#735 『ガラクタで塞がれた家』
近所に、我が家で所有している空き家がある。
かつてはそこに祖母が一人で住んでいたらしいのだが、亡くなって以来そこは空いたままとなっている。
僕は一度、興味本位でその家の中に入りたいと申し出た事があるのだが、「入れるもんなら入ってもいぞ」と、意味不明な事を言われて鍵を渡された。
玄関を開けてみて驚いた。玄関には天井まで届くほどにゴミやガラクタがぎゅうぎゅう詰めとなって積み上げられており、しかもそれは奥が見えないほどに重なっているようだった。
「誰があんな事したんだよ」と聞けば、「知らん」と親父は言う。
「ウチは頭のおかしい親類縁者が多いから、なんかの宗教儀式とかなんじゃねぇの?」と適当な事を言うのだ。
それから数年が経ち、僕が高校生となる頃、その家の話をしたならば同級生達が食い付いて来て、「中探ろうぜ」とか言い出した。
「いや、無理だから」とその状況を話したならば、皆が皆、「そのゴミ退けてでも入ろう」とか言うのである。
仕方無くその件を親父に話したならば、「なら俺も手伝う」と、話に乗って来る。そうしてその計画は実行に移された。
全員、用意周到に野良着と軍手と言う格好で、家の玄関は開けられた。そうして次々とガラクタを引っ張り出して行き、やがてようやくその内側が見えるような辺りまで物が退けられた頃、「人がいるぞ」と誰かが言った。
そんな馬鹿なと、僕と親父とで覗き込む。すると確かに奥の居間辺りに向かい合わせで二人、誰かが座っているのが見える。
そして僕と親父は聞いてしまった。
「誰か来ちゃったねぇ」
「じゃあそろそろ行かなきゃねぇ」
二人は同時に立ち上がり、部屋の向こう側へと消えて行く。
やがて人が通れる程にガラクタも崩れ去り、僕らは中に踏み入った。だがやはり先程の場所に人がいた痕跡は無く、家のどこかに人が隠れていると言う事も無かった。
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