#734 『もうすぐ死ぬよ』
あれはまだ私が小学生だった頃の話である。
放課後、二歳年下の妹と一緒に近所の公園へと向かった。そこでしばらく一緒に遊んでいたのだが、突然、「お嬢ちゃん」と、首からタオルを提げた見知らぬ男性に声を掛けられた。小太りで少々不潔そうな感じの人である。
その男性は私と妹を交互に眺めながら、「君たちもうすぐ死ぬよ」と言うのである。
「どう言う事?」と聞けば、「残念だけど君たち二人共、一緒に死んじゃうよ」と、悲しそうな顔で男は言う。
慌てて私は妹の手を引き、家へと帰った。玄関をくぐると同時に恐怖が込み上げて来て、その場で妹と一緒にわんわんと泣いた。
やがて両親が帰って来て、その時の事を話した。すると二人共とても怖い顔をして、「そんなの嘘だから」とか、「酷い嫌がらせだ。どこのどいつだ」と真剣な顔でその男の言った事を否定してくれた。
それから少し経った頃、学校でHちゃんと言う同級生に声を掛けられた。
Hちゃんの自宅は私の家の近所で、昔から仲も良く、一緒に遊んだりする事があった。そしてそのHちゃんは、大真面目な顔で、「今日、家に来てくれない?」と聞くのである。「むしろ泊まって行って欲しいんだけど」
さすがに私はそれを断った。遊びに行くならまだしも、泊まり掛けは親の許可が必要だと思ったからだ。
「じゃあ私がそっちの家に泊まりに行ってもいい? 出来れば妹も一緒に」
首を横に振る私。それを悲しそうな顔で見つめるHちゃん。そして私がHちゃんを見たのは、それが最後となった。
翌日からHちゃんは学校に来なくなった。どころか家に電話をしても出ないらしく、様子を見に行った人が言うには、人が出払ったまま何日も留守のようだとの事。
一週間後、Hちゃんの家族はT県の山中にて一家心中の遺体となって発見された。
遺体は車の中から見付かっており、その後部座席にはHちゃんと、その妹が乗っていたと言う。
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