつけて来る。
――ガシィッ!
片手で受け止める。
私の胴体より遥かに太い腕による振り下ろしの一撃を、私の細腕で受け止められてドラゴンが驚いてるように見える。
動きの止まったドラゴンの腕を抱えて放り上げる。
ドラゴンは天井に叩きつけられ、その後ズシンと床に落ちる。
丁度いい高さにドラゴン頭が下がってたので、頭にキック。
ドラゴンの頭が消し飛ぶ。
腐攻撃無しでもドラゴン戦、完勝である。
「ふむん」
Aランクで明らかにパワータイプのドラゴンよりも、私の方がパワーが上の様だ。それも圧倒的に。
ドラゴンの死体がダンジョンに吸収されていく。
吸収された跡には魔石と鱗かな?
魔石はサッカーボール位だ。これがAランクの魔石の大きさか。
この大きさの魔石は見たことある。ルタの村のダンジョンの落とし穴に居た巨大蟷螂の魔石がこの大きさだった。
アイツ、Aランクだったんかい。
あの時点でよー倒せたな。どう倒したかよく覚えてないが。
「「「グオオオ!」」」
「おん?」
ゆっくり考えてる間も無く、一つ目の巨人の群れが通路を所狭しとギチギチしながら迫って来る。狭そう。
一つ目の巨人の魔物達を迎え撃つ。
ようやく本来の目的であるレベル上げが、このランク帯なら出来そうだ。
……いや、マジックバッグの乱のほとぼり冷ましが目的だったわ。
何時の間にか目的が変わってたよ。
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