第76話【閑話】他の転生者達5

 しばらく転生者コウさん視点での閑話が続きます。


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 私の名前はコウ。この世界ではそう名乗っている。


 ……我々はもう……これまでかもしれない。

 そう思う程に絶体絶命な状況だ。

 絶望的だ。


「死にたくなければ大人しく拘束されろ! そうすれば少なくともここで痛い目見る事は無いぞ」


 取り囲む武装集団の頭目と思われる男が、我々に言う。

 我々を包囲しておきながら攻撃してこないのは、我々を捕縛する事が目的だからなのだろう。


 我々、二十一人のメンバーは迷宮都市グレドニアを脱出し、東へと街道を移動してきたが、出発三日目にこうして武装集団に取り囲まれる羽目になってしまった。


『マップ』を持つ仲間によって警戒は怠っていなかった。グレドニアで見た犯罪者達の動きは常に注意していた。

 しかし門番が買収されていたのだろう。我々がグレドニアを出た事は人攫い組織に把握されていた。

 移動途中に立ち寄った村で村人からゴブリンの集落退治を依頼されたが、依頼されたゴブリンの集落が有ると言われた場所をマップ持ちの仲間が調べると、ゴブリンでなく人間の集団を感知したりする事があった。おそらく、人攫い組織の武装集団が待ち受けていたのであろう。そういった罠を躱しながら移動を続けてきた。

 しかし罠や待ち伏せの網に掛からない我々に業を煮やしたのか、五十名近い騎乗武装集団で追いかけられ、現在その集団に囲まれた状況となったのだ。

 単純に物量と機動力で来られては流石に躱せなかった。

 丁度、見通しが良く隠れる場所の無い荒野を移動中だったのが不運だった。いや、そういうタイミングで狙われたのだろうな。

 人攫い組織にとって我々――厳密にはエルフ女性十三人は、それだけの価値が有ると言う事らしい。


「リーダー。僕もやるよ」

「……敵の数が多い……すまないな。君はまだ若いのに」

「この状況でそれは言いっこなしだって」


 仲間達は立ち向かうつもりの様だ。

 我々は最悪、こうなる事は想定していた。

 だから人と戦う事、人を殺す事になるかもしれない事は……覚悟済みだった。

 それに私の鑑定の結果、この武装集団は中々の強さで特に頭目がかなりの強さだが、現在の我々でも戦えない事は無いと判断した。それはハンドサインで仲間達に伝えている。

 だからこそ仲間達は立ち向かおうとしているのだろう。

 厳しい状況では有るが、絶体絶命、絶望的……と言う訳では決して無い。


 

 ……この武装集団だけなら。



 私は鑑定によって知ってしまった。


 そいつは武装集団の後方に一人、場違いな漆黒の下地に真っ赤な刺繍のローブに身を包んだ格好で居た。フードを被っており髑髏の仮面を付けていて素顔は見えない。

 武装集団の一員には見えなかったし、しばらく遅れて到着した馬車の中から出て来た後は後方に一歩引いた場所に居たので、戦闘の出来ない違法奴隷商なのかと思い、そいつを鑑定したのは最後にしてしまっていた。

 そしてその人物を鑑定し、知ってしまった。



 個人情報


  名前 Error

  性別 Error

  年齢 Error

  種族 Error

  状態 憑依(ディスロヴァス)

  レベル 82


 身体

 

  STR(+5) 1**(101+10+Error)

  VIT(+5) 1**(101+10+Error)

  AGI(+5) 1**(101+10+Error)

  INT(+5) 1**(101+10+Error)

  MND(+5) 1**(101+10+Error)

  PER(+5) 1**(101+10+Error)


 適性


  Error


 スキル


  Error


 称号


  Error



 な、なんなんだこいつは!?


 多くの部分がエラーや文字化けしている。それでも全てのステータスが百を越えているなんて、とんでもない化け物だ。

 どれか一つでもステータスが百に到達すれば、それは一流の証。

 複数のステータスが百に到達するのは、百年に一人と言われる選ばれし英雄の証。

 スキルや称号で上がるステータスはSTR、AGI、INTの三つが多く、他の三つは上がりにくい。全てのステータスが百を越えている存在なんて記録に残っておらず、古の魔王を倒した勇者だけだと言われてるくらいだぞ!


 憑依(ディスロヴァス)という状態の項目が気になり、その部分に意識を向ける。

 私の祝福『解析』により、更なる情報が得られる。


 そして私は絶望する。



  名前 ディスロヴァス

  種族 アモン・オブセッション・ゴブリン

  ランク SSS


 身体

 

  STR 258

  VIT 184

  AGI 243

  INT 389

  MND 186

  PER 187


 スキル


 並列思考5 火魔法4 水魔法4 土魔法4 風魔法4 闇魔法5 暗黒魔法5 隷属魔法5 契約魔法4 影魔法5 儀式魔法5 血魔法4 結界魔法4 体術4 隠形4……


 称号


  妖魔王 人類の殺戮者 禁忌を犯す者 狂研究者 憑依王 冒涜王


 憑依


  ソルルガ・オド・ソルンエルスト

  ミカサ・ラウ・ヴィットリア

  Error

  アカイト・アーウィン

  Error

  ・

  ・

  ・



 鑑定した結果は、魔物を鑑定した時と同じ表示形式。魔物が憑依している状態ということか!?

 

 圧倒的なステータス。

 数え切れないスキルの数。その全てのスキルレベルが高い。

 憑依中とみられる数もErrorを含め、膨大だ。


 そして称号。


 妖魔王――魔王だと!?


 人攫い武装集団の後ろにいる奴は、憑依体であって本体ではない様だが、それでもこんな所で魔王と遭遇してしまうとは!

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