#761 『空き地』
学校帰り、家の近所に空き地が出来ていた。
元より空き地な訳ではない。そこには確かに“何か”の建物があった筈なのだが、一旦空き地となってしまった今では元の建物が何だったのか、まるで見当も付かないと言うのが本音だった。
家に帰り、家族にその事を話した。すると家族全員が同じようにその空き地を見て同じ事を感じた様子で、「あそこって何が建っていたっけ?」と、全員で頭を悩ます事となった。
私自身も、自分の記憶力の無さに驚いた。毎日そこの前を通り、毎日その建物を見ていた筈なのに、そこが一体何だったのかが全く思い出せないのである。
結局、誰もが明確な答えを出せないままその話題は終わってしまった。
だが後日、私はその空き地の前を通り過ぎてしばらく歩き、ふとある事に気が付いて駆け戻った。
空き地が、空き地ではなくなっていた。と言うよりも、確かにそこは空き地になった筈なのに、取り壊された筈の建物が再びそこに存在していたのだ。
そこは何の変哲もない、ただの古びた民家だった。あらためて見てみると確かにこの建物だったと思い出す。
でもどうして、一回壊した筈の建物が復活しているのだろう。だがそんなに悩んでいるだけの時間も無く、私は思い直して急いで駅へと走った。
学校帰り、あの民家は跡形もなく取り壊され、昨日見た通りの空き地となっていた。
今ではもうその空き地には、新しい民家が建っている。
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