#738 『続・ひょいと出て来る頭』

 前夜の続きではないのだが、前夜のお話しとそっくりな体験談を聞いたので、続けて掲載する事にする。

 ある日突然、目の前に子供の頭が現われるようになったのだ。それは私よりも少しだけ背が低い、五分刈りの坊主頭だ。

 顔は見えない。ただ突然にその坊主頭が下からひょいと出て来て、私の顔面にぶつかって来る。

 痛い。が、痛い以上に怖い。ぶつかったと同時に悲鳴を上げて転ぶのだが、見ればもうそこには誰もいないのである。

 そしてそれは日に数回、現われた。時と場所はまるで選ばない。突然現われては私の身体のどこかに強く頭を打ち付けて、そしてすぐに消えるのだ。

 一度、お祓いにも行った――が、結果はまるで効き目無し。これはもう自身で諦めるしかないかと思うと、何故か怖さよりも激しい怒りが込み上げて来て、とうとうその怒りが頂点に達した時、いつも通りに頭突きを食らわそうと出て来た頭目掛けて、渾身の肘打ちを食らわせた。

 その瞬間だった――当たった筈の肘が感じたものは、まさに“粉砕”とでも言うような感覚だった。

 割れて、砕けて、そしてめり込む。そんな感触。

 うわ、嫌だ――と思ったその次の瞬間、「ひどいや」と声が聞こえてその頭は消えて無くなった。

 以降、坊主頭は二度と私の目の前に現われる事は無くなったのだが、あの頭が砕ける嫌な感覚だけは今もはっきりと覚えているのだ。

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