第5話 キャラメイキング3

 ……ん? 集団の方が騒がしいな。

 協力体制集団の方が騒がしいのでそちらに意識を向ける。


「エルフを選んだら【精霊適性が発現しました】って出ました!」

「本当に? 精霊適性なんて、適性項目の中に無いぞ」

「俺がエルフ選んでも、そんなの発現しないんだけど……」

「種族次第で、個人差で発現するレア適性が有るみたいだな。俺も鬼人で<気適性>てのが発現した」

「ドワーフ選んだら<精霊鍛冶>が発現しちゃったよ。ドワーフやれって事かよこれ? もう時間無いのに、どうすりゃ良いんだ?」

「吸血鬼に種族変更したら、持ってた<光適性>が消えた。そういうパターンもあるのかよ……」

「お! ダークエルフで<闇適性>発現キタ! ダークサイドも悪くないか」


 興奮してるのか彼等の声が大きく、少し離れた私の所まで声が届いてきた。


 ナ、ナンダッテー!

 僅かな希望が見えてきた。

 人族という種族では花開かなかった私の隠された才能が……もしかしたら別の種族なら有るという事か!?

 私の……私の秘められた適性はどの種族に!?


 ◇

 

【残り五分です】


「……あぁ~」


 溜息が出る。

 溜息しか出ない。

 結局どの種族でも、何も適性が発現しなかった。

 夢も希望もありゃしない。

 もう精神的にズタボロである。


 それでも時間は迫っている。

 残りカスの気力を振り絞って手を動かそうとすると、ふいに女性が話しかけてきた。


「あのぅ……一緒に来ないんですか?」


 声の主の方に顔を向けると、二十代と思われる美人で優しそうな人だった。確か彼女は私のステータスを見た人だ。


「あ、いえ……私にはおかまいなく」

「もしかして、お一人で?」

「ええまあ……すみません……放っておいてください」

「……私達は『迷宮都市グレドニア』という所に皆で行く事になりました。どうするか、お悩みでしたら転生先で合流して後でお話ししましょうね」


 そう言って彼女は集団に戻っていった。

 そして彼女が戻っていった集団はしばらくしてすぐに、光に包まれて姿を消した。

 おそらく皆で一緒に、迷宮都市とやらに転生したんだろう。

 私の酷いステータスを見ておきながら、転生直前であっても心配してくれて、声を掛けに来てくれたのか。こんな私にでも気に掛けてくれるとは、優しい人なんだな。

 ……でも同時に鬱陶しいとも、放っておいて欲しいとも思ってしまう。

 もし私が集団に参加した結果、『なんでこんな無能を誘ったんだよ』と彼女が仲間から責められたり、私の無能っぷりを見て、先程の私を見る優し気な彼女の顔が、呆れた表情へと変わっていくのを見るのは……辛い。


「……あぁ~……くそっ!」


 ……善意で声を掛けてくれたであろう彼女に対して、こんな酷い解釈をするなんて……。

 どれだけ卑屈で身勝手でヘタレなのか……自分がホント嫌になる。


【残り三分です】


 はっと我に返る。

 いくら自分自身、駄目人間と思っていても死ぬのは怖い。いや、既に死んでるんだけど怖いのは自我の消滅だ。ここでいう消滅はおそらく魂の死であって、生まれ変わる事も出来なくなるという事なのだろう。早くしないと。


「……ん?」


 先程からずっと画面の<性別>の所に指を置いたままだったらしい。

 そこに<性別切替>と表示が出ていた。

 あれ? 性別の変更って出来なかったような?


 ……もしかしてすると変更出来るのか?


 試しに性別切替してみると……。


【性別反転デメリットによる特別ボーナス<TP>10を付与します】


 頭にメッセージが流れる。


 ……ほ?

 画面を見るとTPが20から30に増えていた。


 マジかよ!

 いきなりの事に困惑するが、TP増えたのは良い事だ。

 時間が無いからTPの振り分けをしなければ。

 急がないと!


 性別を元に戻すことなく<種族>を選択する。


<人族 設定中>

<悪魔 30>

<吸血鬼 25>

<エルフ 20>

  ・

  ・

  ・


 ……んんん? さっきまで無かった種族が?

 あ、TPが30に増えたから新しく表示されたのか。


<悪魔>を選んでみる。


<悪魔>

 魔人族 不老種(不死不滅ではない) 超美形 固有能力:魂


 不老だと!?


【残り二分です】


 うわ、やばい!

 もういい! 今選択してる悪魔に設定! TPも丁度使い切るし残りは転生先だけ……。


【反社会的種族デメリットによる特別ボーナス<TP>30を付与します】

【腐適性が発現しました】


 再び頭に響くメッセージ。

 ナンカキター!

 ……ってなんやねん! <腐適性>って!

 性根が腐ってるって事ですか? そうですか……って、拗ねてる場合じゃない! この切羽詰まってる状況で更にTP30!

 適性やらスキルの組み分けを考える時間なんて無い。こうなったら……。


 すぐ下の項目<身体>から全てのパラメータを最大の+5にする。

 これで<身体>項目は


 STR+5

 VIT+5

 AGI+5

 INT+5

 MND+5

 PER+5


 基礎能力はあって損はないだろう。

 VIT+1が最初からあった為、残りTP1。


【残り一分です】


 やばいぃぃぃい! 消滅してしまう!


 同じ<身体>項目から


<活性 1>

 生命力、体力、魔力、怪我や病気等、あらゆる自然回復速度が二倍


 を選択。 


<転生先>をタップし、選択肢から適当に<ルタの村>というのを選んで一番下の<決定>を選択。


 その瞬間。

 白一色だった視界が更に白く輝いて……意識を失った。

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