#772 『心霊写真を撮ったカップル』
筆者の知り合いである大内さんの体験談。
――ある晩の事だった。突然、友人のIから写真の添付されたメッセージが届いた。
時刻は零時を過ぎ、もう間もなく午前一時を指そうかと言う頃。私自身も既に布団の中で、スマートフォンをいじりながらゲームをしていた最中である。
「心霊写真撮れた」と、Iからの連絡。なんだそれ――と写真を開いてみれば、そこには美咲の肩を抱いてピースサインをしているIの姿がある。
瞬間、イラッとする。美咲は数年前まで私と付き合っていた女性であり、私経由でIとも繋がった関係だ。いつの間にそんな仲になったのだと、私は苛立った訳である。
だが、どこをどう見ても付き合いの浅い出来上がったばかりのカップルの写真にしか見えず、どこにも心霊要素は見当たらない。強いて言えば写した場所はどこかの野外らしく、その背景はほとんど見えないほどに真っ暗なのである。
これは単に私への嫌がらせだなと思い、「確かに心霊写真だな。呪われてるぞ」とだけ書いて返信した。そしてそれに対しても返事は来ないままであった。
それから数週間が経ち、ふと、そう言えばIからの返事が来てないなと思い出し、例のメッセージを開いてみる。すると“呪われてるぞ”と送った私の返事は読まれていないらしく、今以て未読の状態だったのだ。
「どうしたんだ」と小声を呟き、ふと奇妙な事に気が付く。そのメッセージの上に添付されているIと美咲のツーショット写真が、全く別のものにすり替わっているのだ。
写真を開く。それは一体どこの風景なのだろう、注連縄の巻かれた巨岩をフラッシュを焚いて撮った一枚の写真。驚いた事にその岩の右上から、やけに細くて長い腕が突き出ていて、それが鞭のようにしなって撮影者の方へと手を伸ばしているのである。
私は慌ててそれを保存する。そしてもう一度、「何かあったか?」とメッセージを送り、一つ前の“呪われてるぞ”と言う返事は消去する。
そして今度は美咲に連絡をし、「Iと連絡を取りたいんだが」と伝えると、意外にも美咲からは、「Iって誰よ」と返って来る。
「お前等付き合ってんじゃないの?」と送ると、「だからIって誰?」と返る。仕方無く私はIの写っている写真を添付し、以前に私が紹介した時の事を話した。すると――
「知らないよ。付き合ってるどころかあれっきり会った事もないし、連絡先も知らない」との事。どころか美咲は、「気持ち悪い写真送って寄越さないでくれる?」と言うのだ。
何が気持ち悪い写真だよと、私は添付した写真を見返す。それは単なる集合写真で、特に何の変哲も無いものだ。
結局、あれっきりIからの連絡は途絶えてしまった。
後日、美咲に送った写真を見返してみれば、それは最後にIから送られて来た例の心霊写真にすり替わっていて、その後に美咲から送られて来たメッセージには、「呪われてるよ」と言う一文が追加されていた。
――後日、「その写真送ろうか?」と筆者の元に大内氏から連絡が来た。
「是非」と私は返事をしたのだが、それっきり大内氏からの返事は来ていない。
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