第91話 三剣岳ダンジョン攻略開始

 サキュバスが見張っていた洞窟の中に入る。

 するとすぐに階段があり、階段を降りていく。


 ……というか、ここって本当にダンジョンなのだろうか?

 すぐに階段が有るあたりはダンジョンぽいけど。


 プルトの町で聞いた情報だから、実は人攫いのアジトな可能性も……でも、あれだけ入り口で派手に戦っていたのに誰も出て来ないから、やはり何かのアジト的な洞窟ではないと思う。

 いや、サキュバスは魔物だからダンジョンがアジトでもおかしくないのか?

 でもダンジョンの魔物はダンジョンの魔力で生きてるから、基本外には出れないはずだよね?

 結局、あのサキュバスが何の為に入り口に居たのか謎なんだよね。


「グルルルルル……」

「グルァッ!」

「ガウッガウッ!」

「んお!?」


 考えながら洞窟の中の階段を降りて通路に出ると、すぐに二足歩行の犬の群れに囲まれた。入り口直ぐに魔物が居るのって何気に初めてだ。

 これってコボルトか?

 コボルトは初めて見る。確かゴブリンよりもワンランク強いEランクのモンスターだ。

 体の大きさはゴブリンとほぼ一緒で、私より多少背が低い程度。

 だけど鋭い爪と牙を持ってる。大きく裂けた様な口から牙を覗かせ涎をダラダラと垂らしている。怖い。


「ガゥッ――パッ!」

「あ」


 爪を振りかざして飛び掛かってきたので、上体を逸らして躱し、空振りしてがら空きのコボルトの横顔にパンチ――コボルトの犬頭が木っ端微塵に弾ける。


 ――弱っ!


 サキュバスと殴り合った後だから余計にそう感じるのだろうけど……よ、弱い。


「てい、てい、てい」

「「「グパッ!」」」


 残りのコボルトも片付ける。

 そしてコボルト達は魔石と牙を残し、床に沈み込んでいった。

 良かった。

 魔物の遺体が吸収されるという事はダンジョンだ。ここはダンジョンで確定である。


 魔石と牙を拾う。


「この牙は何に使えるのか……」


 今回はダンジョンの詳しい情報は無し。未踏破ダンジョンらしいし、獣系の魔物がドロップする肉や毛皮がそれなりに価値があるらしいと聞いたくらいだ。


「「「グギャギャ」」」

「「「グギャギャギャ」」」

「うわっ」


 考える間もなく今度はゴブリンの集団が現れる。数にして十匹以上。多い。

 ここは同じ階層に別種の魔物が出るのか。流石小さいダンジョンとは違うな。


「まあ、今まで小さいダンジョンしか入ってないし、こっちの方が普通なのかな――っと」

「「「ギパァっ!」」」


 ゴブリンを倒して、先へ進む。

 何気にゴブリン、普通に倒せるようになったなぁ。

 まあ、ここに来るまでの山の中の移動中に、何度かゴブリンとも戦って来たしね。


 ◇


「広っ! 魔物多過ぎ!」


 ダンジョンに入って二時間程経っただろうか。

 小さいダンジョンなら既に下に降りる階段を見つけてる頃合いだが、未だ見つからない。

 広いんだから当然と言えば当然。これはマッピングする必要があるのかもしれない。

 それよりも敵が多い。滅茶苦茶多い。凄まじく多い。シャレにならない位多い。

『バランス調整間違ってるのでは?』的な古代RPGの鬼畜エンカウント率ゲームもビックリな位に、ひっきりなしにゴブリンとコボルトとスケルトンが群れで襲ってくる。

 FランクとEランクだし価値があまり無さそうなので、もうドロップは無視してる。魔石も拾うか悩むレベルでうじゃうじゃ居る。


 これが本場のダンジョンなのか。舐めてたわ。

 負ける事は無いけど、鬱陶し過ぎる。


 ともかく下に降りる階段が見つからない。

 という訳で、マッピング開始……したのだけど……。


「「「グギャーッ!」」」


 ゴブリン達を倒した。


「――よしっ! 魔石はこれで全部かな――って!」

「「「グルルルル……」」」


 コボルト達が現れた。


「「「グルッッパー!」」」


 コボルト達を倒した。


「もう魔石もパスだ! ……えっと、私、どっちから来てたっけ? え~っと……こっちが――って!」


 ――カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ……。

 スケルトン達が現れた。


 ――ドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコ……。

 スケルトン達を倒した。


「あー! もうっ! また方向が分かんなくなったっ! ……えっと……」

「「「グギャッハー!」」」


 ゴブリン達が現れた。


「むきーーーー!」

「「「ギャッパー!」」」


 ゴブリン達を倒した。


 多過ぎっ!

 魔物多過ぎっ!


 ルタの村の蟻もうじゃうじゃ居たけど、あれは群れを倒せば一息付けた。たまに近くに別の群れが居て合流してくる事もあったけど、それはリポップした後くらいだ。

 でもこのダンジョンは切れ目なくうじゃうじゃいる。たまになんてレベルじゃない。戦闘してたら戦闘音で常におかわりが来続ける。私、ゴールデンな爪とか持って無いよね?


 これが普通のダンジョンか……舐めてた……のか?

 私がソロだからそう感じるだけ?

 いやでも、これだけ魔物多いと、パーティーでもキツイ気がするんだけど。

 この世界のダンジョンは中の魔物を間引かないと溢れてしまうとか、そういったラノベでよく見る様な設定では無かったはずだが……。

 まあ、大規模ダンジョンはここが初めてだしなぁ。これが普通なのか?


 とにかく無理!

 こんな状況でマッピングなんて到底無理だ。

 という訳で、作戦変更。


 ダンジョンの壁を常に左にしながら、魔物を薙ぎ倒しながら進む。

 とにかく方向だけには気を付ける。

 左手の法則で進めば必ず階段に着ける法則である。

 ……右だったかもしれないが……とにかく壁を左手沿いに進む。


 魔石ももう無視。

 魔石やドロップはある程度、下の階層に行ってからでいいや。

 ここに来た理由がマジックバッグのほとぼり冷ましなので急ぐ必要は無いのだけど、時間を潰すならもっとランクの高い魔物の出る階層でだ。


 数時間後、ようやく下に降りる階段を見つけ、その日はその階段の踊り場で野営する事にする。流石に階段にまで魔物は居ない。

 一階層に数時間か……明日は二階層くらい行けるのかな?

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