第61話【閑話】他の転生者達3

 私の名前はコウ。この世界ではそう名乗っている。


 この世界に来て半月程経っただろうか。

 注目を集めてしまった我々は場所を変える事も含めて議論したが、街の外に魔物が居るこの世界での移動には危険が伴う、という理由から、結局この迷宮都市グレドニアに滞在している。

 最初からそれなりの金額を二十一人全員が所持していた為、全員が住める大きめの借家を借りて住んでいる。

 丁度良い物件が有ったのは幸運だった。

 

 ……と思ったら、その借家は呪われていた。悪霊が憑りついていたのだ。

 光魔法スキル最大の仲間達によって浄化したがな。

 何の伝手も無い我々が借家を借りれたと言う事は、そういう事だった訳だ。

 しかし呪いは浄化した為、結果的には良い物件を借りれた。女性陣は不気味がっていたが我慢して欲しい。


 ただ、この事により我々は更に周囲から注目を集める事になってしまった。

 理由は教会ですら手に負えない悪霊を浄化する光魔法の使い手が、複数居ると言う事。

 後で知った事だが、どうやら光適性は一般的にはかなりレアな適性だったのだ。


 神よ……異世界常識……穴だらけなんですが……。


 常識的知識として光魔法が主に回復魔法を得意とする属性だとは知っていたが、光魔法がレアだという常識的感覚は分からなかったのだ。


 因みに私を含め、我々のほとんどが光魔法の使い手である。

 皆、文明中世レベルの世界では、怪我や病気が怖いからと回復魔法を習得したのだ。

 流石日本人。考える事が一緒である。


 それぞれ役割を決めたんじゃなかったのかって?

 いや、転生まで三十分しか時間が無かったんだ。

 実際にはリーダーが協力を呼び掛けたのが残り二十分だったから、もっと時間が少なかった。

 重要な『鑑定』『マップ』『無限インベントリ』は取得者を決めたが、それ以外の細かい事を打ち合わせる時間など無かったのだ。

 それに何時までも集団で行動するとは限らなかったからな。

 とりあえず回復魔法を取得しよう、とは誰もが思ったのだろう。


 ◇


 我々は日々交代しながらダンジョンでレベル上げを行っている。

 荒事を好まない私や女性陣もだ。

 これはやむを得ない。まずは自衛能力の獲得は必須だからな。

 街に入る時の騒ぎの際、見目麗しいエルフの女性陣を見る周囲の目は、私から見ても危険だった。当事者である女性陣はより身の危険を感じたのであろう。血生臭い魔物狩りを、嫌々ながらも頑張っている。


 半数がダンジョンで狩りをし、半数が留守を守る。

 半数と言っても総勢二十一名の半数だから、常に十人と十一人での行動だ。

 これだけの人数だ。早々、手出しはされまい。


 今日の私は留守役である。

 私は今まで鑑定して来た一般人や兵士、冒険者のレベルやステータスの傾向などを考察している。


 現状、分かった事としては戦闘をしない町人や商人でも、大人であればレベル10程度は有る。

 魔物を倒さなくても訓練や日々の生活でもレベルは上がる様だ。


 一般的な兵士や衛兵はレベル20、隊長クラスだとレベル30と言った所。騎士はまだお目にかかっていない。

 冒険者に関してはかなり幅が広いが、Eランクがレベル15、Dランクがレベル20、Cランクがレベル25、Bランクがレベル35、Aランクがレベル45、と言った所だ。

 魔物を倒さなくてもレベルが上がるとはいえ、やはり戦闘職の方がレベルが高い傾向にある様だな。

 スキルも戦闘関連のスキルの方が能力の補正が高い傾向にある。


 そしてスキルが強力である。

 スキルが優秀な傾向にある我々は、この世界の人達よりも有利である。


 転生ポイントでのスキル取得出来た分、我々転生者はこの世界の人達よりもスキルレベルが総じて高い。同じレベルだとスキルの能力補正が有る分、まず我々の方がステータス的には強いのだ。

 更にステータスがほぼ同じだとしても、スキルレベルが高い方が強い。

 ステータスが同じ者同士でも、剣術スキル二と三が手合わせすれば三の方が当然強い。

 それに加えて我々転生者には全員『祝福』という補正も有る。

 私の祝福の『解析』は戦闘向けではないがな。

 強力な力を与えてくれた神に感謝だな。


「こんにちは。今日はいい天気ですな。この街には慣れましたか?」

「あぁ……こんにちは。まあ……それなりに……」


 玄関先で掃除をしながら人間観察をしていたら、声を掛けられる。

 声を掛けてきた中年の男性は見た目は穏やかで人の好さそうな印象だ。最近こうして頻繁に彼から声を掛けられる。

 彼は近所に住んでいると言うこの辺の顔利きで、最近住み始めた我々を気に掛けてくれている様だが……。


「左様ですか。何かお困りでしたらお声掛けを」

「ご配慮ありがとうございます。まあボチボチやってますので」


 軽く会話を交わし、立ち去る男。

 彼の後ろ姿を見送りながら、立ち去る男を鑑定する。



 個人情報


  名前 ゲイル

  性別 男

  年齢 三十九

  種族 人族

  状態 正常

  レベル 28


 身体

 

  STR(+0) 49(47+2)

  VIT(+0) 47

  AGI(+1) 57(49+2+6)

  INT(+1) 55(49+2+4)

  MND(+0) 47

  PER(+0) 49


 適性


  風 剣術


 スキル


  風魔法1 短剣2 隠形2 忍び足2 鍵2 拘束1



 称号


  詐欺師 人売り 人攫い

 

 



 ……。


 この街に長居は出来ないな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る