#625 『さかな』
家の敷地の一画に、普段は滅多に立ち入る事のない小屋がある。
一応そこに農機具などを置いてはいるのだが、家人は余程の事がない限り近寄りもしない。何故ならばその小屋の中で、過去に二人もの人が亡くなっていると言う曰くがあるからである。
場所はその小屋の奥にある、“仏間”だ。
六畳ほどの大きさの部屋に、小さな仏壇が一つあるだけ。そしてその仏壇が置かれている場所で、二人もの人が不自然な亡くなり方をしたと言う。
一人目は女性だったらしい。姿が見えないぞと家族が探しに回った所、女性はこの部屋で倒れていた。しかもおかしな事に、その手には“魚”が握られていた。
川魚ではない、ここから程遠い場所にある海の魚だ。
そうして十数年後、またしてもその部屋で人が死んだ。次は二十代の男性だった。
前の女性と同様、同じ場所で、同じ格好で、同じ海の魚を手にしていたと言う。
そしてその部屋には二人の位牌を飾った仏壇が置かれた。以降、そこで次の死人は出てはいないのだが、小屋の老朽化もあってそこを取り壊した際、過去に二人が亡くなったその家のその場所の真下に、古い枯れた井戸が見付かった。
相当に古かったであろう小屋が、建つ前からあった井戸である。
但しそこで起こった怪異について、井戸との因果関係はまるで分かっていない。
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