#781 『予行練習』
深夜の事だった。
夢うつつの中、遠くから救急車のサイレンの音が近付いて来るのが分かった。
うるさいなぁ――と、思った所までが夢の中だった。サイレンは僕の家のマンションの前で停止すると、そこでサイレンは止んだ。
ハッとして目を覚ます。身を起こして寝室の窓を覗けば、通りには赤い光が投げ掛けられている。
“夢じゃなかった”と思うのも束の間、外はやけに騒がしくなり、野次馬が集まって来ているのだろう事が覗える。
何が起こった? 気にはなるが寝室からではまるで見えない。僕は急いでスリッパを履き、リビングへと向かってベランダ側のカーテンを開けた。
――外には、救急車どころか人の一人もいなかった。
あれは全て寝ぼけて見た幻か? 思いながら再びベッドへと戻り眠りに就いた。
翌日、思わぬ飛び込み仕事が入り、帰宅は深夜の零時を回った。
角を曲がり自宅マンションが見える通りまで出ると、そのタイミングでマンションの玄関に救急車が停まるのが見えた。
同時にわらわらと近隣の家々から人が出て来る。どうやら昨日の件は、今日の夜の予行練習だったようだ。
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