第65話 素敵な出会い?
牢屋に入れられた翌日。
尋問される。
「君みたいな女の子が何故一人で旅を? 仲間は居ないのか?」
「仲間は居ないです。一人の方が気楽なので。盗賊程度なら負けませんし」
「一週間前は何処で何をしてた?」
「一週間前だと丁度リーアムに到着した頃でしたね」
「吸血鬼騒ぎの最中にか?」
「それ以前はルタの村に居て、吸血鬼騒動はリーアムに到着してから知ったんです。リーアムの衛兵さんに確認して頂けませんか? 私の事を覚えている人は多いはずです」
考えが甘かった。
私はもっと自分が、他人から見てどういう人物に見えるのか、よく考えるべきだった。
私が思ってる以上に、女の子が一人で旅してるというのは不自然らしい。しかも故郷は遠い場所という設定だ。よく考えたら怪しいよね。身分証明になる物も持っていないし。
冒険者ランクは最下級のG……実質ランク無しである。冒険者証が身分証明証になるのはEランクからである。
盗賊二人を返り討ちに出来る程の力がありながら、未だGランク……何かあるの? となる訳だ。
その日は結局、釈放されなかった。
◇
「奴等が着ていた装備は一週間程前に行方不明となっていた、我等の仲間の物と確認出来た。そしてその日に君がリーアムに滞在していた事もリーアム衛兵達の証言により証明された。よって無罪釈放となる。すまなかったな」
牢屋に入れられて三日目の朝、駐屯兵にこう言われて無事釈放された。
いやはや良かった。
ここは領境近くで人身売買もやり易い場所だ……もしかしたら駐屯兵と盗賊が癒着してるのでは? よし、そういう事なら仕方がない。やってやろうじゃないのよ! ……とか思い始めてて、牢屋をぶち破って強硬手段に出ようかなと、考え始めてた所だったよ。
今回はリーアムの衛兵達が証言してくれる見込みが有ったから良かったけど、今後は気を付けないとなぁ。
悪魔ではなく人として……とは当然思うけど、今回一歩間違えたら……例えば駐屯兵が真面目に取り調べをしなかったら、やはり碌な結果にならなかっただろうしね。
「改めて盗賊の討伐、逮捕及び軍馬の返還に感謝する」
「いえ、どういたしまして」
「後の捜査はこちらの仕事だ。君の旅の無事を祈らせてもらうよ。それにしても盗賊二人を返り討ちとは、見た目に寄らず強いんだな」
「ははは……ちょっと修行しまして」
「ほう、どんな修行か聞いても?」
「えっと、ルタの村のダンジョンでレベル上げしただけですけどね」
「ルタの村の……確かあの蟲だらけの? あそこは毒とか酸とか厄介過ぎるのではなかったか?」
「す、すみません。やり方は秘伝という事で」
「む、そうか……。まあ冒険者の隠し玉を詮索する事は出来んな」
「でも、もう少し効率の良いダンジョンが有ればな……とは思いますね」
「中々レベル上げに向いたダンジョンって、都合よく有ったりしないよな。有ったら有ったで凄く混むけどな。この近くのダンジョンもレベル上げには向かないしよ」
「詳しく!」
「ぉお? ……お、おう」
なんと、この近くにダンジョンが有るらしい。
そのダンジョンはルタの村のダンジョン同様、もしくはそれ以上に不人気なダンジョンの為、この町に住んでる人しか知らないらしい。
いやはや、善行はやるもんですね。牢屋に入れられて踏んだり蹴ったりだと思ってたけど、こんな出会いが有るんだから。
あのまま知らん振りしてスレナグに向かってたら、そのダンジョンの存在も知らず通り過ぎてたであろう。
……そう思ったのだが……。
「ア、アンデッドダンジョン……ですか……」
「ああ、臭いし不気味だし、ドロップも骨とか髪の毛とか碌なもんが無いし、ゴーストは物理だけじゃ倒せないしな。行くもんじゃないぞ」
誰にも知られない程に人気が無いのには、当然、それ相応の理由があった。
そのダンジョンは、アンデッドしか出ないダンジョンだったのだ。
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