第89話 戦いの後の色々

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】


「わお」


 今、幾つレベル上がった?

 蟷螂の時のレベルアップも聞き逃したし、もう自分がレベルが幾つ上がったのか分かんないや。


 あのサキュバス、やはり相当高レベルの魔物だった訳だ。

 それでも私の腐攻撃はどうにもならなかったみたいだけどね。

 怖い位、ガチ必殺な腐攻撃。

『破魂』と合わさって本当に凶悪だね。

 必ず殺すと書いて必殺。


 それはともかく……。


 ……はぁ。


 魔物とはいえ、ゴブリンとは比較にならない位に、会話も出来る、とても人間ぽいサキュバスを殺してしまった……。


 また罪悪感が……………………思ったよりは無いな。


 相手もかなりガチで殺しに来てたからかな? 人間ぽいとはいえ魔物だし。

 悪党とはいえ、既に人を殺した経験があるからかなぁ。今更、人型の魔物で苦悩する事は無い……のかな?

 私もこの世界に慣れてきたという事なのか……。

 ゴブリン殺すのにも大事だったのになぁ。


 今はそれよりも……それよりもって考えてる時点でやっぱ慣れてるのかな?

 ともかく、サキュバスの発言によると悪魔はもうこの世界では絶滅してるのか……。


「……」


 まあ……それもどうでもいいか。


 いや、どうでもいいのか分からんけど、どうしようもない。サキュバスの発言が真実かどうかも分からないし。

 我ながらあっさりしてる気がするけど、そもそも根本的に、私に自分が悪魔と言う自覚と実感が未だに無いのだ。

 血の色は紫だし、肉体的には間違いなく悪魔なんだろうけどさ……。

 他に悪魔に転生した転生者でも居ない限り、私以外に悪魔は居ないのかぁ。

 

 ◇


「やっちまった!」


 洞窟の前に広がっていた木々が、今は辺り一面消し飛んでいる。


 ――何故、こうなったかと言うと。


 サキュバスが使っていた杖が落ちてたので、試しに魔力を流してみると先端から火の玉が飛び出したのだ。

 いや、火の玉という表現は生易しい……直径数メートル級の青白い火球が飛んで行ったと言おうか……。

 そしてそのデカイ火球が木々を焼き払いながらしばらく飛んでいき、やがて山中に巨大な青白い火柱を上げた。

 確か火って青が一番温度が高い色だったよね。

 

 どうやらサキュバスが使ってた杖は、魔力を流す事によって火属性の魔法が使える杖らしい。サキュバス自身が火適性や火魔法スキルを持ってる訳ではなかったんだね。

 割と魔力がそこそこに消費した感覚が有ったので、威力に応じた魔力は消費するみたいだけど……それは当然か。

 サキュバスが使った時とは威力が桁違いだから、魔力量で調整は可能みたいだ。

 ただ、サキュバスが使ってた時でもかなりの火柱が上がってたし、もっと威力抑えれないと扱いずらいなぁ……練習だね。


 更地になった山肌を見ると、やっちまった感が凄い。これ、プルトの町から見えたりしてたらどうしよう……。

 でもまあ……とりあえず山火事にならなくて良かった。マジ焦ったよ。

 この杖や火適性によって魔力を元に変換された火は、魔力の供給が無くなれば消えてしまう。なので森の中で火魔法を使っても火事になる事はそうそう無いのだ。

 ……いや、火そのものは消えても、高熱によって発火点まで温度は上昇してるだろうから、前世の常識で考えたら発火してるはずなんだけどね。

 火適性が無いから感覚的に分からないけど、魔力的なナニカが作用してるのかもしれない。

 腐攻撃の特性なんかの事であれば、腐適性を持ってるお陰でなんとなく感覚的に分かる事も多いんだけどね。

 

 ともかく、素晴らしい戦利品を手に入れた。

 使いこなせば私も火魔法の使い手だ。遠距離攻撃は欲しかったんだよね。


「さて、服も戻ったね」


 サキュバスの火魔法によって燃え尽きた魔装服は……無事再生した。

 流石に完全に焼失したから再生も無理かと思ってたら、ふと気が付くと体に何か繊維状のが巻き付き始めていて……そして魔装服が完全再生したのだ。

 これは切実にありがたい。

 折角イリーナさんが作ってくれた服だし、再生浄化機能付きの動き易い便利な服だからね。


 ただ、ちょっと怖くもある。

 この魔装服は私用に専用化したから、私の再生能力を継承したと思われる。

 その魔装服の再生っぷりをみると、私自身が塵となって焼失しても……再生してしまうのだろうか……。

 いや、別にそれが悪いって訳では無いんだけど……現状、死ぬのは怖いし死ぬ気は微塵もないんだけど……もし、私が長く生きて……生きる事に疲れて死にたいと思う時が来ても……私は死ぬ事が出来るのだろうか?

 

 でもサキュバスは『悪魔と呼ばれた魔石無しの魔人族はもう絶滅した人種だ』とか言ってたんだよね。それに確か転生の時の悪魔の種族説明に『不死不滅では無い』と説明があった様な……。

 つまり悪魔は完全な不滅の存在では無いという事だ。

 まあ、私の不死要因の再生能力が悪魔の種族特性でなく、活性によるものかもしれないけどね。

 転生の時にはどちらにも再生する様な記述は無かったと思うんだけどな……。

 もう記憶があいまいだけど。

 考えても答えは出ないね。


 他にも気になるのが、サキュバスは……えっと”妖魔”……だったかな?

 サキュバスの口振りからして、妖魔は魔石を持つ人型魔物の一種で、悪魔と呼ばれる魔人族は人種……と言う事だよね。

『魔人族』という単語はどこかで聞いた……いや、見たことある様な……やっぱ転生の時の悪魔の種族説明文か?

 ただ……もうね……あの時は転生受付終了まで時間が無かったから、良く覚えてないんだよね。

 まあ、私がこの世に存在する唯一の悪魔――魔人族だったとしても、元は人間だ。悪魔として何かしたい訳でも無いしね。


 他にも気になると言えば、サキュバスが読んでた本。最初に私が喰らった火魔法の余波で燃えちゃったみたい。

 どんな事が書いてあるのか気にはなるけど、燃えちゃった物はどうしようもない。


 まあ、色々分かった事も謎な事もあるけど、そろそろダンジョン行きますかね。

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