#639『付呪』
前出の霊能者さんのお話し三夜目。
少々怪談とは掛け離れるが、ご勘弁願いたい。
彼女は仕事柄、沢山の霊を見る。大概は集中しないと見れないものばかりなのだが、時としてその霊が発するオーラのような思念の渦を見る事があると言う。
大体は場所か部屋にこびり付いているらしい。たまに知らない土地へと行き、歩いていると、そんな場所や家の近くを通る事がある。
とある地方へと出向いた際、某アパートメントの前を通り掛かると、その屋根にまで立ち上るほどの思念の渦が見えた。
「あぁ、あの一室ね」と見当を付ける。だが大抵は事故物件ではないし、何か事件の起きた部屋でもない。ならば何かと言うと、単にそこで起こった事が公(おおやけ)になっていないだけの事。
「多分ね、あの部屋で多くの女性が暴行され、殺されて、そして隠蔽されてるわね」
でも明るみに出てはいないのだ。そこで何かが見付かって初めて、事件や事故となるのである。
それと同じく、思念のこびり付いた“人”と逢う事もあると言う。
「大抵は普通に見える人ね。ごく真面目な、毒にも薬にもならないタイプ」
だがその人の肌には、もはや人の形すらも保てないほどにどす黒い思念が貼り付いていたりする。
「何人殺せばあぁなるんだろうってな人ね。普通だったら絶対に気付かないでしょう」
慣れた人は、痕跡は残さず、態度にも出さないと言う。
彼女曰く、あぁ言う手合いに比べたら霊など恐れる必要性も無いらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます