第16話【閑話】他の転生者達1

 私の名前はコウ。この世界ではそう名乗っている。


 前世では工場で解析の技術員を務めていた。

 そして工場での事故で私は死んで……そして生まれ変わった。

 ただし地球にでは無い。

 今居る『エルウェスタ』という剣と魔法の世界にだ。俗に言う異世界転生というものである様だ。異世界転生系小説は読んだ事は有るのだが、実際自分の身に起こるとは、些か以上に驚いている。


 死んだ私は真っ白な世界で、神及び世界の管理者を名乗る存在に、転生に関する説明を受けた。

 その白い世界には私以外にも不慮の事故で死に、転生する事になった人達も居た。

 転生先を一緒にすれば一緒に行動出来るとの事で、とある男が協力し合う事を皆に呼びかけ、私はこれに応じることにした。神を名乗る存在が言うには、転生する世界には魔物が居るらしいからな。そして文明レベルが中世レベルとくれば、盗賊等も地域によっては居るのだろう。前世でも地域によっては居たが。

 そういった事情から、ある程度の自衛能力は必須。しかし私は荒事が苦手だ。

 だから彼の呼びかけに応じた人達と行動を共にする事にした。

 総数二十一名。

 意外に多い。

 しかし考えてみれば、それ位にはなるか。

 ゲームをしない人や異世界転生系小説を読まない人でも、魔物が居る世界と聞けば危険な世界なのだろうとは、誰でも想像がつくだろうからな。


 転生する前に、神より能力獲得の機会を貰った。

 転生ポイントなるポイントを使い、その範囲内で能力を獲得出来る。所謂キャラメイクと言う奴だな。

 神から貰える能力の中に『鑑定』というものが有る。あらゆる人や物の情報を対象を見るだけで取得出来るという。技術員だった身としては調べる楽しみが失われる一面も有るが、新しい世界の情報を誰よりも知る事が出来る。

 それに私はゲームとかでも、データや数値を眺めるのが好きだった。

 そういったものを見る事が出来る『鑑定』を私は取得した。

 残った転生ポイントは自衛の為の『体術』に、文明が中世レベルでは怪我が怖いので回復魔法を使う為の『光適性』と『光魔法』を取得した。

 

 転生した後も私は鑑定によって、自分自身のステータスを確認する事が出来る。

 転生後、鑑定によって確認した私のステータスはこのようになる。


 個人情報


  名前 コウ

  性別 男

  年齢 三十三

  種族 人族

  状態 正常

  レベル 1


 身体

 

  STR(+0) 23(19+4)

  VIT(+0) 20

  AGI(+1) 24(20+2+2)

  INT(+5) 41(20+10+11)

  MND(+1) 22(20+2)

  PER(+0) 21


 特殊能力


  鑑定(祝福:解析により性能強化)


 適性


  光 水 土 工芸 彫金 筆記 数学 解体 料理


 スキル


  光魔法2 工芸1 彫金1 筆記2 数学3 土木1 鍛冶1 体術2 解体2


 祝福


  解析(鑑定の性能向上。鑑定で見た項目を意識する事で、より詳細な情報を得る事が出来る)


 称号


  無し



 うむ、こういうステータスを見るのは好きだ。鑑定を取って良かった。

 これが最初から取得していた適性やスキルも含めた私のステータスだ。

 鑑定を持っていなければ自分のステータスも確認できない為、仲間達のステータスも同意の上で確認する。個人情報だから同意を得るのは重要だ。鑑定を持たない者も、白い世界では適性やスキルは確認出来たが、STR等の具体的な数値までは分からなかったからな。

 私には料理の才能が有ったのだな。落ち着いたら料理に挑戦してみても良いかもしれない。解体はやった事が無いのだが……家畜等の解体ではなく、電子機器の解体という意味なら何度もやった事があるからそれか?

 それになにより『祝福』という項目だ。

 これは私の解析で見た所によると、転生者全員に与えられる神からの贈り物の様だ。人によって祝福の種類は様々で、最初から持っていたものと、白い世界で新たに取得した適性やスキルも含めて判定されている様だ。薬学と光魔法を持っている女性が『癒者』の祝福を、剣術スキルを最大まで取った若者が『剣聖』の祝福と言った感じだ。


 しかし大変気になる事がある。

 身体能力なのだが、成人している者は全ての基本数値が、レベル1だと20前後が基本らしい。個人差により多少の前後が有るが平均は20だ。

 そこからレベルが一つ上がる毎に、平均1上がる。これもどれが上がるかは個人差やレベルが上がるまでの行動によって多少差が出るが、平均して1になるのは変わらない。

 そこにAGI(+1)やINT(+5)の()内のレベルによって補正が加わる。

 更にスキルの種類とスキルレベルによって更に補正が加わる様だ。

 私のINTを例にすれば初期値の20にINT(+5)により10が追加され、更にスキルの光魔法、筆記、数学で計11が追加され、最終結果としてINTは合計41となる。

 今は誰も持っていないが、獲得した称号でも補正が付くようだな。

 私は回復魔法を適切に使えるようにと、INTに+5の補正を転生ポイントで獲得した。


 これが罠だった。


 この身体能力の直接の補正は+1につき、基本能力の初期値の一割上昇というもの。私の場合はINTの初期値は20なので+5の上昇値は五割上昇の10だ。

 参照するのは初期値である。

 繰り返すが、現在の基本値ではなく初期値である。

 だからレベルを上げて基本能力値が上がっても、このINT(+5)の補正値はずーっと10のままなのだ。


 設定を間違えていないか?

 

 因みに光魔法等の魔法スキルを1上げる毎にINTに2の補正が付く。

 何かしらの魔法スキルのレベルを5にすればINTに10の補正が付くようだ。

 転生ポイントのコストは、身体能力の補正も魔法スキルも、等しく1上げるのに1ポイントだった。

 身体能力に補正を付ける位なら、そのポイントで何かしら補正の付くスキルを取った方が、よほど良いと言う事だ。

 例として、INT(+5)の獲得に必要だったTP5で、代わりに土魔法をレベル5に出来る。その場合INTの上昇値は同じ10でありながら、その上で最高レベルの土魔法が使えるのだ。

 身体能力にポイントを振るのは損である。

 居るのかどうかは知らんが、身体能力に全振りした奴が居たとしたら、そいつは相当に厳しい事になるのではないか?

 

 神よ!

 振り直しを!

 振り直しをお願いしたい!

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