#676 『早朝の実家からの電話』

 朝の四時、枕元の電話が鳴った。表示を見ればそれは実家の電話番号。

 あぁ、何かあったな。思いながら出るとそれはお袋で、「お父さん亡くなったよ」と知らされたのだ。

 すぐに家を飛び出た。始発の電車へと乗り、約一時間半を掛けて実家へと辿り着く。

 だが、何故か玄関のドアが開かない。仕方無く庭の方へと回ってリビングの窓を叩くが、どうにも人の気配が無い。

 何事だろうと家の前から実家の電話番号へと掛けたのだが、電話に出たのは亡くなった筈の父で、「お前何しに来たんだ」と言いながら玄関を開けてくれた。

「お袋から、親父が死んだって聞かされた」

 言うが親父は死んでもいないし、寝ている所を叩き起こされた母はとても不機嫌そうな顔で、「そんな電話してない」と不満そうな顔をする。

「でもちゃんとここから掛かって来てるんだよ」と、今朝の通話記録を見せると、両親は揃って「確かに」と納得する。

 こうなると犯人は高校生の弟かと、部屋へと乗り込み事情を聞くが、逆に弟は、「今朝早く親父が死んだって電話していた声は聞いた」と言うのだ。

「それ誰だよ?」

 聞けば知らない女の人の声だったと言う。そう言えば電話の向こうは単に“女の人の声”で、それがお袋だったかと聞かれたらそれほどまでに自信は無いのである。

 なら誰だ? 皆で首を傾げるが、それ以外に家族はいない。

 今以て、真相の分からないそんな我が家の事件の話である。

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