第7話 異世界人と初邂逅
村の方へ歩いていると、高さ二メートル程の木の塀にたどり着いた。そして塀沿いに進むと門が見える。
門は開いていて、門番らしき中年男性が一人立っていた。槍と革鎧で武装しているけど兵士には見えないな。
まあ、町ではなく村だしね。
ほとんどの村は入る時に税金とかは要らないはず。
あの門番は動物や魔物が村に入らないようにしたり、子供が村から出たりしないように見張る人だろう。
さて、いよいよ異世界人との初邂逅の時だ。
物凄く緊張してきた。心臓がバクバクする。
私は初めての場所を訪問する時は、物凄く緊張するようなビビリなのだ。特に今回は私の方に大問題があるからなぁ。
だけど、ここで人との接触を避けてたら何も始まらない。
普通に人里に入れるならそれで良し。考えたくないけど迫害されるようなら……森でサバイバル生活かなぁ。
「どうか村に入れますようにっ」
いざという時、森へダッシュする心の準備をして門へ向かう。
ローブにはフードが付いており、目深に被ればかなり顔を隠せるが、敢えてここでは被らない。顔を見てすぐ悪魔だと認識されるようなら、下手に村の中でバレるよりは門でバレる方が森に逃げ込みやすいと思ったからだ。
そもそも村とはいえ門番には顔を見せるのがこの世界のマナーらしい。
門番の方も近づく私の存在に気が付いており、私を見ている。
いよいよ緊張の第一関門。相手と目を合わせて挨拶。
「こんにちは」
「……」
「……」
……沈黙。
お互い良く分からない雰囲気の中で、黙って向かい合う。
……あのぅ……そちらは何故、沈黙してるのでしょうか?
門番は口を半開きにして、呆けた様な顔で私を見ている。明確な害意がある様には見えないが、かといって普通の反応とも思えない。
……あれ? 神様?
確か言語理解のスキル……だったかな? そういったのをくれたんですよね?
言葉は通じてるはずだよね?
なのにこの謎反応は何?
緊張で声が小さかったか?
それなら、もう一度。
「あの……こんにちは」
「……」
……これ、駄目なやつか?
ど、どど、どうしよう?
森にダッシュ?
いや、まだ私を悪魔と確信したわけでは無さそうだし、早まらない方が良いか?
ここで逃げたら、逆に相手の疑念を確信に変えてしまうわけで。いやでも、ここまで怪しまれたらもう……。
「あ……すまない。村に入るのかい? お嬢ちゃん」
「――えっ!? はいっ!」
いきなり起動した門番の問いかけに、つい肯定してしまう。
言葉通じてるじゃん!
さっきまでの沈黙は何だったんだよ?
勿論、村に入りたいことは入りたいんだけど……入って大丈夫なのか? これ。
とりあえず村に入る前に、門番から宿等の施設の場所を教えて貰う。
門番は親切な態度で、私の質問に答えてくれた。
聞きたい事を聞けたので、お礼を言って村の中に入る。
村に入って少し歩いてから大きく息を吐いた。
「……はぁ~~。緊張したああぁ」
うーん、とりあえず、最初の異世界人との邂逅は無事クリアなのかな?
少なくとも結果的には悪い反応では無かったと思う。むしろ好意的ですらあった気がする。
……最初の沈黙が、謎で不気味だが。
あれは何だったんだ?
……考えても分かんないな。聞くのも怖いし。
ともかくいきなり『悪魔だ! 火炙りだ!』ってならなくて本当に良かった。
第一関門突破だね。
さて、ここからはフードを目深に被る。
別に被らなくても即悪魔とバレることは無いみたいだけど念の為だ。
何かの拍子で悪魔とバレた時の事を考えると、私の顔を知っている人は少ない方が良い。
「よし! では行きますか!」
異世界転生定番。転生者の職場、冒険者ギルドへ。
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