第2話 神様の説明
「転生キターーーーーー!」
「え? いきなり何言ってるの? 何の事?」
「今、私達の事を”死を遂げた”って言ったの!?」
「てんせい? ってなに?」
「ふむ、集団転生と来たか」
「訳分かんない事言ってんじゃねぇよ! 此処は何処だよ!?」
「転生……やっぱり俺は……死んだのか……」
一旦は静まり返っていた周りの人達が再び騒ぎ始める。
『不運な死を遂げた者達』と言われて取り乱す人達が当然いるが、異世界転生系小説は最近では小説のジャンルの一つとして定着してるからか、状況をすぐに理解する人もそれなりにいるようだ。
私もその一人だ。
……いや、理解して良いのだろうか?
でも、この状況はそうだとしか思えない。
「あなたは神様なのですか?」
「嘘……お母さん……お父さん!」
「いやいやいや! 何、皆死んだってあっさり受け入れてんの? ドッキリか詐欺かなんかじゃね?」
「くっそ! ……死んだのか――っ畜生!」
「この非常識な空間……ドッキリとか詐欺とは思えないけど。むしろこれでドッキリや詐欺だったら驚く」
「マジで? マジなの!?」
「あの状況から自分が生き残れたとは思えないんだよな……少なくとも大火傷を負ってるはずだし」
「うわああああぁあ!」
やっぱり周りの人達は皆、不慮の事故か何かで死んだ人達みたいだ。
場は大混乱だ。
「静まりなさい」
全員、ビクッと神と思われる存在の声に黙り、彼の方を見る。
不思議な声だ。
声が大きい訳でも怒鳴ってる訳でもないけど、なんというか……頭に……いや、魂に直接響いているかのようだ。
「儂は高次元の存在。世界の管理者。お前さん方の解釈で言えば、神と言う認識でそう違いは無いじゃろう」
マジか。
神様って本当にいたんだな。
「諸君が、これから転生するのは『エルウェスタ』という地球とは違う世界だ。文明レベルは地球で言う中世程度。レベルにステータス、スキルや魔法があり、魔物の居る世界だ。特に使命は無い。好きなように生きるがよい」
神様がそこまで言ったところで、目の前にタブレットの様な物が現れた。
操作するのに丁度良い距離で宙に浮いてる。自分が移動すればタブレットも付いて来る。
なんという超常現象。
やはりここは通常の空間では無い。
タブレットの画面にはゲームのステータス画面のような表示が出ていた。
これは……私のステータス画面?
「戦った事も無い諸君に、いきなり魔物が居る世界で暮らせというのも酷であろう。転生ポイントとでも言おうか……。そのポイントの範囲内で力を授けよう。言語理解のスキルと、服やある程度の資金は最初に授ける。最低限の一般常識もインストールしてやろう。転生場所を同じ場所にすれば、望む者同士で一緒になる事も可能だ。制限時間は三十分。時間内に転生しなかった者の魂は、転生する事なく純粋なエネルギーとしてエルウェスタの世界に吸収され消滅する」
なるほどゲーム的だな。
所謂キャラメイクをこのタブレットで行えと言う事か。
消滅はする気は無い。
「もう家族には会えないのですか!?」
まだ高校生くらいの女の子が叫んだ。
「……地球とは違う世界? ……アイツや子供達を置いて……」
自分と同じ世代の男性も呟く。
「こちらの都合で悪いがの……。諸君にはエルウェスタの世界で、新しい風を吹かせてくれる事を期待しておるよ」
神様が語る。
あれ?
特に使命は無いと言ってたような。
使命という程では無いけど、転生者達には何かを期待している?
「説明は以上だ。諸君の新しい人生に幸あれ」
神様はそう言って、忽然と姿を消した。
え?
もう説明終わり?
制限時間も三十分って短くない?
「待って!」
「消滅って……」
「お母さんの処に帰して!」
「こんなの認められるか! ふざけんなよ!」
「ふむ、これが俺のステータスか」
「都合って何なのか説明しなさいよ!」
「種族が沢山有る! エルフやドワーフも選べるのか!」
「死んだのに、新しい人生を貰えるのだから、ありがたいと思うがな……」
「なんでそんな達観してるんだよ」
「うわああああぁあ!」
皆、思い思いに懇願やら罵声の声を上げるが、神様は姿を見せない。
まだ死んだ事を受け入れられない人は多いようだ。
一部、転生する事をあっさり受け入れてる人も居るけど……まあ、私もどちらかといえば受け入れてるかな。
両親は早くに他界したし、自分の無能さに絶望してた元の人生には、正直あまり未練が無い。
周りで衝撃を受けてる人達に対して不謹慎だろうが、少なからずワクワクさえしてる。
投稿サイトの異世界転生系の小説は結構読んでた。お金が掛からず現実逃避出来るからね。
今までの冴えない人生をリセットして、強力な能力を貰って異世界で冒険する事を、妄想した事が無い訳が無い。
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